映画「ネブラスカ」を観た。前編モノクロのいわゆるロードムービーだ。ロードムービーといえばヴィム・ベンダースを思い起こすけれど、本作のアレクサンダー・ペイン監督のあたたかな眼差しも素敵だ。同監督のジョージ・クルーニー主演でハワイアン音楽が印象的な「ファミリー・ツリー」も印象に残る映画だったし、今回は、ちょっとクリント・イーストウッドに似た風貌の老人「ウディ」ことブルース・ダーンが渋い。
百万ドルが当選したという怪しげな雑誌の通知を信じたウディが、息子とともに賞金を受け取りに行く先がネブラスカ州リンカーン。モンタナの自宅からの旅が始める…というストーリーだけれど、映画は年老いた呑んだくれで頑固で、それでいて心優しいオヤジと、少々気弱な息子、そして家族の物語。色彩を排したモノクロ画面がアメリカ中西部の景色と人々を印象的に描いている。
学生時代、おんぼろアパートの暗室で夢中になってモノクロ写真を焼いていたとき、かすかな赤色光にかざした印画紙から、おぼろに画像が浮かび、なんとも言えない興奮もじわじわ浮かび上がってきたけれど、そんな光景も思い出す。想像してイメージを味わうモノクロームには、街中にあふれかえる暴力的な色彩がないから、なんというか自分で画像をおぎなって味わう楽しさがある。
墨一色の水墨画もそうだし、もしかしたら白と黒の石だけで、互いに対話しながら「作品」を創りだす囲碁も、実は空想宇宙を描いているのかもしれない。ともあれ、年老いたって、若くて未熟であっても、人間は捨てたもんじゃない、と思えるネブラスカは、心をつなぐ旅なのだった♪
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