土曜 札幌
10R ファイブスター 9着
「最初から追いかけるつもりはなく、終いに賭けたんだけど、
直線に向いてからまったく反応してくれなかった。
前走が強い競馬だったので期待していたんだけど、
どうしたのかな」
ゲート内でえらく気合が入っている雰囲気。
開いた瞬間に特攻する感じの好スタート。
出脚が速かったが待機への移行もスムーズ。
後方3番手でしっかりと折り合いがついた。
前走と同様に磐石の態勢を作ってレースに入れた。
前ではオースミレジスタにキティが絡んでいたことで、
想像を遥かに越える速いペースでレースが進行。
オースミがたまらず4角前に失速するという展開で、
追い込むには絶好の流れだったのだが・・・。
まったく来なかったねえ。良い所が何も無かった。
良いところはなかったが、前走通りに走れていても離された5着まで。
これは残念ながら、現時点では上位とははっきりと力差があったな。
ここは、1000万としてはちょっとレベルが高すぎた。
勝ったキティは、今なら準OPでも通用するはずだ。
2着のリベラは人気があまりなかったが、実績ある馬で順当だろう。
まあ仕方ない。昇級戦がこんなハイレベル戦になるとはちょっと運が悪かった。
まともなら5着くらいはあっても良かったので、
そこはペースに翻弄されたところがあるのだろう。慣れの問題だ。
牝馬限定戦だってあるし、また順序良く上っていこう。
11R オールアズワン 1着
「スタートも道中の感じも凄く良かった。
少し早いかなとも思ったが、馬自らが動いて行ってのものだし、
追ってからもしっかり伸びてくれたからね。
使いつつしっかりしてきたし、
とにかく頭が良くてレースが上手な馬。
これだけの資質を持っているので、
今後も成長して行く可能性は十分にあると思う」
好スタートを決めるとまずは前に出て行く構え。
大外枠だったが行き脚はかなりのもので、
最初は3番手くらいにまで押し上げそうな感じだった。
1角の前、内から6番のルルーシュが外に張り気味に出てきて、
もしこれと張り合ってたら外に振られていたところだったが、
行きたいなら行かせてやると、すんなり1馬身下がった。
これはコーナー入り口での動きなんだが、
ここの動きは歴戦の古馬の動きそのものだね。
鞍上の判断がまず抜群だが、それを瞬時にこなす馬のセンスが凄い。
5番手の外で内に馬を置いて軽快な行きっぷり。
途中までは前の好きなようにやらせていたが、
800m過ぎからペースが少し遅くなったこともあってだろう、
ラスト600前のところで早々に進出を開始した。
前を行っていたルルーシュとは速度が全く違い、
いつでも交わせるという感じ。後ろにいた人気2頭とも速さが違う。
4角の立ち上がり、ルルーシュの北村が必死に追っつけながらいるところ、
アンカツは全く持ったままでルルーシュの外を併走。
直線に入ってルルーシュを交わしながらゴーサインを出した。
鞭を4発入れて気を抜かせないようにすると、
馬のほうもそれにしっかりと応え、抜けてもきっちりとした走り。
大勢が決したところでアヴェンチュラが少し近寄ってきたが、
相手にすることなく、最後は楽に流しての完勝だった。
全く隙が無いと言って構うまい。
2歳馬とはとても思えない競馬センスをしている。
こういう非の打ち所の無いレースをされた時、
負けた馬を応援している人間というのは、
「完成度の差で負けた」という言葉を吐くものだが、
このオールアズワンの完成度は・・・
残念ながら99%以上の馬が生涯かけてもたどり着けない領域だろう。
タイキシャトル的な安定感を感じさせてくれた。
根本に素晴らしい身体能力があり、その上で抜群のセンスがあるのだから、
この馬を倒せる馬はそうそういないだろう。
現時点でG1での好勝負を約束されたようなものだが、
期待通りにさらなる成長があれば、クラシックの上位まで確定か。
日曜 中山
5R カフナ 4着
「内枠だったので逃げたけど、
前向きさに欠けるような所があって、物見していたね。
