磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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化石

2008年08月20日 | 読書日記など
『化石』
 奥村徹行・著/新日本出版社1984年

短編集です。
--「化石」という作品が原爆関連です。
父母がヒロシマで被爆、被爆二世が主人公。




■目 次■
化石  5
溺れ達のわかれ  33
かさね生く日  55
光への記憶  77
影を踏む  99
地平への予感  149
風、翻る--  171
風にのうたう歌

主人公は法律関係者。
--元原発労働者の所へ。下「」引用。

「四十をすぎた男はわらうような柔和な目もとをしていたが、年齢のわりに皺が多く、そして深かった。髪が抜ける。歯がぼろぼろと欠けると訴え、原子力発電所に出稼ぎに行ってのちに生れた長女の白血病に似た症状を悩んでいた。長女の異常出地に、死んでも死にきれないと目を伏せた。
 仕事上でペアを組んでいる神矢弁護士と大月がかれの話を聞いたのは一年前だった。
 出稼ぎで原子力発電所に働いたのは、稲の取り入れが尾をってからの二ヵ月間。日当は土光の約二倍。原子炉の機構、放射能の危険性についての教育は一切なし。作業内容は清掃。おもにこぼれた冷却水を濡れ雑巾でぬぐう。作業場所は清掃会社の指示による。立入禁止と書かれた区域を指示どおりに出ると、胸にさしていた万年筆の形をした放射能被曝量をはかるポケット線量計の針がとんでいた。」

電力会社などは……。下「」引用。

「電力会社と清掃会社にあたった。電力会社の担当者は、被曝量そのものが国の特定許容量以下だったのだからいまになって放射能障害が出ることは考えられないと冷ややかだった。人間に害を与えるものに許容量などなない、とおもわず大月がいうと、かれは、アメリカでは黒人が被曝線量など全く無関心に裸で働いていますが別状ないですよといい、日本人は放射能に敏感すぎて困るといいたげだった。清掃会社のほうは電力会社のいうとおりにしただけだと逃げた。」

少しでも放射線は浴びないほうがいいといわれている……。

原発での事故のとき、清掃作業員は……。下「」引用。

「原子力発電所では日常的に大小の事故が発生する。技術者が修理、交換するのだが、事故が発生した所は放射能汚染されている。そこで先に汚染を除去しておく必要がある。そのために清掃作業員が求められる。清掃作業院は確実に被曝する。被曝を社会問題化させないように短期雇用して、使いすてのように回転させている-略-」

--パネル写真。南の島、30年以上もの戦争で死んだ日本兵の白骨。それを見て、女は「カセキ」といったという……。

ドラマ缶に入れられていたヒロシマ……。下「」引用。

「放射能被曝した原告がもし人間でなかったら、まさに放射能汚染の拡散を防ぐためにドラム罐につめられ完全密封されたかもしれない。人間であったためにドラム罐につめこまなかった。しかし、広島、長崎では、何万、何十万という人間をドラム罐につめこんだのではなかったか。とてつもなく巨大なドラム罐に。その町をおおいつくすほどの。そして、そこを偶然に生きのびた人間は遺伝という形で、時間をこえて放射能汚染を拡散していくのではないか。大月は訴状を打つ手に力をこめた。」

カセキ……。
--ある種の人たちにとっては、貧困も、孤老や、差別される人たち……、そして、このような被害者もカセキなのかもしれない……。
しかし、本当の人間は後者だろう……。



--著者の説明。
奥村徹行(おおむらてつゆき)
1947年広島生まれ
日本民主主義文学同盟員







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