堺北民主商工会

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「生」の医療

2007年05月25日 10時40分27秒 | 世間の話
 今、日本の医療は大変な状況になっている。本格的な高齢化社会を迎える日本にとって老人医療は差し迫った重要課題の1つである。
 岩手県遠野市は人口3万人の自然豊かな田舎町。この地に守口 尚(37歳)と言う人物が居る。彼は東京の救命救急病院の脳外科医として働いていたが、「命のあり方」「患者と医者はどう向き合うべきか」を自分自身に問いかけ、遥々、遠野市の診療所にやって来た。勿論、この診療所には東京(病院)での最先端医療機器などある筈もないのは承知の上で。
 しかし、彼は患者の日々(の生活)を見つめる医療……つまり、可能な限り、患者と接し、患者と気持ちを分かち合い、患者の命を見守るのが本来の医療ではないか、と昼夜を分かたず奮闘している。
 ある在宅患者に彼は何時ものように「じっちゃん、元気にしてるか。また来たよ」と優しく穏やかな口調で語り掛ける。じっちゃんも彼を我が孫に接するかのように虚ろに頷く。
 ある時、じっちゃんが元気だった昔、毎日通っていた牧場を訪ねてみたいと彼(医者)の耳元で呟く。大概の医者なら「ウンウン」と頷いて「また、来るからね」で終わるのだが、守口 尚の受け止めは違っている。「わかった。じっちゃん、僕と一緒にその牧場に行こう」という受け答えが極、自然に口から出てくる。そして、家族総出でじっちゃんを車イスに乗せ、ワゴン車で出発。山の中腹に広がった牧場を見たじっちゃんの至福の喜びに満ちた顔は何物にも例えようが無く、素晴らしい。
 彼もこんなじっちゃんを見て、心穏やかな安堵の気分になる。
 そして、数ヵ月後、じっちゃんは家族と彼に見守られながら、静かに息を引き取った。
 守口 尚は言う。……「今までに何人もの患者を看取ってきましたが、私は亡くなられた方々や家族の人達に言うんです。…じっちゃんは何時何分に亡くなられました。ではなく、何時何分まで生きられたよ!」と。
 「医療は暮らしの中にある」は堀川病院(京都)の早川一光(医師・83歳)がモットーにしている言葉であるが、守口 尚は今、「生」を見つめる医療を続けている。
 しかし、そんな彼の思いとは裏腹に命の尊さが叫ばれる中で、医療制度の改悪が安倍内閣(自民党・公明党)によって続けられている!