まだ気性が子供だが、良いフットワークで走るように素質はあるし、
これから変わってくるよ」
やはり、内枠だったので出て行ったとの事。
走る気持ちに欠けることも考慮の中だろう。
アンカツが新馬戦から逃げさせる事はかなり珍しいことだが、
闘争心に著しく欠ける馬ならばありと考えたんだろうね。
しかし、行ったは良いが早速やる気の無さを露呈。
1角まではまだ気合を入れられていたから良かったのかもしれないが、
さあ息を入れようというところで、いきなり物見を始めた。
新馬によくあることだが、興味を惹かれたものに寄っていくことがある。
1角早々にアンカツがバランスを崩した瞬間から、
いつ飛んでしまうか心配で見ていられなかった。
幸いにも、すぐ外にマイネルハイセンスが来ていたので、
これに抑えられる形でとりあえず真っ直ぐ走れたのは僥倖。
そのマイネルハイセンスも物見が酷かったようで、
4角では2頭でどんどん外に膨れて行く感じに。
フラフラしながら直線に入って、それなりに走っていたが、
後ろで真面目に走っていた馬達に次々と差されてしまった。
何事も無くて良かったと思えるレース。
使ってからだから買うなよ的なコメントをくれていたくらいだから、
この内容には納得で、同時に次への期待も普通に持てる。
競馬というのがどういうものか、少しは分かってくれただろう。
競馬場の風景にも少しは慣れてくれたか。
次はまた違う競馬場でまた物見をするかもしれないが、
今回よりは格段にマシになった姿を見せてくれるだろうと思う。
確かにフットワークは大きくて良さげな感じのする馬だったので、
次走は本格的に頭で狙ってみようかなと思う。
11R ビービーガルダン 10着
「前回より馬は元気だったし、ダッシュもついたよ。
ただその後、内に包まれる形になってしまって、
自分の競馬が出来なかったよ」
昨日でざっと振り返ってみたつもりだ。
ウルトラファンタジーの外につこうとしていたところで、
そのウルトラがいきなり後退し始めるというありえない事態に直面して、
(長いこと競馬を見ているが、内で完全に逃げ態勢に入ってる馬が、
無理矢理交わされるのではなく、自分の意思で下がったのは初めて見た)
一瞬で非常に難しい判断を強いられることになった。
いろいろ考えてみたが、満点になる正解はなしだと考えるw
60点くらいの選択をしたんじゃなかろうか。そしてこれがMAXに思える。
突っ込んでいたら、ゲレイロ(そして後に盛り返してきたウルトラ)と共に、
息の入らない3頭併走が続いて、もっと負けていたと思う。
競走馬ってのは、息を入れないと必ず失速するもの。
いや、これは生き物ならば全てに共通することだ。
この息を入れるというのを詳しく言うならば、
「落ち着いた状態で呼吸すること」と表現できると思う。
真剣に走っている時の呼吸と、軽く走ってる時の呼吸がどう違うかは、
馬を見なくても自分でやってみればすぐに分かることだろうが、
真剣に走り続けると、どうしたってどこかで息が切れる。
呼吸で手に入れている酸素が足りなくなり、
呼吸で排出している二酸化炭素が増えすぎるからだね。
酸素が無いと身体が動かない。生き物だから。気持ちでどうにかなるものではない。
馬の真剣な走りが続く限界距離は800mあたりにあると思われるので、
たとえスプリント戦でも、どこかでひと息を入れないと必要以上の失速に陥る。
逃げ馬がたまに大惨敗を喫するメカニズムはこれで、
騎手が前に進むのに必死で冷静さを欠き、馬に呼吸をさせていないから。
息さえ入ってれば、たとえ能力が足りなくても大惨敗なんてのはそうそうない。
たとえ、レース前に絶対に逃げるという宣言をしていようとも、
最初から600m、800mを全力で走らせ続ける騎手などほとんどいない。
(まあ、たまに本当に何も考えてないのがいるから、大惨敗馬がいるわけだが・・・)
で、逃げたい騎手がどこで息を入れようとするかというと、
それは当然ながら、逃げの態勢を固めてからになる。
早ければ100m過ぎ、遅いと600mあたりになるだろうか。
