XII.魔法かもしれない?
D159.いい魔法、わるい魔法
「調子が悪いのに、こんなきれいな景色がうつるなんて、ロマンチックね」
「この景色、どこかで、見たことがあるんだがなぁ」
アゴに手をおく石井。
「ええ、どこなの。こんなきれいなところ、わたしも行きたいわ」
桃子ははずむように話した。
石井は、考えこんでいる。
「そうだ。これは大学時代に行ったことがある。埼玉県の田島ガ原というところだよ。田島ガ原だけにサクラソウの自生地があるそうだし、天然記念物に指定されているはずだよ」
「どこにあるの」
「昔でいう浦和市、浦和レッズのあるところだ。今は合併して「さいまた市」だね。だけど、花が咲くのは今ごろではないよ。サクラソウは四月ごろ咲く花だよ」
「四月ごろ咲く花がいまごろ咲くの。まるで魔法ね」
「魔法というよりも、録画だろうなあー」
「今度、あやちゃんと、パパとでピクニックに行きましょうね」
桃子が言ったとき、テレビの画面は花でいっぱいになった。
「しかし、こんなにたくさん咲くものだろうかなあー」
みどりの部屋のように黄色の花ではなく、ピンク色の本当のサクラソウの花で、画面はいっぱいになった。
しばらく、サクラソウの花をながめてから桃子は微笑んで話す。
「兄貴、一人暮らしで大変ね。それじゃ兄貴、アキラとよく話しあうから、心配しないで」
あやちゃんを抱いて、帰っていった。
あやちゃんたちが帰ると、画面はいつものテレビ番組をうつしていた。リモコンにさわるといつもの通り、正確に作動した。
もしかしたら、本当に魔法の粉があって、自分たちの身の上にも変化があったのかもと思った。
「そんな非科学的なことがあるわけないな、でも、もしかして魔法だとしたら、ピーチに“何でも叶う魔法の粉”がついていたのかもしれない」
石井はひとりごとを言った。
そして、石井は引き出しから『王様と乞食II』を取り出した。
「このゴールは、人への思いやりができる人物になったら、大人であって、『本当の王様』であるという結末だったなあー。桃子にプレゼントしてやるかあー」
それから、キッチンに行ったが、ピーチのかけらも机の上にも流し台の上にもなかった。
「桃子が後かたずけまで、ちゃんとしていくなんて……。これは魔法としか考えられない!」
石井は、心底、驚いていた。そして、こんなことをカールが言っていたのを思い出した。
『人間は魔法に夢を見るらしいね。でも、魔法使いにとっては、魔法はあるのだから、魔法にしかすぎない。魔法なんて、人間の科学みたいなものさ。でも、本当の魔法はあると思うね。ほら、子どものころ、こけた時、お母さんが、膝小僧の泥を払いのけて、薬をつけてくれて、『痛いの、痛いの、飛んで行け!』と言ってくれると、不思議なことに痛みが薄れただろう。これこそが魔法さ』
頑固な魔法使いも認める正真正銘の魔法だなあーと石井は大笑いした。
今はバーチャルリアリティと呼ばれる時代である。
ないものもあるように、表現できる時代である。それも魔法のように思える。
魔法にはよい魔法もあれば、悪い魔法もあるだろう。愛情のある魔法は人を幸せにするかもしれない。この人類の魔法もきっと使う人によって、その意味は変わることだろう。
でも、現実を忘れては何にもならないだろうと思う。
君の幸せは現実か、空想か、そんなこともわからなくってしまう人たちもいるのが、現代社会である。
本当に魔法があるとしたら、魔法も空想でなく現実に起こることだろう。
そして、今日あったことで、もし石井が魔法と認めることができるのは、桃子がしたことだけである。気まぐれに桃子はかたづけたという人がいるかもしれないが、桃子のことをよく知っている鈴木は、そんなことが100パーセントないことを知っている。
そして、他はバーチャル・リアリティでも表現できることであるからである。
鈴木は自分が現実に見たことだけを信じている。
魔法はあったらいいと思うが、愛情のない魔法には気をつけたほうがいい。世の中には、ひどい人たちもいるのだということを、心にしよう。魔法使いにも悪い魔法使いがいるように……。
「でも、空想を楽しむことができるのは、人類だけだろうなあー。科学にも空想が必要なことなんだ。昔は空を飛ぶなんていったら、頭がおかしくなったの? って思われたが、ライト兄弟によって、空を飛ぶことができるようになった。それは、ライト兄弟の空想からはじまったことだし。環境問題を解決するのは、自然を大切にする科学だろうと思う」
石井はコーヒーを口にした。
「新幹線もそうだったなあー。200キロ以上のスピードなら、空を飛ぶから不可能だといわれていた。今じゃ200キロ以上で走っているが、まだ新幹線は空を飛ぶまでにいたっていないなあー」
そして笑った。
「空をとんだら困ることになるなあー」
石井はPCに入力した。
技術とはできないことも可能にしてしまう。
しかし、その技術で今までに起こらなかった問題もおきてくる。
今までの人類はよい部分しか見つめないでいた。悪いところも見なければ……。
理性が大切だろう……。新しいものをつくりだしていくということは。
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[レインボー・ループ]もくじ
D159.いい魔法、わるい魔法
「調子が悪いのに、こんなきれいな景色がうつるなんて、ロマンチックね」
「この景色、どこかで、見たことがあるんだがなぁ」
