夜泣き屋_ブログ店

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燃えろ!名札部!第八話【やさしい飾先輩】

2009-01-25 01:13:06 | 燃えろ!名札部!
燃えろ!名札部!
第八話    【やさしい飾先輩】

「いやぁ、一時はどうなることかとビックリしましたね~。」

 飾(かざり)先輩は、名札部の中では、もっともやさしい、面倒見のよい先輩だ。先輩の家は、カレー屋さんで、時々おじゃまして、名札のことについて教えてもらう。今日も、これから先輩の家に行くところだ。

「ああ、まさか、オズマくんまで名札部に入って来るとは思わなかったなぁ。(笑)」

 そうこうするうちに、《オリエンタルな味と香りの店・ポレポレ》というカレー屋さんについた。

「ただいまぁ。」

「ああ、玉三郎かい?アンタいつまで名札なんかにうつつを抜かしているつもりだい!ちったぁ家の手伝いもしとくれ。」

「ああ、わかったよ。でも、今日は、後輩が一緒なんだ。また今度ね。」

二階の部屋に行くのに、階段を上がる。

「まったく、体ばっかりでかくて、なんの手伝いにもなりゃぁしないよ、まったく!さっさと名札なんかやめちまいな!」 




「なんか、あんまり名札のことよく思われてないみたいですね。」

「うーん。まぁウチの母ちゃんは、ああいう言い方をするんだよ。・・・でも、時々思うんだぁ、『大人になって、名札で食っていけるのかなぁー。』って。」

「大丈夫ですよ。先輩なら、アメリカのメジャーでだって活躍できますって!」

「ははは、ならいいけど・・・。ああ、そういえば、新しい名札買ったんだ。ちょっと見せてやろうか。」

「はい、今度はどんな名札買ったんですか?」

「ビックリすんなよ。松井モデルだぞ、しかも、ヤンキースバージョンだからMATSUIって書いてあるんだ。」

「すっげーカッコイイですね~。松井モデルの名札かぁ、僕も欲しいなぁ。」



「ちょっと取って来るから待っててくれ。すぐもどる。」

先輩は階段を降りていった。

タンタンタンタンタンドカドカドカダダダダーン!

「せ!先輩!大丈夫ですか!」

「わぁ~!」

トントントントントン!

「おい!ユウスケ!早くおりて来い!店にとんでもないお客さんだ!」

「どうしたんですか先輩!ちょっと!」

 急いで一階におりると、店でカレーを食べているお客さんがいた。スラリと高い身長、ツンツンに立てた髪型、かっこいいレザージャケットを羽織ったその人は、後ろ姿を見ただけすぐにわかる!アメリカのメジャーナフダーのイチ口ー選手だ!

 ゆっくりとスプーンを使い、がっしりした若い男の人と一緒にカレーを食べている。

 飾先輩が勇気を出して尋ねた。

「あ、あのう、イチ口ー選手ですよね。僕、いつも応援してます!」

「こら!お客さんになんてこと言うんだい!すみませんね~、せっかく食事されてるところに。」

「いえいえ、お母さん、いいんですよ。慣れっこですから―――。そうだよ、僕はイチ口―です。」

「ほら!やっぱり!僕たちイチ口―選手の大ファンなんです!」

「僕たちもいつかはかっこいいメジャーナフダーになりたいって思ってるんです!」

と、アピールしている飾先輩の胸には、松井モデルの名札が光っていた。それを見たイチ口―選手はクスっと笑った。

「あ、君、名前はユウスケくんって言うの?」

「は!はい!五代ユウスケと言います!」

「君も、メジャーをねらっているの?」

「はい!」

そこでイチロー選手は、フッて笑った。その目を細めたまま向き直ってユウスケに話しかけてきた。

「ユウスケくん、僕らナフダーにとって名札は魂なんだ。僕も試合が終わった直後は、名札の手入れをかかさないんだよ。・・・ところで、君、その名札二回くらい洗濯しているね。(笑)それではメジャーはねらえないぞ。」

「すみません!気をつけます。」

そういうわけで、僕と飾先輩は、自分の名札にはイチ口―選手のサインをもらった。・・・んで、僕の名札は、ゴダイ イチローと書いてある。先輩のは、飾イチ口―になった。

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