短距離戦ではまず先行争いが激しくなるので400m過ぎが多く、
長距離戦では争いが少ないから、最初からゆったりが多いかもしれない。
で、ウルトラファンタジーも当然どこかで息を入れることを考えていただろうけど、
この馬というか、実際にはライという騎手なんだけど、
200m行って1馬身出たところで、いきなり息を入れ始めた。
これがあり得ないんだよね。あり得ない。
下級条件で能力が違う馬だったりすればもちろんあるんだけど、
仮にも短距離G1の最高峰のレース。逃げ宣言をしている馬もいた。
確かにウルトラは抜群に速くて1馬身出ることに成功していたが、
たかだか200mのところで休んだら、普通は飲み込まれるだろう。
それに、減速してから再加速する事だってそんな簡単なことではない。
それでも、最初の200m過ぎに休むことを選択し、
そこから800mのスパートを決めたウルトラファンタジー。
理論上はそういうラップを刻む事は可能だけど、
短距離G1でそれをやろうとした理由が未だによく分からないが、
(実際に前を消されることは無かったわけだが、
休んでもそうなるという自信があったということだろうか。
他者の考えなんてそうそう読めたものではないと思うが)
大きな賭けに勝った上での勝利であることは分かる。
俺は、世間が思っているよりもこの馬の勝利の内容に感心している。
このレースはあんまり語られていく事はないかもしれないが、
非常に興味深く検討し甲斐のある走りをした馬だった。
12R シルクフォーチュン 1着
「スタートは悪くなかったんですが、
フワッとして置かれてあの位置からになりました。
以前に比べると返し馬でも落ち着きが出たので、
瞬発力も増したようですね」
上で呼吸についてダラダラと書いてしまったが、
馬それぞれに、呼吸しやすいリズムってのがある。
ごくごく当たり前のことだが、とにかく見落とされがちなことだ。
素人は折り合いを気にしすぎる騎手に対してしばしば不満述べるものだが、
この折り合いをつけるというのは、ようするに呼吸を整えていると言って良いだろう。
仕掛けて出るという事は、その馬のしやすい呼吸を捨てて位置を取るということである。
これも当たり前だが、ある程度速く走っても浅い呼吸は出来るので、
それがどちらに転ぶかはそのレースごとの事で何とも言えないが、
呼吸を最重要視している騎手がアンカツであると言って構わないと俺は考える。
まあアンカツに限らずどんな騎手だって、馬を酸欠状態にさせたくないだろうが。
実際に馬に触れ合っている人間とそうでない人間で差が生まれるのは仕方ない所。
騎手は差されることを恐れ、ファンは差し届かないことを怒るとよく言われるが、
これは少し間違っていて、騎手が本当に恐れているのは相棒の息切れなのだろう。
ゴールまで呼吸がもたないような騎乗をするのを恥じているのだと思う。
実際に馬の呼吸を体感できない我々には掴み難いところかもしれないが。
それにも程度があるのだが、アンカツははっきり言って考え方が偏っているので、
逃げにしろ捲くりにしろ追い込みにしろ相当に大胆な作戦を取ることになる騎手だが、
レースの流れに合わせてるんじゃなくて、まず馬の呼吸に合わせているから、
だから相対的にそのようになっているわけだ。
フワッとして置かれてあの位置になった、とサラッと言ってるけど、
それを事実として受け止めて流すのがアンカツの流儀。
フォーチュンがそうしたいならそれで良いというスタイルで行ったことで、
最初を自分が思う感じに進めれた馬が、最後にしっかりと応えてくれた。
今回はこれまで以上に迫力があったと思う。
10R ファイブスター 9着
「最初から追いかけるつもりはなく、終いに賭けたんだけど、
直線に向いてからまったく反応してくれなかった。
前走が強い競馬だったので期待していたんだけど、
どうしたのかな」
ゲート内でえらく気合が入っている雰囲気。
開いた瞬間に特攻する感じの好スタート。
出脚が速かったが待機への移行もスムーズ。
後方3番手でしっかりと折り合いがついた。
