りんぷうの会の会員、荒井玲子さんの写真展「夏に思ったこと 、父のことも 」が
1/21(月)から始まります。
荒井さんは昨年これまで長年にわたって撮影された能楽写真作品の個展を開催されましたが
毎年、能楽写真以外にも意欲的な写真展を開かれています。
老いてゆく義母を主役に据えた写真展「生きるということ」、
独特の感性で現代の街の姿を切り取った「わたくしたちは物語を語る」、
そして今回の写真展の前篇である大船渡を舞台とした「また ここで暮らしたい」。
これまで、ずっと拝見してきて毎回、荒井さんのユニークな感性と世界観に圧倒されてきました。
今回も”荒井ワールド”な写真作品に期待大です。
◎荒井玲子写真展 「夏に思ったこと 、父のことも 」
日時:2013年1/21(月)13時~17時
1/22(火)~27(日)11時~17時
会場:横浜市民ギャラリーあざみ野 展示室1F-A
荒井さんは写真も個性的な魅力に溢れていますが
文章も独自の味があって非常に面白く、写真展の挨拶文やキャプションも読みごたえがあります。
以下、荒井さんの文章です。
こんなものだ おれの人生は と父は言ったのだった
それを撮ろうとしたら
「撮るな」「いやだ」、 だった。
だから 父は 撮らない。わたくしは カメラをもっていて
フィルムを、いっぱいもっている
貞観の津波以来のこの度の大津波に 孫子妹夫婦を呑ませて 自分が生きている
「こんな年寄りが 生きて 」と父が言う
恥ばかりの人生の愚かな八十八歳であるのに皆を死なせてまだ生きるのは 恥ずかしい
と おもうようだった
「しょうがないな 」 わたくしは口癖を 言った。
父は手をみていた 、手は 踊るようにうごかした 。
わたくしは それを撮らない。
「死んでるのに 踊ったら、 人に笑われる 」と父が言うのを きいたことがある 、
踊りと ダンスは 、脳梗塞を患う父が 趣味にしていた 。

「なにもないのになにを撮るのか 」と父が言った
それから 「ガリガリ君 たべよう 」と言った 、
夏向きのガリガリ君氷菓子をもらった。
「ガリガリ君 君がいちばん ガリガリガリ 」と 齧った 。
目を瞑って父は「ガリガリ 」 齧った。
「しょうがないな 」 わたくしは、 カメラを 撫でた。
「なにもないのに なにを撮るのか」と父が聞くが わたくしはどうしよう

「ここ」を 歩いた 。
影も形も亡き跡の 影も形も南無阿弥陀仏 弔ひて 賜び給へ 跡弔ひて 賜び給へ
と 謡ってしまった 。
「ここ」を 歩いた 。
時々屈んで 、ファインダァを拭いた 。手拭いで 、顔を拭いた。
「夏は 暑いな 」
「しょうがないな 」
わたくしは 、ファインダァに目をくっつけたまま 、 いた。
2012年の夏は 父と、このように暮らした。
荒井 玲子
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