サイババが帰って来るよ

Count down to the Golden age

三刀政策でやって来ました。宜しく

2015-12-05 00:00:25 | 日記

ポニョ:前回は結婚について話したけれど、ババがヴィジャヤ クマーリさんの結婚式の披露宴で十何曲も一人で歌われた話は圧巻やったぜよ。
http://blog.goo.ne.jp/saiponics/e/0b5317aa28c634c9c3b902f3d2c43517
ヨシオ:俺は、ババがその結婚式で歌われた何曲かの曲を、テープで聞いた事があるんや。もちろん結婚式当日はババのコンサートを誰も録音していなかったので、その時に歌われたやつじゃないけれど同じ曲やったんや。

ポニョ:どんな感じの曲やった?

ヨシオ:結婚式に相応しい明るく力強い感じの曲やったな。夫婦になって二人で手を繋いで神様のもとに行きましょうという内容やったかどうかよく分からないけれど、とにかくそんな感じの歌やったな。気持ちがしっかり入っていて聞いているだけで、男と女が結びつくって本当はとても神聖な事なんやなという気持ちになったな。

ポニョ:結婚って本来はそうあるべきやもんな。でも今では援交とかで社会のモラルが落ちるところまで落ちているから、神さんはどのようにしてこれを正されるか見ものやぜよ。

ヨシオ:ガンジーもそうやったけれど、昔の人はとても若く結婚してたよな。俺の祖母も十六歳の時に見初められて、日本でビジネスをしていた祖父と結婚したんや。

ポニョ:祖母って親父さんの方の両親やろ。百年以上も前に中国のどこやったっけ?

ヨシオ:南京から揚子江の対岸の六合県という小さな村や。通りの名前が北門大街と言うんやけれど、昔その村の周りは、高さ十メートルもある城壁で囲まれていて、その城壁の北の門の近くに家があったんや。祖母の父親は裁判官で三人の娘と一人の息子を育てていたんや。家の窓から城壁が見えて、よく子供がその上で遊んでいたって言ってたな。昔の女性は纏足と言って、布で子供の頃から足が大きくならないように強く縛るので、よちよち歩きしか出来ないんや。

ポニョ:それってひどいやないか。

ヨシオ:そうやろ。俺も祖母の足を見た時に何でこんなに小さな足をしてるんやろか?なんていつも不思議に思っていたんや。

ポニョ:昔の女性は玩具のようにして扱われていたんやろな。

ヨシオ:多分そうやろな。中国で女性を軽蔑する時に、君は大きい足をしているねと言うんや。つまり女性が野良仕事をしたり、家計を支える為に働かなくてはいけないほど、家が貧しいという意味なんや。だから金持ちの家や、そこそこ余裕のある家の娘は纏足をするんや。

ポニョ:ふーん面白いぜよ。

ヨシオ:それである日、祖母が家の窓から顔を出して何気なく外の様子を見ていたら、祖父が通りかかって祖母に一目惚れしてしまったんや。

ポニョ:何か面白い話になりそうやから、今日から少しあんたの家族について語ってもらう事にしよか?今まで堅苦しい話が多かったから、ちょっとリラックスして聞いてやって下さい。あんたの家族は、中国と日本に住んでいて、インドのグルに仕えてオーストラリアに住んでいるってユニークやもんな。というわけで先ず、中国から日本に来た祖父母さんのお話からしよか。ところで祖父母さんの名前はなんて言うんや?

ヨシオ:祖父は張信仁という名で、祖母は林家の人やから林氏と呼ばれていたな。では、信仁の話からしますね。

信仁は林氏と同じ南京の北を流れている揚子江から少し北の方に行った、六合県という村の郊外にある農家の生まれだった。小さい時に父親を病で亡くしたので、母親が一日中、田んぼで働いていた。信仁がまだ幼かった頃は、勝手に家から出て行かないように家の鍵を閉めて信仁を閉じ込めてから、野良仕事に出かけた。信仁もやがて母親を手伝えるような年になって来た。水牛と一日中一緒に田んぼで過ごし、昼寝も水牛の上でしたほどだった。ある日、いつものように水牛の上で疲れて寝てしまい背中から落ちた事がある。その時顔から落ちたので前歯をほとんど折ってしまい、歯抜けの顔になってしまったのだ。母親が亡くなった後、田んぼや牛を売り払い、中国で一番大きな都市で、暗黒の魔都市と言われギャング達が跋扈する上海に出かけた。揚子江の支流が六合県を流れているので、そこから帆掛船に乗り上海まで何日も掛けて下って行った。そこは信仁にとって見慣れた中国の農村の風景とは全然違う別世界だった。イギリスの植民地で街中にある公園には「犬と中国人は立ち入るべからず」という立て札があった。そして至る所に貧しい腹を空かした乞食と裕福そうな白人達がいた。