前走と同様に磐石の態勢を作ってレースに入れた。
前ではオースミレジスタにキティが絡んでいたことで、
想像を遥かに越える速いペースでレースが進行。
オースミがたまらず4角前に失速するという展開で、
追い込むには絶好の流れだったのだが・・・。
まったく来なかったねえ。良い所が何も無かった。
良いところはなかったが、前走通りに走れていても離された5着まで。
これは残念ながら、現時点では上位とははっきりと力差があったな。
ここは、1000万としてはちょっとレベルが高すぎた。
勝ったキティは、今なら準OPでも通用するはずだ。
2着のリベラは人気があまりなかったが、実績ある馬で順当だろう。
まあ仕方ない。昇級戦がこんなハイレベル戦になるとはちょっと運が悪かった。
まともなら5着くらいはあっても良かったので、
そこはペースに翻弄されたところがあるのだろう。慣れの問題だ。
牝馬限定戦だってあるし、また順序良く上っていこう。
11R オールアズワン 1着
「スタートも道中の感じも凄く良かった。
少し早いかなとも思ったが、馬自らが動いて行ってのものだし、
追ってからもしっかり伸びてくれたからね。
使いつつしっかりしてきたし、
とにかく頭が良くてレースが上手な馬。
これだけの資質を持っているので、
今後も成長して行く可能性は十分にあると思う」
好スタートを決めるとまずは前に出て行く構え。
大外枠だったが行き脚はかなりのもので、
最初は3番手くらいにまで押し上げそうな感じだった。
1角の前、内から6番のルルーシュが外に張り気味に出てきて、
もしこれと張り合ってたら外に振られていたところだったが、
行きたいなら行かせてやると、すんなり1馬身下がった。
これはコーナー入り口での動きなんだが、
ここの動きは歴戦の古馬の動きそのものだね。
鞍上の判断がまず抜群だが、それを瞬時にこなす馬のセンスが凄い。
5番手の外で内に馬を置いて軽快な行きっぷり。
途中までは前の好きなようにやらせていたが、
800m過ぎからペースが少し遅くなったこともあってだろう、
ラスト600前のところで早々に進出を開始した。
前を行っていたルルーシュとは速度が全く違い、
いつでも交わせるという感じ。後ろにいた人気2頭とも速さが違う。
4角の立ち上がり、ルルーシュの北村が必死に追っつけながらいるところ、
アンカツは全く持ったままでルルーシュの外を併走。
直線に入ってルルーシュを交わしながらゴーサインを出した。
鞭を4発入れて気を抜かせないようにすると、
馬のほうもそれにしっかりと応え、抜けてもきっちりとした走り。
大勢が決したところでアヴェンチュラが少し近寄ってきたが、
相手にすることなく、最後は楽に流しての完勝だった。
全く隙が無いと言って構うまい。
2歳馬とはとても思えない競馬センスをしている。
こういう非の打ち所の無いレースをされた時、
負けた馬を応援している人間というのは、
「完成度の差で負けた」という言葉を吐くものだが、
このオールアズワンの完成度は・・・
残念ながら99%以上の馬が生涯かけてもたどり着けない領域だろう。
タイキシャトル的な安定感を感じさせてくれた。
根本に素晴らしい身体能力があり、その上で抜群のセンスがあるのだから、
この馬を倒せる馬はそうそういないだろう。
現時点でG1での好勝負を約束されたようなものだが、
期待通りにさらなる成長があれば、クラシックの上位まで確定か。
日曜 中山
5R カフナ 4着
「内枠だったので逃げたけど、
前向きさに欠けるような所があって、物見していたね。
まだ気性が子供だが、良いフットワークで走るように素質はあるし、
これから変わってくるよ」
やはり、内枠だったので出て行ったとの事。
走る気持ちに欠けることも考慮の中だろう。
アンカツが新馬戦から逃げさせる事はかなり珍しいことだが、
闘争心に著しく欠ける馬ならばありと考えたんだろうね。
しかし、行ったは良いが早速やる気の無さを露呈。
1角まではまだ気合を入れられていたから良かったのかもしれないが、
