Diary Of 酒田の人

田舎住まいの60代サラリーマンの趣味の日々

回想の古伊万里 69(染付海老文大皿)

2020-06-30 23:20:11 | 古伊万里
故玩館のご主人である遅生さんが、このところ大皿を紹介されているので、ウチでもどさくさ紛れに
大皿を紹介したいと思います。(ウチには尺を超える皿は3枚しかない・・・)

「染付海老文大皿」


直径は約30cmですので、いわゆる尺皿ですが、このデザインの品は相当な数存在しており
小鉢のような品から、五寸皿、七寸皿、さらに尺皿と、同じ意匠の品が作られています。
海老は長寿を表す吉祥文のようですから、人気のあるデザインとして量産化されたんだと思われます。



この品、倉石梓氏の「古伊万里染付図譜」では18世紀中頃の品とんなっていますので、宝暦~明和といった時代に
量産されたと思われます。濃みの技術という点では盛期には遙かに及ばないのは当然ですが
量産品としては十分な出来栄えなのかも知れませんね。
ちなみに主役であるエビ君は、江戸期の伊万里らしいユーモラスな表情をしています。



裏面の唐草は時代を考えれば、まずまずの感じでしょうか。
この品を購入したのは今から5~6年前だったように思いますが、当時すでに大皿は値崩れしており
確か1万数千円(ヤフオクで)だったように記憶しています。
確かに今の時代においては大皿を使うことは稀ですし、収納場所に困るという大きな問題があるのは確かでしょうか。

回想の古伊万里 68(色絵芙蓉手五寸皿)

2020-06-26 23:09:12 | 古伊万里
このところ二回続けて「芙蓉手」と呼ばれる皿を紹介してきましたが、今回は色絵の芙蓉手小皿です。
「色絵芙蓉手五寸皿」

柴コレの4-97に、「色絵芭蕉宝花卉文小皿」という名称で似たような小皿が掲載されています
時代的には1690~1710年代となっていますから、いわゆる元禄古伊万里の小皿ということになるでしょうか。
柴コレの図録でも、「備考 芙蓉手」となっていますから、このデザインは間違いなく芙蓉手ということだと思われます


芙蓉手といえばVOC皿に代表されるように染付のイメージが強いですが、初期赤絵とか初期柿右衛門と呼ばれる一群には
このタイプのデザインの品がありますので、決して珍しいという訳ではないように思います。
濃い染付の圏線の中に描かれる文様は、いかにも元禄といった感じの赤、緑、黄、黒、紫、金彩で絵付けされており
当時はこういった派手な感じの品が好まれたであろうことが推測されます。


裏面は至ってシンプルで、二重圏線の中に「富貴長春」の落款が大きく描かれています

今から10年以上前に購入した品で、当時は結構たくさん存在する品だと思っていたんですが、その後はとんと見なくなりました。
少々ケバい色絵小皿ですんで、正直なところ今なら買わないかも知れません。

回想の古伊万里 67(芙蓉手花籠文七寸皿)

2020-06-20 23:35:02 | 古伊万里
前回、江戸中期末あたりの芙蓉手のお皿を紹介しましたが、今回はもう少し時代の古い芙蓉手のお皿です

「芙蓉手花籠文七寸皿」
明時代に輸出の花形であった中国の芙蓉手をお手本にした七寸皿で、このタイプの最も有名なのは
かの東インド会社のマークが入った、通称「VOC皿」であることは間違いありませんが、贋作や今出来の写し物はあっても
現物を見る機会はなかなかないというのが現実です。


この七寸皿は典型的な芙蓉手で、見込みは中期の品に良く見られる花籠文ですが、周囲の文様の描き方は
本歌である明の芙蓉手の特徴がそのまま表れているように感じます。


面白いのは裏面で、実に簡素というか手抜きとでも言いたいような絵付けになっています

実際に見たことはありませんが、図録等で見ると明時代の本歌にもこういった簡素な絵付けの品が見られるようで
この品の場合は裏面も忠実に写したということになるんでしょうか。

