総理がコジキでコジキがソーリィー 009 ソーリィと総理 「そう泣くなよ。ソーリィー」 「娘さんのことは禁句だったなあー」 「ごめんよ、ソーリィー」 仲間たちは、ソーリィーの体を支えてやる。そうでないとソーリィーは今にも、倒れてしまいそうだった。 沙也加は、もし自分の父である総理が、私が死んだら、このように総理は泣いてくれるかしらと……。きっと泣いてなんてくれないと、すぐに思った。 ソーリィーと総理は顔や体形は似ているけど、中身はまったく違うように沙也加には感じた……。 今日会ったばかりだけど、ソーリィーには温かい心があるけど、父にはそんなものはないように思えた。 「ソーリィー、ごめんよ、悲しませたなあー」 「でも、ソーリィーは幸せだよ、それだけ愛していた娘さんがいるんだからなあー」 「いや、愛していたじゃないよ」 と、若いホームレス。 「えっ!」 沙也加は自分の父のように、ソーリィーも愛しているふりだけなのかと思った。 演じているだけなのかと……。 みんなの注目が若いホームレスにいった。鼻の横を右の人さし指でこすって、 「今も愛しているから、こんなに泣くんだよ。娘さんは今でも、ソーリィーの心の中では生きているんだよ。そうだろう!」 と、自信ありげに言う。 「そのとおりだよ」 「だったら、素敵なことじゃないか、ソーリィー」 「まったくもって、素敵なことだよ」 ホームレス仲間たちはソーリィーを励ましているのである。 「でも、生きていてくれたら、どんなに嬉しかったかあー」 ソーリィーの顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃであった。 でも、沙也加には人間らしくって温かくて素敵な顔に見えた。
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