Diary Of 酒田の人

田舎住まいの60代サラリーマンの趣味の日々

回想の古伊万里 90(染付花文五寸皿)

2020-11-13 18:48:26 | 古伊万里
江戸期の伊万里の歴史は250年くらいありますので、いろいろと勉強していくと、時代による様式の変化が判るようになります
そのあたりの段階まで行くと、自分の好みの「様式」がよりはっきりしてきます
それがワタシの場合は、「藍九谷」(学芸員的には「寛文様式」だそうで)であり、経済的な理由もあって小皿を中心に集める(さしたる数ではないものの)ことになった訳です。
今回の品も恐らくは寛文期の染付小皿で、寛文期の品らしい染付の発色と、実に大胆なデザインを持った品です。
「染付花文五寸皿」



直径14.5cmほどの小皿で、一応「花文」としていますが、確かに見込みは花のようなものが描かれていますが
それ以上に周囲の放射状の文様の方がはるかに強烈な印象を受けます。
また、染付の発色もこの時代らしい濃い独特の色合いで、このあたりも大きな魅力であるように思います。



見込み中央部分の「花」(?)の部分は陽刻になっており、それなりに手の掛かった品であることがうかがえます
このように放射状に文様を描いた品は中期にも登場しますが(次回紹介予定)、やはりこの品のような大胆さはなく
この時代ならではの大胆さや自由さが、この品の持つ大きな魅力であるように思われます。



裏面は寛文期に見られるデザインのもので、落款と裏文様からも寛文期の品であることが判ります。
若干のソゲはあるものの、ウチの藍九谷小皿の中でも特にお気に入りの一枚ではあります。

豪華図録

2020-11-08 23:24:05 | 古伊万里
どんなジャンルの品でもそうかも知れないですが、なにがしかを収集し始めると、やはり「知識」が必要であることに気が付きます
古伊万里などは書画に比べればさほど難しくないジャンルかも知れませんが、それでも勉強の為に美術館へ行って本物をガラスケース越しに見る
さらには専門書や図録を買って勉強する、ワタシもこんな道を通ったように思います。

そんな訳で、ウチにも何冊か伊万里に関する図録がありますが、その中から最も「重い(重量が)」図録を紹介いたいと思います。
「伊萬里」


この図録は、栃木県足利市にある栗田美術館が一般公開されたのを記念して出版された豪華図録で
出版は昭和50年8月1日、限定1000部で、定価はなんと80,000円です


厚さを図ってみたらなんと6cmもあり、重量は計ったことがありませんが、恐らく10kgくらいありそうです


大きさを判っていただくために隣に、小木先生の「新集成伊万里」(こちらも定価20,000円)を置いてみましたが
この図録がいかに巨大かつ豪華な図録であるかが判ると思います。(サイズ的にはB4サイズより若干小さい程度)

ちなみに、ワタシが昭和52年に就職した時の初任給が79,000円でしたから、当時は一か月分の給与でも買えなかったことになります
ワタシがこの図録を入手したのは3年ほど前で、購入価格はたったの2500円でした(ヤフオクです)
出版から45年、伊万里の研究は進み、この図録の最後の60ページ程に書かれている栗田館長の伊万里に関する文章は
微妙に評価が変わっているかも知れませんが、並々ならる情熱と研究心、そして強烈な個性を感じさせる内容は
現在でも勉強になる部分ではあります。



回想の古伊万里 89(色絵柿右衛門小皿)

2020-11-06 20:19:02 | 古伊万里
 古伊万里を収集するようになった頃、色絵柿右衛門は図録や美術館で見るもので
自分のような貧乏サラリーマンが手にできる品だとは全く考えていなかったように思います。
とは言え、柿右衛門様式といっても千差万別でありまして、濁し手の鉢やヨーロッパのお城にあるような名品から
柿右衛門様式の末期の染錦手の小皿まである訳で、いつかは柿右衛門という思いの中で、なんとか入手できたのが今回の小皿です。


11cm程の小皿ですが、余白、草花文の構図、色使いに関しては典型的な柿右衛門ですが、圏線については染付で描かれており
染付を併用した「染錦手」というカテゴリーに属するタイプの柿右衛門様式であると言えます。


濁し手ではなく染付の生地を使っていますので、全体に青白い典型的な伊万里の土であり、手取りも小皿の割には重く
柿右衛門様式として決して良い品とは言えません。とは言え、今から十数年前、ワタシが初めて購入した柿右衛門様式の品でありまして
何と言ってもワタシでも買える値段の柿右衛門であった、これが購入した最大の理由だったように思います。


裏面も四方に花びらを散らしただけのあっさりしたもので、この部分だけ見れば、柿右衛門様式とは言えない品かも知れません。
その後いくつか柿右衛門様式を入手することができましたが(たいした品はない)、この品が一番思い出深い品ではあります。

回想の古伊万里 88(平佐焼色絵山水文五寸皿)

2020-11-02 23:04:17 | 古伊万里
古伊万里を収集し始め、少しづつ勉強するものの、そんなに簡単に見分けられるはずもなく
ワタシの場合、とりあえず業者さんの言うことを信用して購入する時期は結構長かったように思います。
今回の品もそんな時代(今から15年くらい前)に購入した品です。
「平佐焼色絵山水文五寸皿」


平佐焼なのになんで伊万里やねん!、とツッコミが入りそうですが、この品は芦屋の有名な業者さんが扱っていた品で
「仁清手伊万里」として売られていた品です。
伊万里の研究書や図録に古九谷の時代(江戸前期)の品として、「仁清手」という一群が登場しますが
正直なところ、現物を見る機会には恵まれないように思います。


確かに、地紋の感じや金銀彩に一部赤を使った絵付けなどは古九谷金銀彩と似た特徴を有していますが
決定的に違うのは緑の釉薬で、伊万里では江戸後期あたりに登場する中間色の緑(ペパーミントグリーンとでもいうか)に近い発色をしています。


裏面を見ると、高台周りにはこの中間色の緑で絵付けがされており、土の感じは伊万里に近いようには思います
では、なぜこの品が伊万里ではなく鹿児島県の平佐焼だと思うようになったか、それはこれと同じ文様の角皿が
明治期の平佐焼としてヤフオクに出品されたのを見かけたのと、コチラの博多にある大手業者さんのHPで同じ文様の品を発見したからです。
(ずっと下の方にありますので、スクロールして見てください)

この品がいつの時代の品であるかは判りませんが、少なくとも平佐焼であることだけは間違いなさそうです
ついでながら、この品は昨年も「仁清手古伊万里」としてヤフオクに出品されたようで、コチラで確認できます。