伊万里で中期に焼成された芙蓉手では、通称「岩バッタ」がわりと有名で、一枚は欲しいと思っていたのですが
そんな時に知り合いの業者さんに勧められたのがこの品でした。
わりと飾り映えするので、中期の典型的な芙蓉手の品としていい感じではあります。

北限のアグリアス

2020-06-15 23:24:05 | 
 世界的にコレクターの多い、「ジャングルの宝石」と呼ばれる蝶アグリアス(和名ミイロタテハ)は
中米から南米に生息しています。
今日、ウチの数少ないコレクションの中から紹介するのは、アグリアスの中でも北限であるメキシコに生息している
「アミドン・オアハカタ」(amydon oaxacata)です。


表の斑紋の特徴は前翅の斑紋が黄色に近いオレンジ色をしていることと、後翅に比較的広い青紋があることで
同様の斑紋を持つアミドン・アグリアスは他にもおりますが、青紋の大きさが魅力のひとつかも知れません。


裏面は他のアミドン・アグリアスよりも黒っぽい色をしているように思います・

さて、「オアハカタ」とは何でありましょうか?
実はメキシコの州の名前だったりします、ちなみに↓がオアハカ州の位置です


アミドン・オアハカタは、その名の通りオアハカ州の特産種で、現在の状況はともかく
この種類は特に個体数が少ない訳ではありませんが、近年は標本を見かけないように思います。

回想の古伊万里 66(芙蓉手琴高仙人の図七寸皿)

2020-06-12 23:02:07 | 古伊万里
 古伊万里の名品として知られる品に、元禄期に焼成された金襴手の極めて上手な品で、通称「型物」と呼ばれる一群があります
かつて元禄あたりまでの品だけが古伊万里と呼ばれていた時代、その狭義の古伊万里の最高峰として評価されたいたのが「型物」だったようです。
型物に登場する文様の中に、「琴高仙人」という文様があります。今回の品は型物が焼成された時代から100年近く後に焼かれた品ですが
見込みに同じ「琴高仙人」が描かれた染付皿です。

「芙蓉手琴高仙人の図七寸皿」

天明~寛政と言った中期末に見られる典型的な芙蓉手の品で、似たようなタイプのデザインの品は珍しくはないように思います
実際、琴高仙人図の品は。柴コレの図録を見ても、享保~宝暦、天明あたりの時代に2種類程紹介されています。


さて、「琴高仙人」とは何でしょう?
ネットで調べたところ、以下のように記載されていました
琴高は中国周時代の仙人で、趙(ちょう)の人、琴の名人として知られた。
ある日、たく水(たくすい)に入って龍子を捕えると約し、約束の日に鯉に乗って水中より現れたという。

この画題がいつ頃から日本で使われるようになったのかは判りませんが、尾形光琳の描いた琴高仙人図が
MOA美術館に収蔵されていますから、元禄時代には人気の高い画題だったんでありましょうか。


裏面もこの時代の芙蓉手に共通するデザインで、取り立てて特徴のあるタイプではありませんが
ちょっと気になるのは「太明嘉清年製」という落款でありまして、柴コレ図録の解説(鈴田由紀夫氏)によると
「大明嘉靖年製」、「大明永楽年製」、「大明万暦年製」のように、「大明」と正確に書いてあるものは書体もしっかりしている傾向にあり、作品も高級なものが多い。
一方、同じ銘でも「太明」の方は、「太明嘉清年製」、「太明万暦年製」のように銘の翻案が行われたり、描き方が粗雑になる傾向がある、と指摘しているようです。

どうやらこの品は決して上手ではなく、いわゆる生活骨董の類のようですが、ワタシは結構好きだったりします。
ちなみに、元禄型物の琴高仙人図鉢は↓に掲載されています。
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/329566