このシリーズも150回近くなったこともあって、最近はショボい品のオンパレードですが、残りは僅かですので、もうすぐ終了です
さて、伊万里では野菜の文様が初期伊万里の頃から登場しますが、蕪、大根、茄子あたりがメジャーなところでしょうか
今回紹介する品は、比較的多くみられる大根文の品で、時代的には江戸後期と思われる六寸皿です。
「染付大根の鼠図六寸皿」
いわゆる「大黒鼠」の図柄の品で、幕末近くの品だと鼠が大きく描かれている品もありますが、この品では鼠はえらく小さく描かれています
中期にも同じデザインの品が登場しますが、大きな違いは、中期の品は大根の部分が陽刻になっている点で
そういった点でも、この品が後期の伊万里であることが判ります。
葉の部分はなかなか手慣れた筆致で絵付けされていますね
裏面の唐草からも十九世紀の伊万里(昔は幕末の雑器として扱われていた)であることが判ります。
さて、この絵柄なんですが、なぜ大黒天が描かれていないのに「大黒ねずみ」かと言えば、「大黒ねずみ」を「大根食うねずみ」として描いているようで
いつ頃からこの絵柄が登場するのかは知りませんが、実に頓智の効いた絵柄であることは確かです。
変わった絵ですね。
大根がたくさん描かれていると思いましたが、ネズミがかじっている一本なのですね。大根の葉はいっぱいあります。あと、水仙?の葉と花が描かれているのも不思議です。
かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」でも紹介したことがあります。
そこには、
・大根は豊かな実りと繁栄を象徴する吉祥文として好まれていたし、ネズミは五穀豊穣や子孫繁栄を象徴する吉祥文として好まれていたのである。
・また、ネズミが二股大根をかじっている図は、ネズミが大黒様のお使いであることから、大黒様が二股大根を食べて腹痛を治しているというありがたい場面を現している図なのである。
・つまり、この皿が作られた時点では、この皿には、大根、ネズミ、大黒様という吉祥文が描かれていたことになる。
というようなことを書きました。
この皿には、二股大根とネズミの他に「水仙?の葉と花」まで描かれているんですね。
私が上に書いた以上の意味があるのでしょうね、、、。
水仙の花のように見えるのは大根の花のつもりなんでしょうか・・・
あと気になるのは、「当時は大根と言えば青首大根だったんだろうか?」という点です
実際、これと同じデザインの品の多くは染付けのグラデーションで「青首大根」を表現しています。
大黒ネズミの大根文は伊万里ではわりと見かける絵柄ですよね。
この品は時代が下がることもあって、デザイン的には中期の品と同じですが
花や水仙のような妙な葉が書き加えられています
このあたりが後期伊万里たる所以かも知れません。
ついでながら、庄内地方では12月9日に「大黒さん」という行事があり
はたはたの田楽、二股大根、黒豆の煮物を供えます。
それまでは、練馬大根のような白大根が大根。江戸時代は当然白大根です。
ちなみに、青首大根が普及したのは、もっぱら生産者側の都合です。青首大根は地上に出ている部分が多いので、収穫しやすいのです。ところが、味は白の方が上。私は、在来種の白大根しか作りません(^.^)
ウチも大根は植えていますが、当然のごとく白大根だけです