さあ息を入れようというところで、いきなり物見を始めた。
新馬によくあることだが、興味を惹かれたものに寄っていくことがある。
1角早々にアンカツがバランスを崩した瞬間から、
いつ飛んでしまうか心配で見ていられなかった。
幸いにも、すぐ外にマイネルハイセンスが来ていたので、
これに抑えられる形でとりあえず真っ直ぐ走れたのは僥倖。
そのマイネルハイセンスも物見が酷かったようで、
4角では2頭でどんどん外に膨れて行く感じに。
フラフラしながら直線に入って、それなりに走っていたが、
後ろで真面目に走っていた馬達に次々と差されてしまった。
何事も無くて良かったと思えるレース。
使ってからだから買うなよ的なコメントをくれていたくらいだから、
この内容には納得で、同時に次への期待も普通に持てる。
競馬というのがどういうものか、少しは分かってくれただろう。
競馬場の風景にも少しは慣れてくれたか。
次はまた違う競馬場でまた物見をするかもしれないが、
今回よりは格段にマシになった姿を見せてくれるだろうと思う。
確かにフットワークは大きくて良さげな感じのする馬だったので、
次走は本格的に頭で狙ってみようかなと思う。
11R ビービーガルダン 10着
「前回より馬は元気だったし、ダッシュもついたよ。
ただその後、内に包まれる形になってしまって、
自分の競馬が出来なかったよ」
昨日でざっと振り返ってみたつもりだ。
ウルトラファンタジーの外につこうとしていたところで、
そのウルトラがいきなり後退し始めるというありえない事態に直面して、
(長いこと競馬を見ているが、内で完全に逃げ態勢に入ってる馬が、
無理矢理交わされるのではなく、自分の意思で下がったのは初めて見た)
一瞬で非常に難しい判断を強いられることになった。
いろいろ考えてみたが、満点になる正解はなしだと考えるw
60点くらいの選択をしたんじゃなかろうか。そしてこれがMAXに思える。
突っ込んでいたら、ゲレイロ(そして後に盛り返してきたウルトラ)と共に、
息の入らない3頭併走が続いて、もっと負けていたと思う。
競走馬ってのは、息を入れないと必ず失速するもの。
いや、これは生き物ならば全てに共通することだ。
この息を入れるというのを詳しく言うならば、
「落ち着いた状態で呼吸すること」と表現できると思う。
真剣に走っている時の呼吸と、軽く走ってる時の呼吸がどう違うかは、
馬を見なくても自分でやってみればすぐに分かることだろうが、
真剣に走り続けると、どうしたってどこかで息が切れる。
呼吸で手に入れている酸素が足りなくなり、
呼吸で排出している二酸化炭素が増えすぎるからだね。
酸素が無いと身体が動かない。生き物だから。気持ちでどうにかなるものではない。
馬の真剣な走りが続く限界距離は800mあたりにあると思われるので、
たとえスプリント戦でも、どこかでひと息を入れないと必要以上の失速に陥る。
逃げ馬がたまに大惨敗を喫するメカニズムはこれで、
騎手が前に進むのに必死で冷静さを欠き、馬に呼吸をさせていないから。
息さえ入ってれば、たとえ能力が足りなくても大惨敗なんてのはそうそうない。
たとえ、レース前に絶対に逃げるという宣言をしていようとも、
最初から600m、800mを全力で走らせ続ける騎手などほとんどいない。
(まあ、たまに本当に何も考えてないのがいるから、大惨敗馬がいるわけだが・・・)
で、逃げたい騎手がどこで息を入れようとするかというと、
それは当然ながら、逃げの態勢を固めてからになる。
早ければ100m過ぎ、遅いと600mあたりになるだろうか。
短距離戦ではまず先行争いが激しくなるので400m過ぎが多く、
長距離戦では争いが少ないから、最初からゆったりが多いかもしれない。
で、ウルトラファンタジーも当然どこかで息を入れることを考えていただろうけど、
この馬というか、実際にはライという騎手なんだけど、
200m行って1馬身出たところで、いきなり息を入れ始めた。
これがあり得ないんだよね。あり得ない。
