大変遅くなってしまったのですが先日2/4(土)に東京・目黒の
喜多能楽堂で開催されました「出雲康雅の会」の舞台写真を
本日はご紹介

能『砧』より

世阿弥の作ったお能の中でも特に傑作として名高いのが
この『砧』という曲ですが、
訴訟事を抱えて長らく都から戻らぬ夫を待ち侘びて、
ついには主人公である妻が絶望して病に臥せり
亡くなってしまうという哀しいストーリーになっています。
冒頭写真は作中のハイライト 妻が砧を打って未だ帰らぬ夫を偲んでいるシーン。
ちなみに「砧」とは昔、布打ちに使用された台のことで
ネットで調べたところ語源は「キヌイタ=衣板」だそうです。
布を叩いて皺を伸ばしたり、布に光沢や柔らかさを加えるために用いられ
明治以前には一般に広く普及していたとのこと。
砧を打ちながら妻は何を思ったのか
その心情を察すると胸が痛みます。

こちらは後シテ(=舞台後半部分の主役)。
夫が都からようやく戻ったものの時すでに遅く妻は病死して他界。
後悔に駆られた夫の前に亡霊となった妻が登場します。
夫への恨み・悲しみの表情が画面からストレートに伝わって来るようです。
TAKESHI AZUMAさんが撮影された舞台写真からは、
戻らぬ夫を思う余り命を落としてしまう、はかない女性としての妻のイメージではなく
一途さゆえに激情から自らの命の炎を燃やし尽くしてしまった芯の強い女性のように
感じられますが、いかがでしょうか。

9/24(日)の喜多流自主公演で『阿漕(あこぎ)』を
11/26(日)には『六浦(むつら)』を舞われます。
詳細は喜多能楽堂のホームページhttp://kita-noh.com/をご覧下さい。


