あかねさんシリーズ002 男が女de女が男 171 文明の奴隷! 「どうした、茜くん」 「“文明の奴隷”になるなんていやなことです」 「何をいうんだね。“文明の奴隷?”、そんな理論はきいたことがないぞ。文明とは、責任ある人間がつくるものだよ、きみは何を勘違いしているんだね」 「そう、つくるもので、奴隷になることではないさ」 横で、電子辞書をあわてて操作しているワカメ。 「奴隷とは『人間としての権利・自由が認められず、道具同様に持主の私有物として労働に使役される人間。「奴隷解放」。転じて、あるものに心を奪われ、それにしばりつけられている人。例として「金銭の奴隷」』って書いてあるわ」 「まさに、奴隷よね、茜さん、いいこといってくれるわね。生まれてはじめて、いいことをいうの聞いたわ」 「うるさいなあー」 ほんと、こっちの世界の小一郎も嫌みたっぷりだわ。 でも、こっちの世界では、私の方がでっかい態度でいられるわ! 「茜くん、わたしのことを奴隷とでも思いたいわけかね。わたしのどこが奴隷だね。いいかい、この日本の文化を背負っているのは、わたしたちで、きみたち若造じゃないんだ。たとえ、西崎グループのお嬢様だからって、それを忘れては困る。きみが学ぼうとしているものは、間違っているかもしれない。それを教えてくれるのは、文明というものだ」 「文明は人間がつくるものじゃなかったのですか」 「そうだとも、責任ある人間がつくるものだ! 歴史も伝統もある。わかるかね、間違った道に進むことはないんだ。その間違った道を歩いているかどうかを教えてくれるのが文明と歴史であるといってもいいのだ。だから、諸君はくだらん運動などしていないで、もっと真剣に勉学に励みたまえ」 「よく、いうわね。奴隷になるために、勉学するのなんて、まっぴらご免よ」 「何が奴隷だね。何だなあー、最近は男性の国会議員も生まれ、大臣でさえもなっているではないか。彼らは、よく勉学に励んだんだぞ」 「そして、男性でも、女性と同じようなことをしているんですわ。奴隷になっていることも気づかないで、まるで女みたいよ。奴隷になっていることを気づかないのは、先生とか言われていることや、その報酬の多さでしかないのよ。給料が多ければ、その人は奴隷じゃないっていうの、物もらいの量が多ければ乞食じゃないってことなの、そんなのおかしいわよ。その文明の尺度は、お金と支配しかないんじゃないの? そこのどこに文化があるの、まちがった歴史はあると思うけれどもね……」 スラスラと話す小一郎。 但馬教授は赤い顔をしている。 「あのなあー、そんなに勉学をしたくなければ、すぐに退学して、テロリストにでもなればいいんだ! まったく、わけのわからないことをぬかしおって、このバカ者が!」 と、すごい剣幕である。
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