すぎなの風(ノルウェー編)       ∼北欧の北極圏・トロムソから∼

北欧の中のノルウェー、
北極圏でも、
穏やかで住みやすいトロムソから
お届けいたします。

義母から受けた「手編み文化」

2020-10-26 | ノルウェーの文化

わっ、かわいい!これ、みんな手編み!

2年前の義妹からの手編みのクリスマスプレゼント。

トロムソに来てから、
雪国ならではのデザイン、しかも手編みには関心する。

「小さい頃から編んでるもの」
というセリフもよく聞く。

義母も この一人で、
若い頃、会議中でも編み物をしていたそうな。
そうすると、頭がよく働いたからだと言う。

それにしても、職場でそれが認められるなんて、
日本じゃ考えられない。

日頃も 時間ができると、彼女は編んでいた。

こういう環境にいると、
肩が凝るから編み物は絶対しない!と決めていた私でさえ
「ちょっと試してみるか」
という気になってくるから、不思議だ。

「編み物でコミュニケーション!」の企みが・・・

義母とのコミュニケーションにもなるだろうと、
伺うように言ってみた。

「相方さんの帽子を編みたいんだけど・・・」

すると、待ってました!とばかりに
毛糸と編針が出てきた。

やられた(笑)。

私はその場で、避けてきた編み物をすることになった。

肩の凝らない姿勢から、編み方まで
義母は、何度でも見せて教えてくれる。
失敗はすっと直してくれ、
疲れた頃には、手作りケーキとコーヒーを出してくれる。

義妹も、子どもの頃から、
こうやって教わってきたらしい。

お蔭で、私も帽子ばかりだが、5個編むことができた。

そう言えば、
編みながらお喋りする「編み物カフェ」はあるけど、
「編み物教室」は、聞いたことがない。

この伝承こそが、ノルウェーの文化だと思う。

※でも、皆が好きで得意なわけではないので、あしからず。

目測で サイズがぴったり!

2年前の9月、娘と息子が来訪した時、
義母は一度会っている娘のセーターを編んでくれていた。
私は息子に帽子をプレゼント。(もちろん義母の指導の元)

私も娘もお義母さんの手編みセーターで。

どうもサイズが小さかったらしいけど。。。(>_<)

すると、もうクリスマスには
この帽子に合うセーターを息子に編んでくれていたのである。

 娘の時と同様、目測のサイズは、息子にぴったり!

義母は、毎年クリスマスまでに
子ども、孫やひ孫にと、どんだけ編むことか!

その中に私も、息子も娘も
入れてもらっていることに、感無量であった。

義母から編み物が奪われて

その義母が、昨年8月末脳梗塞を起こし、
右腕が動かず喋ることができなくなってしまった。

もう編み物もできない。
私もお義母さんから教わることはできない。

孫娘の婿に、と編みかけていたセーターは、
義妹が、引き継いで編んだ。

ある日、入院中の母を訪ねると、
私に雑誌のあるページを見せる。

私:私が編むの?。
義母:(頷く)
私:私に編める?
義母:(大きく頷く)。
私:でも、編み方がわからない。
義母:(じっと私を見る。)
私:・・・じゃあ、義妹に教えてもらう?
義母:(うんうん、とにっこり大きく頷く。)

ヨレヨレ。裏のノルウェー語解説は難しすぎて理解不能。

それが、昨年11月の末。
密かに「義母へのクリスマスプレゼントにしよう」と、
義妹に教えてもらいながら、
私にしたら、猛スピードで編み始めた。

しかし、諸々の事情で間に合わず、
滞っている間に、コロナ波到来。

妹さんにも聞けず、ネットでもわからず、
セーターは、完成前に棚で眠ることになった。

失くした帽子の生まれ変わりに励まされ

この冬を前に
友人から温かいサプライズを頂いた。

昨年、私は自分で編んで大喜びしていた帽子を失くして、落胆。
そこで彼女は、それと同じデザインの帽子を編んでくれたのだ。


この手袋に合わせて編んだ帽子が、質を上げて再現された!

私があれをもう一度編むには、時間がかかるだろう。
ズバリ!私のことをよくわかってくれている。
彼女は、子どもを産んだばかりで忙しいというのに・・・

そこで、私は思い立った。

やっぱり、お義母さんにプレゼントしよう!

