Diary Of 酒田の人

田舎住まいの60代サラリーマンの趣味の日々

回想の古伊万里 29(薄瑠璃生花文五寸皿)

2019-11-29 23:00:34 | 古伊万里
古九谷様式の染付(いわゆる藍九谷)には現代のデザインにも通じるようなモダンな印象の品がありますが
今回の品も、文様的には特に珍しいものではありませんが、見込みの文様を囲む部分に特徴があります。



全体の印象としては寛文より少し前の時代(1650年代前期)といった感じですが、単なる染付ではなく薄瑠璃で
特にその見込み周囲の抜き方が350年以上前とは思えないモダンさを感じます。
主文様である生花を右に寄せて余白を生かすというデザインの代表格は盆栽文で、わりと見かけますが
この品の場合は盆栽というよりは花籠といった感じで、周囲の薄瑠璃の形と合っているように思えます。



落款は「太明成」で、窯の中で温度が上がりすぎたのか、一部の釉薬がハジけています
ちなみに、↓の画像を見ると判るように、薄瑠璃で塗られた部分には八方に「七宝文」(?)が描かれており
この部分には墨弾きの技法が使われているのがわかります。



薄瑠璃の品は大好きなんですが、盛期あたりまでの品は滅多に見かけないこともあって
ウチにあるのはこれ一枚だけです。

回想の古伊万里 28(色絵椿文五寸皿)

2019-11-24 20:33:41 | 古伊万里
近年は古伊万里全体の相場が下落したこともあり、名品や優品を除く色絵古九谷の値段も随分と安くなりましたが
そうは言っても、貧乏な田舎のサラリーマンにとって色絵古九谷が高嶺の花であることは変っていません。
そんな訳で、今から十数年前に入手した色絵古九谷を紹介します

「色絵椿文五寸皿」です


色絵といっても使われているのは古九谷らしい渋い赤だけという、実に簡素な絵付けの品です
椿の花と縁の圏線だけを赤で絵付けし、枝葉は染付、そして縁の部分の唐草も染付です
華やかな五彩手などとは対極にある渋い色絵の品ですが、なにか侘び寂びのようなものすら感じます。



裏面はこの時代の一般的なものですが、一点、落款が正保期の上手の品に見られる「誉」であることが
この品の存在価値を多少高めているようにも思われます。
↓は「誉銘」の部分のアップですが、当時の陶工は手本を見ながら書いたんでありましょうか?



古九谷様式には、「吹坂手」や「金銀彩」といった渋めの品もありますが、この品も「渋い色絵」かも知れません。

同手発見!

2019-11-21 11:00:20 | 古伊万里
回想の古伊万里24で紹介した「染付鳥文七寸皿」が四国の有名業者さんのところで売られておりました。
コチラです

業者さんの見立ては「明暦」あたりということです
この品の同手は購入以来初めて見ました、やっぱりあるんですね~。

回想の古伊万里 27(色絵牡丹に蝶文七寸皿)

2019-11-19 23:08:40 | 古伊万里
蝶の話題を書いたついでと言っては何ですが、蝶が印象的な伊万里を探し出してきました。

「色絵牡丹に蝶文七寸皿」、今から20年近く前、古伊万里に興味を持ち始め最初に購入した色絵皿です


伊万里で蝶文は初期伊万里から後期・幕末まで登場しますが、小さく描かれることが多いようで
この品などはわりと大きく描いてある部類かとは思います。
特徴的な部分として、蝶文に黒釉が使われている点があり、国内向けの染錦手では意外に珍しいのでは思っていますが
実際ところどうなのかはは判りません


想像するに、わざわざ黒釉を使っているということは、クロアゲハかカラスアゲハあたりがモチーフなのかも知れません
この品の時代判定する上での大きなポイントに、縁の部分の波頭文があり、ワタシの所有している書籍によると
このタイプは18世紀前半に出てくると記述されていました。
正直なところ、今見れば金彩はスレていますし、それほどの品ではありませんが
蝶好きな自分としては、この黒釉が印象的な蝶文に魅力を感じているのは確かです。


裏面は典型的な中期古伊万里ですね。


ミンドロカラスアゲハ

2019-11-18 22:49:53 | 
ここ3~4日ほど、親類で不幸がありバタバタしておりました
そんな中、ネットで蝶に関する気になる情報を見つけましたので、とりあえず取り上げることにしました。

↓の美しい蝶はフィリピンのミンドロ島の固有種である「ミンドロカラスアゲハ」です


もともとワシントン条約の附属書Ⅱに分類されており、輸出国(この場合はフィリピン)の許可がないと
商業取引のできない種類だったんですが、11月26日からの改定で、最も厳しい附属書Ⅰに変更されることになったんであります。
附属書Ⅰに分類されると、絶滅危惧種ということで商業目的の国際取引が禁止となります。
つまり、標本商が在庫を持っていても販売できないことになります


ウチにも何年か前に入手した同種の標本(オス)が一頭だけあるんですが、標本商さんはなんとか手持ちを期限内に販売するべく
いろいろと手を打っているようです。(もっとも、マニアは入手できなくなるとなれば先を争そって入手しようとするでしょうが)

ちなみに、このミンドロカラスアゲハと良く似た蝶(近似種)に「ルソンカラスアゲハ」がおり、ことらの方は
1987年にワシントン条約の附属書Ⅰに指定されています。
↓が「ルソンカラスアゲハ」です(当然、画像は借り物です)


このルソンカラスアゲハは1965年に日本人の原田基弘氏が世界で最初に発見・採集した蝶で
学名のPapilio Chikaeは、原田氏がお世話になっている人の母親の名前「チカ」からとったということのようです。