すぎなの風(ノルウェー編)       ∼北欧の北極圏・トロムソから∼

北欧の中のノルウェー、
北極圏でも、
穏やかで住みやすいトロムソから
お届けいたします。

号外・義父を見送って

2021-07-20 | アイリッシュハープ
ブログを早々に夏休みにしたのは、
実は、義父の具合が悪くなってきたからでした。
しかし、こんな早く逝ってしまうとは・・・・。

6月30日逝去、
7月14日に教会で葬儀を無事終えました。

休み明け早々にこの知らせは・・・
と思い、号外で書きます。

死因は、ポリオ。
たぶん、皆さん、想像しにくいと思います。

私は、息子、娘に三種混合で
ポリオのワクチンを接種させましたが
副作用を気にはしても
ポリオについては、
ろくに知りませんでした。

※ポリオ(小児麻痺、急性灰白隨縁)のワクチンは、
 日本では1960年に始まり、1980年の患者が最後。
 しかし、まだ世界にはポリオ患者がいて、
 治療法が未だないので、
 ワクチンで予防することが必須、と言われている病気。

●ポリオと共に生きた義父

父は、1935年生まれ。
3歳でポリオに感染、
脊髄に菌が入り、全身に影響を受け、
特に右足の筋肉は極端に細くなりました。
幸いにも、ポリオのトレーニングにより、
歩けるようになりました。
2回の手術を経て、
山歩き、スキー、キャンプ、車の運転もこなしてきました。

ただ、「脚の痛みは、常にあった」と話したのは、最近のこと。
一度も「痛い」と言ったことがなかったそうです。

「50歳で車椅子になるかもしれないが、それでもいいか?」
と言うのが、義母へのポロポーズ。

実際には、日常で車椅子は使わずに済みました。
彼は体の使い方が上手だったのでしょう。

ただ、老化とともに維持できなくなり、
手足にさらなる支障が出てきたのが、70歳。
トルコでトレーニングを受け、
冬は暖かいスペインのグランドカナリアで暮らし、
また上手に体を維持していました。

家族を愛し愛され、
自分の人生を謳歌していました。

私と娘も一緒にイタリアに旅行した時は、81歳。

バチカン、サン・ピエトロ大聖堂クーポラへの
階段320段も登り切りました。

恐れはなく、いつも笑顔で前向き。

しかし、この一年、筋肉は18㎏落ち、
手足はもちろん、喉、
ついに呼吸器にも影響が出てきました。

サービス付きマンションに引っ越して約3週間、
呼吸困難で入院。

私たちが行くと、
呼吸器の為、ジェスチャーで
「やってくれ」と私に言います。
いつも私が義父にしていた、脚のケア。

私が始めると、指をピクピクさせて笑っています。

次の日は、鼻からの呼吸器だったので、
頭もさえてよく喋りました。

「ハルコがすると足の腫れがひく。不思議だ」
「また明日ね~」。

まさか、それが最後の言葉になるとは・・・。

その翌朝6時前です、
医者から家族に召集がかかったのは。

「横隔膜の機能が完全に止まりました。
 酸素を入れても二酸化炭素を排出できず、
 本人が苦しいだけなので、
 呼吸器は外します」。

医者からの説明は
家族も予測していたこと。
義母も皆が理解し、受け入れました。

それからの病院の配慮には驚きました。
義父の右横に義母のベッドを並べてくれたのです。
車椅子で到着し、左手しか使えない母の為に。
義母は義父の手を握り続け、
私たち家族が二人を見守ること、4時間。

呼吸の音は静かに消えていきました。

●家族の心のこもった葬儀

私は数回葬儀に参列したことがありましたが、
ノルウェーの葬儀は温かい。

その訳が分かりました。

家族、教会の都合で決める日程には
心身に余裕をもらえます。

葬儀屋の指揮ですが、
全ては家族が決めます。

神父と家族のミーティングがあり、
神父が書いてまとめた本人の人生を
家族がさらに訂正しました。
こうして葬儀で、
神父は、義父の人生を
優しく楽しく語って下さいました。

音楽は、全て義母が選んだ曲を
プロのオルガニストが演奏。
(手の負傷で今回は、ピアノでした)

※ 神父、オルガニストには、
  市から給金が出るので、家族は無料なのです。

「家族から」では、
義妹の「父との思い出談」と
私と相方さんのギター・ハープ演奏。

プログラムの写真は、
全て相方さんと私の写真を
使ってもらえました。

淋しいけれど、私たちは落ち着いています。

義父は、最後まで義母を想い、義母と過ごし、
引っ越し後は、毎日、
遠くの孫や友人の訪問がありました。
家族も、彼をサポートし、
毎日彼と電話で話してきました。

心静かにおれるのは、
人生を全うした彼を
心から尊く思えるからだ、と思います。

私が思い出すのは、
出逢った日から全く変わらなかった
義父の笑顔。
言葉に頼らず、私を受け止め、心交わしてくれた
あの笑顔。

今は、私の父母も交えて笑っていることでしょう。

どうぞ皆さん、引きつづき
夏のよき時間をお過ごしくださいね。

日本の動向、祈る思いで見ています。



イタリアでの義母と義父 
義父の故郷ロフォテンのLaupstad


トロムソでずっと眺めたであろう山・Blåmann、  
歌の歌詞が載っています


コメント
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