磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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文学の館15 北の天使南の天使

2007年05月09日 | 読書日記など
『文学の館15 北の天使南の天使』
   吉本直志郎・作/遠藤てるよ・絵/ポプラ社1982年

被爆者を主人公にした物語です。この物語も「青葉学園」が舞台として登場します。



西本鶏介の解説はどうも納得できませんでした。
この作品について褒めるために、ほかの作品をひどく書いているような気になりました。下「」引用。

「作者は戦争被害イコール戦争悪の図式によって原爆は悲惨さを、これ見よがしに書こうとしているのではありません。どんな苛酷な境遇にあっても、それに耐え、必死に生きようとする子どもたちの明るさ、たくましさを書こうとしています。だからこそ、よけいに読者の胸をうつことになります。」


物事には節度があると思います。

悲惨なことを見詰めない人は結局は、平和もつくりだそうとしないということを書かれている方もいます。


西本氏によれば、この作者は原爆孤児ではないが、事情があって戦災孤児たちと同じ苦しみを味わってきた人だそうです。

戦災孤児と同じ? 一人一人ちがう苦しみをもっているものだとボクは思います。特に創作、文学というのなら、その一人一人を描くことに価値があるのではないでしょうか?

このような見地から、「原爆物はいつも同じ」--このようなことも言われるのも仕方がないように思えました。

あまりにも荒すぎるスケールだと思います。

一人一人描く……。それぞれ違った人間。数字で描くことのできないことを、多くの人は描いています。

一人一人の苦しみがあったのです。

西本は最後にこう書いています。下「」引用。

「そしてイデオロギーを越え、教訓を越えたところにある戦争の本質をつきつめ、戦争否定の思想を子どもの心に、しかと受けとめられてこそ戦争児童文学の存在するべき意味があるのです。そういう戦争児童文学に一歩一歩近づくためにも、ぼくたちは戦争を一面的な公式から扱うのではなく、戦時下に生きた人間のさまざまな典型を描いていかなくてはなりません。」


典型に入るのはメルヘンなどではないでしょうか?
リアリズムの作品なら、個別をしっかりと描くのがいいとボクは思います。

残酷で、非人間的で……。
--それが戦争の一面だというのは否定できないことだと思います。

そして、戦争否定といい、苦しんでいる人たちを見捨ててしまっていたら、とても平和とはいえない思想ではないでしょうか?

今もこの本が出版された時も平和な世界ではないはずです。今も戦争で苦しんでいる人たちのことも少しは考えてもらいたいものだと思いました……。

典型なんかで、考えられないと思いますが……。

もちろん、この児童文学はきちんと戦争の悲惨さを表現してあります。

尊敬する西本氏の言葉なので、ひっかかりました。









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