下級条件で能力が違う馬だったりすればもちろんあるんだけど、
仮にも短距離G1の最高峰のレース。逃げ宣言をしている馬もいた。
確かにウルトラは抜群に速くて1馬身出ることに成功していたが、
たかだか200mのところで休んだら、普通は飲み込まれるだろう。
それに、減速してから再加速する事だってそんな簡単なことではない。
それでも、最初の200m過ぎに休むことを選択し、
そこから800mのスパートを決めたウルトラファンタジー。
理論上はそういうラップを刻む事は可能だけど、
短距離G1でそれをやろうとした理由が未だによく分からないが、
(実際に前を消されることは無かったわけだが、
休んでもそうなるという自信があったということだろうか。
他者の考えなんてそうそう読めたものではないと思うが)
大きな賭けに勝った上での勝利であることは分かる。
俺は、世間が思っているよりもこの馬の勝利の内容に感心している。
このレースはあんまり語られていく事はないかもしれないが、
非常に興味深く検討し甲斐のある走りをした馬だった。
12R シルクフォーチュン 1着
「スタートは悪くなかったんですが、
フワッとして置かれてあの位置からになりました。
以前に比べると返し馬でも落ち着きが出たので、
瞬発力も増したようですね」
上で呼吸についてダラダラと書いてしまったが、
馬それぞれに、呼吸しやすいリズムってのがある。
ごくごく当たり前のことだが、とにかく見落とされがちなことだ。
素人は折り合いを気にしすぎる騎手に対してしばしば不満述べるものだが、
この折り合いをつけるというのは、ようするに呼吸を整えていると言って良いだろう。
仕掛けて出るという事は、その馬のしやすい呼吸を捨てて位置を取るということである。
これも当たり前だが、ある程度速く走っても浅い呼吸は出来るので、
それがどちらに転ぶかはそのレースごとの事で何とも言えないが、
呼吸を最重要視している騎手がアンカツであると言って構わないと俺は考える。
まあアンカツに限らずどんな騎手だって、馬を酸欠状態にさせたくないだろうが。
実際に馬に触れ合っている人間とそうでない人間で差が生まれるのは仕方ない所。
騎手は差されることを恐れ、ファンは差し届かないことを怒るとよく言われるが、
これは少し間違っていて、騎手が本当に恐れているのは相棒の息切れなのだろう。
ゴールまで呼吸がもたないような騎乗をするのを恥じているのだと思う。
実際に馬の呼吸を体感できない我々には掴み難いところかもしれないが。
それにも程度があるのだが、アンカツははっきり言って考え方が偏っているので、
逃げにしろ捲くりにしろ追い込みにしろ相当に大胆な作戦を取ることになる騎手だが、
レースの流れに合わせてるんじゃなくて、まず馬の呼吸に合わせているから、
だから相対的にそのようになっているわけだ。
フワッとして置かれてあの位置になった、とサラッと言ってるけど、
それを事実として受け止めて流すのがアンカツの流儀。
フォーチュンがそうしたいならそれで良いというスタイルで行ったことで、
最初を自分が思う感じに進めれた馬が、最後にしっかりと応えてくれた。
今回はこれまで以上に迫力があったと思う。
アンカツは馬にまかせて、そして展開や流れをみながら息を入れ脚を溜める事に関しては、まさに頂上にいるジョッキーですよね。
特に印象的なのはダイワスカーレットで制した有馬記念だと思います。あの息の入れ方というか配分はまさに芸術的だったんじゃないでしょうか。
いつもsankyoさんの視点には感心し、尊敬します。 また深い解説楽しみにしてます。
オールアズワンはアンカツ絶賛のセンスで、ゴール前もさほど本気でなく、余力残しの1着という感じで、今後が楽しみですね。
皆さんも書かれていますが、呼吸の話うなずきながら、読ませて頂きました。
アンカツは無駄に鞭を入れないタイプなのに、「あの時もうちょっと鞭入れてれば、差し届いてた」とか批判されることが多々ありますが(大抵は馬券はずれたやっかみかと思いますがw)、乗ってる騎手がその馬の限界とか分からないはずないんですよね。