そこで、また義妹さんに教えてもらい、
再び編み始めている。

編み物をしている時間

音楽もかけず、編んでみる。

ゆっくりと 静かな時間

横で相方さんが何やら読みながら、
たまに話しかけてくる。

いろいろな人が、思い出と共に浮かんでくる。

こんな時間もいいなあ。

義母も、こんな時間が好きだったのだろうか。

編み物の面白さには、まだまだ程遠いところで
想いめぐらす初冬の夕べである。



 

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冬の前触れに「今のうち」スイッチが入る

2020-10-19 | ノルウェーの生活

朝一番、はっとする時

朝一番外を見て、「はっとするとき」が、
必ず一年に一度訪れます。

粉砂糖をまんべんなく振りかけたように 
一晩で、山が一変している。

ここで降っていた雨が、
山では雪になっているのです。

それは、秋の終わりの前触れ。

美しさはさておき、以前は、
「もう寒くなるんだ。冬が来るんだ」
と、この不意打ちに身がすくんだものです。

でも、今年は、さすがに4回目、違いました。

「今のうちに、もう一回は山を歩いておきたい。
  自転車でも出かけとかなくっちゃ。
  今のうちに」。

「日が当たって、緩やかで、初めての山」。

「日が当たって、緩やかで、登ったことない山ね」。

そんな山いくらでもある。

気の向いた所に車で向かい、車を降りて登る。
そんな軽いノリです。

女の子一人でも  9月27日 Trehøringenにて


小さな子ども連れでも
 

記憶に 深く、温かく、とどまりますように。

ゆっくり起きて、ゆったり朝食を食べ、
食料を作ってコーヒーをポットに淹れて、
さあ、出発。

この「ゆるゆる感」。
年々増してきた気がするなあ。

ここに慣れてきたからか・・・年のせいか?

瞼を閉じても透ける光
ダイヤモンドをちりばめたような水面
ふかふかと山を覆い尽くす草のぬくもり

ただ陽を受けているだけ。

この心地よさよ。
幸せよ。

記憶に 
深く、温かく、
とどまりますように。


なんとも柔和な表情。バケツには、屋根の上に生えたコケモモの実。



 
そして、今週の土曜日、
朝起きたら、庭が白い!

そう、初雪です。
でも、今年は遅かったんですよ。
 
もう少し、「今のうち」は続きます。

畑は完全に終わり。ミント、また来年ね~!




成長した子ガモも そろそろ旅立つことでしょう
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月曜日は、「ブログとパンの日」

2020-10-12 | ノルウェーの生活

ずっしり重くて、ボソボソのパン

私はパンが好きで、
日本では、自分でも焼くし、
おかずパンから、ケーキのような繊細なものまで、
よく買ったものです。

ところが、トロムソって、
パン屋さんも少なければ、種類も少ないし、
日本で売っているパンとは全く違います。

ただし、普通にスーパーで売っているパンの種類は多い!
その主流は、全粒粉や木の実、種がぎっしりで重く、
栄養はたっぷり。

でも、ボソボソなんです。

「月曜日は、ブログとパンの日」

相方さんもお義父さんも、パンを焼きます。

でも、レシピは見ない、計りも使わない。
どーっと6本一度に焼く。

手早くて、大胆!
とにかく、厭わずやるところが、すごい。

パンは、スーパーと男の人に任せよう!

しかし、コロナ期には、
お義父さんも いよいよパンが焼けなくなり、
私は仕事がない。

ということで、時流に乗って、
私もパンを焼いてみることにしました。

歯の弱い私には歯が立たぬほどのカチカチパンが、
最近はしっとりパンになってきました。

いつの間にか、
「月曜日は、ブログとパンの日」
となっています。

ただ今、パンもブログも発酵中!

この材料の量、重さ・・・どうです?

今日のパンの配合を紹介します。(気分で、分量、材料は変わる)


今日うちにあったのは、小麦、ライ麦、スペルト小麦。全粒と粉状タイプ。

Ⓐ白い小麦粉 750g
 全粒小麦粉 375g
 全粒ライ麦 375g
 塩 小さじ3

Ⓑひまわりの種 3種合計約400g
 かぼちゃの種
 リンの種
※前日から水に浸しておく。
※混ぜる前に約40度に温める。

Ⓒ約40℃のぬるま湯に生イースト1/2個を溶かしておく。

ⒶⒷⒸに、生地の状態を見ながら、
 適当にぬるま湯を追加してこねる。(機械が)

結局、私も適当で、お義父さん、相方さんと同類でした!



 


第一発酵後

柔らかく焼くコツは、
・発酵しすぎないようにする。
・焼く前に表面にオイルを塗る。
・最初の10分は、高温(250℃)で。
・焼き上がりに濡れ布巾をかけておくと、外側も柔らかくなる。

●「ボソボソ」にも理由があったんだあ!

先日、自家製パンでサンドウィッチを作って、
山で食べようとして、ハッとしました。

冷たい!

そうか、しっとりしていると、水分が多くて冷たくなりやすい。

しっとりしていないと、冷たくなりにくいんだ。

「ボソボソ」にも
寒冷地の理由があったんだあ!(ほんま・・・?)