アゴに手をおく石井。
「ええ、どこなの。こんなきれいなところ、わたしも行きたいわ」
桃子ははずむように話した。
石井は、考えこんでいる。
「そうだ。これは大学時代に行ったことがある。埼玉県の田島ガ原というところだよ。田島ガ原だけにサクラソウの自生地があるそうだし、天然記念物に指定されているはずだよ」
「どこにあるの」
「昔でいう浦和市、浦和レッズのあるところだ。今は合併して「さいまた市」だね。だけど、花が咲くのは今ごろではないよ。サクラソウは四月ごろ咲く花だよ」
「四月ごろ咲く花がいまごろ咲くの。まるで魔法ね」
「魔法というよりも、録画だろうなあー」
「今度、あやちゃんと、パパとでピクニックに行きましょうね」
桃子が言ったとき、テレビの画面は花でいっぱいになった。
「しかし、こんなにたくさん咲くものだろうかなあー」
みどりの部屋のように黄色の花ではなく、ピンク色の本当のサクラソウの花で、画面はいっぱいになった。
しばらく、サクラソウの花をながめてから桃子は微笑んで話す。
「兄貴、一人暮らしで大変ね。それじゃ兄貴、アキラとよく話しあうから、心配しないで」
あやちゃんを抱いて、帰っていった。
あやちゃんたちが帰ると、画面はいつものテレビ番組をうつしていた。リモコンにさわるといつもの通り、正確に作動した。
もしかしたら、本当に魔法の粉があって、自分たちの身の上にも変化があったのかもと思った。
「そんな非科学的なことがあるわけないな、でも、もしかして魔法だとしたら、ピーチに“何でも叶う魔法の粉”がついていたのかもしれない」
石井はひとりごとを言った。
そして、石井は引き出しから『王様と乞食II』を取り出した。
「このゴールは、人への思いやりができる人物になったら、大人であって、『本当の王様』であるという結末だったなあー。桃子にプレゼントしてやるかあー」
それから、キッチンに行ったが、ピーチのかけらも机の上にも流し台の上にもなかった。
「桃子が後かたずけまで、ちゃんとしていくなんて……。これは魔法としか考えられない!」
石井は、心底、驚いていた。そして、こんなことをカールが言っていたのを思い出した。
『人間は魔法に夢を見るらしいね。でも、魔法使いにとっては、魔法はあるのだから、魔法にしかすぎない。魔法なんて、人間の科学みたいなものさ。でも、本当の魔法はあると思うね。ほら、子どものころ、こけた時、お母さんが、膝小僧の泥を払いのけて、薬をつけてくれて、『痛いの、痛いの、飛んで行け!』と言ってくれると、不思議なことに痛みが薄れただろう。これこそが魔法さ』
頑固な魔法使いも認める正真正銘の魔法だなあーと石井は大笑いした。
今はバーチャルリアリティと呼ばれる時代である。
ないものもあるように、表現できる時代である。それも魔法のように思える。
魔法にはよい魔法もあれば、悪い魔法もあるだろう。愛情のある魔法は人を幸せにするかもしれない。この人類の魔法もきっと使う人によって、その意味は変わることだろう。
でも、現実を忘れては何にもならないだろうと思う。
君の幸せは現実か、空想か、そんなこともわからなくってしまう人たちもいるのが、現代社会である。
本当に魔法があるとしたら、魔法も空想でなく現実に起こることだろう。
そして、今日あったことで、もし石井が魔法と認めることができるのは、桃子がしたことだけである。気まぐれに桃子はかたづけたという人がいるかもしれないが、桃子のことをよく知っている鈴木は、そんなことが100パーセントないことを知っている。
そして、他はバーチャル・リアリティでも表現できることであるからである。
鈴木は自分が現実に見たことだけを信じている。
魔法はあったらいいと思うが、愛情のない魔法には気をつけたほうがいい。世の中には、ひどい人たちもいるのだということを、心にしよう。魔法使いにも悪い魔法使いがいるように……。
「でも、空想を楽しむことができるのは、人類だけだろうなあー。科学にも空想が必要なことなんだ。昔は空を飛ぶなんていったら、頭がおかしくなったの? って思われたが、ライト兄弟によって、空を飛ぶことができるようになった。それは、ライト兄弟の空想からはじまったことだし。環境問題を解決するのは、自然を大切にする科学だろうと思う」
石井はコーヒーを口にした。
「新幹線もそうだったなあー。200キロ以上のスピードなら、空を飛ぶから不可能だといわれていた。今じゃ200キロ以上で走っているが、まだ新幹線は空を飛ぶまでにいたっていないなあー」
そして笑った。
「空をとんだら困ることになるなあー」
石井はPCに入力した。
技術とはできないことも可能にしてしまう。
しかし、その技術で今までに起こらなかった問題もおきてくる。
今までの人類はよい部分しか見つめないでいた。悪いところも見なければ……。
理性が大切だろう……。新しいものをつくりだしていくということは。
閑話休題 さいたま市を雑誌で 読みましたが、なかなか 素晴らしいところですね。 田島ケ原だけでなく、 いろいろな施設もあるし、 もちろん、浦和レッズがある ところですね。 田島ヶ原桜草公園 さいたま市宇宙劇場 |
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今年のレッズは強そうですよ。(^^)
浦和市の時の方が、よかったかなぁ~♪
いまでは人形の街「岩槻」までもが さいたま市・・・。