龍の声

龍の声は、天の声

「九条錫杖経とはどういうお経でいつ唱えるのですか?」

2018-08-20 05:52:52 | 日本

川崎市の梶が谷駅近く、下作延にある身代わり不動に参拝した。その時に、「錫杖経」を読んだが、なかなか心に残る教えであった。
以下、「錫杖経」について学ぶ。



1、まず「錫杖」とは密教大辞典によると「梵に隙棄羅、喫棄羅といふ。聲杖、鳴杖又は智杖、徳杖等と訳す。その名義につき釈子要覧には、この杖を振れば錫の声あるゆえに錫杖となずくと云ひ、錫杖経に錫の字を釈して錫は軽の義なり、此の杖に依倚すれば煩悩を除き、三界を出故に錫杖と称すと。又錫は明なり、智慧の明を得るが故に錫杖と名く等、種々の説を出せり。又同経には智杖、徳杖の名義を釈して、聖智を彰顕するがゆえに智杖と名け、功徳の本を行ずるがゆえに徳杖と号すると云へり。其の形状は木杖の上端しに銅鉄等の金属にて作れる四鈷または二鈷を附し、その鈷に十二個或は六個の鐶を掛く。是を振る時音を発す。比丘十八物の一にして、行乞のとき之を振りて人家の注意を喚起せしめ或は行路にて禽獣毒類等を警しむ。後世修験者亦六鐶の錫杖を用ふ。錫杖経には錫杖を持つ威儀法に二十五事ありといへり。千手観音、延命地蔵、不空羂索菩薩等これを所持す。また縁覚の通三昧耶形なり。二鈷は真俗二諦・四鈷は苦集滅道の四諦、六鐶は六度満行、十二鐶は十二因縁、上のあ五輪は五大所成の法界塔婆を表す。
錫杖を用ふる時、唱える偈頌に二種あり。一を九条錫杖と称し、一を三条錫杖と称す。・・・三条錫杖の文は九条錫杖の最初の三条の文にして、・・・三条は三界、九条は九地にして共に迷界を表す。聲曲は諸仏説法の音聲なり、之を振り之を唱へて、三界九地の衆生を驚愕して生死を出離せしむ。・・」

2、なお「九条錫杖」の項には「・・・文段九条に分る、第一平等施会条、第二信發願条、第三六道智識条、第四三諦修習条、第五六道化生条、第六捨悪持善条、第七邪類遠離条、第八三道消滅条、第九回向発願条なり。第一条の最初『手執錫杖 当願衆生 設大施会 示如実道』の四句一偈は新訳華厳経十四浄行品に出も、他の諸句は出拠明かならず。・・・この錫杖は普通の法会には用ひず、二十一年目毎に行ふ高野山奥の院御廟葺替の落慶法要にこれを用ひしが、近来は三月二十一日高野山奥の院の通夜にもこれを用ふ。智積院にては毎年十二月十一日朝より開山堂にて通夜、興行大師陀羅尼会を修し、翌十二日講堂における午前の法要の最初に・・この九条錫杖を誦唱す。・・・」とあります。普通のお寺では護摩祈祷、大般若祈願、地鎮祭、交通安全祈願その他お払いに唱えられるようです。

3、「九条錫杖経」です

(第一平等施会条(錫杖を手に執るものは常に、十界の凡夫と聖者に法や財を施し、悟りへの道を示して、衆生を導き、この功徳を以て、仏法僧の三宝に供養するよう心がけねばならない))


◎錫杖(しゃくじょう)の功徳
 
比丘(びく)十八物(※1)の一つで、修行僧が野山を巡業する時、猛禽や毒虫などの害から逃れるため、これをゆすって音を立てながら歩いた。錫杖は常に浄手(右手)に持ち不浄手(左手)に持つことを禁止されている。街に入ってからは、家々の門前にて乞食(こつじき)するときにこれをゆすって来意を知らせた。この歩きながら使うものを錫杖、また法要中に法具として使う短いものを手錫杖といい、その音色により『錫(すず)』の字があてられた。
 巡錫に用いられる錫杖は、ほぼ等身で、杖頭部・木柄部・石突の部分に分かれる。杖頭部は仏像や五輪塔を安置し大環に小環を6個あるいは12個付ける。法要で用いる錫杖は、柄を短くしたものであるが、杖頭部が三股九環・四股十二環のものもある。当山では、錫杖は修行大師像に見られ、手錫杖は護摩祈願の中で使われている。
 錫杖は『錫杖経』に説かれるように厄災や魔を祓う法具である。仏像に於いては、千手観音・不空羂索観音・地蔵菩薩の持物として錫杖を見ることができる。また総本山長谷寺の本尊十一面観世音菩薩様の右手に錫杖が握られており、衆生救済の色を濃くしている。通常十一面観音様の右手は垂下(すいげ)して数珠を持つだけであることから、本山の観音様は長谷型観音と呼ばれている。
 

◎錫杖経に曰く

『當願衆生(とうがんしゅじょう) 十方一切(じっぽういっさい) 地獄餓鬼畜生(じごくがきちくしょう) 八難之處(はつなんししょ) 受苦衆生(じゅくしゅじょう) 聞錫杖聲(もんしゃくじょうしょう) 
速得解脱(そくとくげだつ) 惑癡二障(わくちじしょう) 百八煩悩(ひゃくはちぼんのう) 發菩提心(ほつぼだいしん) 具修萬行(ぐしゅうまんぎょう) 速證菩提(そくしょうぼだい)』
 
「十方世界 地獄界 餓鬼界 畜生界 八難の世界で苦を受ける衆生は 錫杖の音を聞いたならば 速やかに惑障(わくしょう)(※2)癡障(ちしょう)(※3)百八の煩悩から解き放たれて 菩提心(※4)を発(おこ)し あらゆる功徳を積む修行を行って速やかに悟りを得られますように 衆生のために願います」
 
錫杖は、その清らかな錫の音であらゆる衆生の厄災を祓い、悟りへと導きます。
合掌.

 
※1 比丘十八物 昔、大乗仏教の修行僧が常に身に着けていた十八種の品
※2 惑障  人を惑わすあらゆる状況
※3 癡障  悟りに対する無知の心
※4 菩提心 悟りを求める心