お、パンも焼きあがりました!
1本1kgなり。

では、また来週。
皆さん、元気でいましょうね。


焼きたては、バターとカフェオレ。これが私の楽しみ!
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トロムソを飛びだし,戻ってきて~ひらめきの旅より(最終話)~

2020-10-06 | ノルウェーから

トロンハイムを折り返し地点に選んだわけ

ひらめきの旅、どうしてトロンハムを折り返し地点に選んだか。
それは、3つの条件から。

1.トロムソと雰囲気の違う、暖かい所へ脱出したい!
2.まだ行ったことがない中ノルウェーの、トロムソより大きな町
3.10日でゆっくり滞在・往復できる距離にある。

そこで浮上したのが、トロンハイム。
かねがね行ってみたかったのもあり、即決定!

北緯66.33度に立ってみて

中ノルウェーとの間には、大きな境界線がありました。

「66.33°」。

ここより北が北極圏。
大雑把に言うと、
「真夜中の太陽」が見えるかどうかの境目。



ここには、第二次世界大戦中、
ドイツ軍がロシアから捕虜収容所を移した跡地もあり、
なんとも厳しい気候と環境が覗われます。

私には、かなり衝撃的な場所でした。

「ここから、まだ北」。

当時、どんなイメージを持たれていたでしょう?

暖かさで、こうも違うのか

寒い地域には針葉樹なんて、単純に思っていましたが、
実際には樺(白樺でなく)が多く、
さらに標高300mからは、木が生えません。
樺はストーブの薪に最適、つまり北極圏には必須の木。

 
それが、南下するにつれ、
木材に使われるエゾ松へと変化していきます。

また、高い山々が、丘になり、
狭いジャガイモ畑から、

広い麦畑が延々と続くようになります。

ノルウェーになかった小麦が品種改良され、
今や小麦の自給率75%だそうです。

景色の変化に、線路も加わります。



「わあ、線路だ。電車来るかな~」とワクワク。
おいおい、あんたは、昭和初期の子どもかい?

トロンハイムの街は、明るく暖かく文化的

お目当ては、
ニーダロス大聖堂
火事で焼けた後復興された音楽歴史博物館

ニーダロス大聖堂は、国王の戴冠式もされていた教会。
中世の建築様式で、
1140年以来増築・改築を続けたこの聖堂は、
ヨーロッパの風景とも重なります。

この日は、サックスの演奏が屋上から聖堂一体に響き渡りました。
うーん、こういう趣向、心に響くわあ。

音楽歴史博物館は、個人が世界から集めたコレクションが元。
私は、ノルウェーハープの歴史を知りたくて行ったのですが、
「農民のハープ(そうなの?)」と記されただけで、
それ以外の情報は何もありません。
残念しかり。

※ 中は素晴らしいんですよ。行かれた方には、お勧めです!

ランゲレークというハープについては、沢山情報があるのになあ。

やっぱり、暖かいって、いいわあ~!

しょぼくれた私、植物園の芝の上に横になると、
1時間も眠ってしまった!

暖かいって、なんて気持ちいいんでしょう。

もうそろそろ北ノルウェーというところでは、
車から綺麗な湖を発見!

そこで、降りて・・・
泳ぎました!(一応水着は持っていた)

ああ、やっぱり暖かいって、いいなあ。

再びトロムソの風景に迎えられて

この旅にも十分満足。
このままトロムソまで帰ろう、ということになりました。

日が暮れていた時間でも、
トロムソに近づくほどに明るくなってきます。

静かに頬を染める山。
いちごミルク色の空。

8月1日 22:27

8月1日 23:14

そう言えば、旅の間、この風景はありませんでした。

「これが、北ノルウェー、北極圏だったんだ」。

次に迎えてくれたのは、
海上から山のすそ野を埋め尽くす濃い霧。
昼間は暖かく、太陽が沈んで急に気温が下がった時に起こる現象です。

8月1日 23:22

こんな神秘的な風景もなかった。
デンマーク、スウェーデンにも通じる中ノルウェーの風景が、
北ノルウェーでコロッと変わるのです。

EDELに来たお客さんの言葉を思い出しました。

「全く違う気候・風土を味わいにトロムソに来たの。
 オーロラだけのために来ないわ」。

確かに。

ここは、
ノルウェーの中でも、
北欧の中でも、
ヨーロッパの中でも、
世界の中でも
特別なところ。

もうちょいと、ふんばるか。

と、書いたところで、

相方さんが呼ぶ。
私は毛布をつかみ、電気を消して、ベランダへ。

満天にオーロラが広がっています。
そして、今夜は明るい流れ星も。

いろいろあるでしょうが、
皆さん、10月も元気でまいりましょう。

「ひらめきの旅より」最終話まで
お付き合いくださって、
ありがとうございました。

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