私も、お互いの呼吸を読み取り、気持ちが通いあった時、いい競馬ができるのではと思ってます。
代打ではありますが、来週はペルーサを気持ちよく走らせてあげて、できれば結果出せるといいなと思います。
オールアズワンいいですね。
気が早すぎるとは思うのですが、
このまま順調に成長してくれれば、
中山2000mというのは絶好の舞台になるのではないかと思っています。
いや、素人ですよw
まあ、ほんのちょっと競馬関係者の身内はいたりしましたが、
それは地方の話で、中央は完全無欠の素人です。
競馬は仕事にしたい趣味ですねw
>うまなりさん
どうもありがとうございます。
一回書いておきたかったんですよね、これ。自分なりの解釈ですが。
何で騎手は溜めるんだ?って話なんですが、本当にいろんなところで目にするので。
記事に追加するならば、息が切れて苦しかった思い出って必ず残るんですよね、悪い方向で。
我々だって、楽しいことより辛かったことのほうを覚えているように。
だから騎手はそれを馬に強いない方向のレースをするのでしょう、特に新馬では必ず。
息の入れ方というか、呼吸の仕方ってのは本当に奥が深くて、
例えばハイペースでも息が入ることもあれば、スローでも入らないことがあります。
それって、他者との関わりが大きく関係するんですよね、おそらく。
これは我々の経験をもとに考えれば分かりやすいと思うのですけど、
何か作業している時、一人であればもくもくと自然な呼吸で出来るのに、
それを後ろでじっと見られると、いきなり息苦しくなりますよねw
やってることは同じなのに、周りのプレッシャーで呼吸というのは変わってしまうもの。
絡まれる形(特に外から)というのは、やはり最悪だと思いますね。
基本的に騎手は、それを避けるように競馬していると思います。
そこでまた静かで激しい応酬があって・・・となるわけですが。やはり奥が深いです。
スカーレットの有馬は、速いペースでありながら完璧な呼吸で走ったレースでしょう。傑作ですね。
逆に、秋の天皇賞が大失敗作と言って構わないでしょうね。
>チーターさん
オールアズワンはまだまだ余裕がありますよね。
これから少し放牧に出るようですが、
クラシックを本命で戦う為に、さらなる成長を期待したいところです。
アンカツが「馬のリズムを最優先する騎手」である事は誰もが認めるところだと思いますが、
このリズムってのはつまるところ何なんだという話が、この呼吸の問題だと思ってます。
どんな馬に乗っても、まずはこれを確かめてる気がしますね。
それからいろいろと動くタイミングを確かめていく感じ。
どうにも煮え切らない馬になると、無理矢理行かせたりもしますがw
それらを順序だてて、「線」でやってるのはよく分かります。
これはアンカツだけじゃなく全ての騎手が心がけていることだと思いますが、
競馬なので周りの様々な状況に左右されて、実際は思い通りにいかないことばかりなのでしょう。
そんな中で、周りの雑音を極力消せる最右翼の騎手がアンカツなんだと思っています。
>RITZさん
こんばんは。
オールアズワンは良いですよねえ。
鞍上の思い通りに動く強い馬って感じで、
現3歳だとローズキングダムみたいな感じでしょうか。
朝日杯でもローズみたいな競馬が出来ると思いますし、
仰る通りに皐月賞も大チャンスですね。中山向きのセンスを持ってますから。
そういや初めてじゃないですかね、アンカツが中山向きの馬で皐月賞に挑めるのはw
>バログノテイオーさん
意外にも(そうでもないか)、短距離でこそ差し脚って生きるんですよね。
呼吸の話をしましたけど、短距離の先行馬は息の入れ所が難しいから、
逆に息を確実にしっかり入れられる追い込み馬がより輝くのだと解釈していますが。
シルクフォーチュンはちょっと次元が違ってビックリでしたが、
ベンチャーにも続いて欲しいところです。やれる馬だと思ってます。
重賞で、2頭が揃って逃げるサマーウインドを追いかける競馬が見たいですねえw