信仁は人々が阿片を吸っているのを見た。しかし、上海の街は人種のるつぼで世界中からありとあらゆる者達が徘徊していた。信仁は田んぼや牛を売った金を大事にとっておいて、将来のために使わずにいた。取り敢えず上海で何か仕事をしようと探していると、散髪屋が弟子を求めているという話を聞いたので、早速その店に行き、理髪店の小僧として働く事になった。やがて見よう見まねで理容師の真似事が出来るようになり、余裕も出て来た。そんな時、信仁は上海の港を見て歩くのが好きだった。特に店の近くの揚子江のほとりの黄浦江を歩いていると、大小様々な船が行き交っているのが見え自分も一度水平線の彼方にある何処かの国に行きたいなと考えるようになった。ある日、信仁は意を決して世話になった理髪店の主人に別れを告げると、神戸行きの貨物船に飛び乗った。三日掛けて神戸に着くと、信仁は日本の商売の中心地だと聞いていた大阪に向かい、商店が軒を連ねているあちらこちらの商店街を見て歩いた。そこには中国では見かけた事がない珍しい物が売っていたので、それらの物を買い求め、中国に戻ったときにそれらを売りさばき、逆に日本の商店では見かけなかった中国の物産を日本で売るという貿易商の真似事をして小金を貯めていった。

日本語も片言ながら日常会話に不自由しないくらいに上達して行った。ある日、親しくなった税関の職員が開国した日本には無い技術を持っている職人を対象に、日本への移住を呼びかけている事を聞き、その条件を調べると、三つの職業を募集していると分かった。一つ目は日本には日本料理しか無いので、中華料理を作れるシェフ。二番目は日本には着物しかなかったので、洋服を仕立てる人。最後の三つ目は、日本には髪結いの人はいるけれど、西洋風な散髪が出来る職人がいないので理髪が出来る職人の三つの職だった。これら三つの職業は中華包丁、仕立て屋のハサミと散髪に使うハサミの三つの切れるものを使うので、三つの刀と称して三刀政策と言いう日本政府による初めての移民促進政策であった。中国語では菜刀(料理)、剃刀(理髪)、剪刀(裁縫)と言い、日本に居留している限り、これらの職業を変える事が出来ないという条件も付いていた。それまで信仁は、何度も日本を訪れて日本の人々が大好きになっていた。何と言っても人々は優しい心を持っていて、自分のような日本語を片言しか話せないような者でも暖かく受け入れてくれる。それにとても正直でビジネスをしていても気持ちが良い。お釣りもごまかしたりしないし、日本人の友達も何人か出来た。信仁の気持ちは決まっていた。信仁は上海で修行した散髪の技術を使って、日本で一旗揚げようかなと思い始めた。自分はこの日本の地に骨を埋めても良いなと思った。その頃、いつも通っていた商店街の中でも特に気に入っていたのが、大阪南部にある針中野という街の中心を十字に通っている、大きな駒川町商店街だった。そこは下町で暖かい人情に溢れた街だった。

信仁はその商店街にある、角の店の軒先きを借りて、理髪店を始める事にした。その頃の日本人はまだチョンマゲをしたまま通りを歩いている人達がたくさんいた。散髪屋はハサミ一つと椅子があればどこでも商売が出来るので元手がかからないし、信仁にはちょうど良かった。やがて信仁の器用な散髪の腕前は地元で評判になり、朝から晩までお客が絶える事がなかった。針中野に住んでいる人たちの髪型が西洋風で人々の注目を浴び、その髪型を真似しようと、近隣の町からも電車に乗ってやって来る人もいた。信仁一人では忙し過ぎて手が回らなくなったので、信仁は自分の故郷の六合県から、昔の自分のように窮状に喘いでいる農家から、家を継がなくても良い次男三男を弟子として選び、駒川町の店で雇う事にした。店は相変わらず繁盛し、軒先きを借りていた店を買い取った。

信仁は収入が安定した頃、そろそろ自分も結婚する時が来たと考えた。嫁さんを探すんだったら故郷の街で見つけようと思い、真っ白なスーツと金縁のメガネを買って故郷に錦を飾りに戻った。そして北門大街を歩いていると、空いている窓から顔を出し、ぼんやりと外を見つめている娘に目を奪われて、その娘に一目惚れしてしまったのだ。信仁はその娘がいた家の近所の人たちに会って、その家の事を聞くと、その家の主人は裁判官で、家には三人の器量の良い娘さんと一人の息子がいて、信仁が一目惚れしたのは末娘だという事がわかり、ある日、意を決してその家に出向いて行ったのだ。そして娘の両親に自分のやっている仕事を説明し、是非娘さんを嫁としていただきたいと、何度もその家に通って説得を続けた。その甲斐があって両親も信仁の言葉を信じ、娘を日本でビジネスをしてる若い経営者に嫁に嫁がせる事に決めたのだった。

ヨシオ:というわけで、祖母は十六歳の時に結婚したというお話でした。ちょっと長かったかな?ババの話と関係無いけれど。

ポニョ:いや、めちゃ面白かったぜよ。おいら達は日本にいる華僑のお話なんて全然知らないし、次回も纏足の祖母さんの日本でのお話を聞きたいな。ちょっとぐらいの脱線は読者の皆さんも許して下さるぜよ。

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