仙草は山間湿地に野生に産する丈2尺余の草でありますが之を根元より刈り取り干して釜にいれて草の無くなる迄煮る時は丁度寒天と同じく黒茶色のものとなります之を凝結(かたまら)して寒天を切る様に切って砂糖を掛け夏の食物として売って歩きます、まあ内地の石花菜(ところてん)と同じ様なものです。
それから内地で一年生の植物、即ち、茄子「唐辛子」蔓豆類で2、3年乃至数年枯れずに居るものがあります、それですから「トウガラシ」の木又は茄子の木でパイプ等が出来ます、南部の蕃界には「トウガラシ」の木が野生にあります恒春付近の山には上向唐辛子が沢山あります、唐辛子の太い木は漁師が「イカ」を釣る針を作る為態々(わざわざ)蕃界に採取に行く人があります「トウガラシ」の事を南蛮と云うたのもこれらの事からだろうと思います。
礰珊瑚樹(りょくさんごじゅ) 之は海にあるのではなく台灣南部の田舎の畑の畦畔(けいはん)や家の周囲に野生して自然の籬(かき)を為して居ります此の樹は丈1丈内外で幹と枝のみで葉がありませぬそれで礰珊瑚樹と呼んで居るのであります色は全部真っ青で奇妙な樹であります此の枝を折ると白い液が出ますが人は毒だと云うて恐れて居ります。
仙人掌(しゃぼてん)は全島至る所にありまして8、9尺位のは珍しくはありませぬ之は内地と同じく種々ありますが只偉大だと云う点が珍しいのです。
蘆(よし)と茅(かや)、蘆(あし)も茅(かや)も一年ごとには枯れませぬ6年7年も生きて居りますからだんだん太くなりその節から枝が出て居ります、長さ1丈前後で太さは徑1寸位のは珍しくありませぬ此れ等は多く山地に接した所にあります一見竹の様ですそれで本当人は盧竹(ろちく)と言って居ります。
又蕃界に行けば檜も有り松も山桐もありますが、杉は無い様です、松も五葉三葉(ごようさんよう)の松が沢山あります、又蕃躑躅(つつじ)なども紅も紫も山にありますが栗などは無い様です。
台灣みやげ話 (完)
大正14年11月15日印刷
大正14年11月18日発行
大正15年5月1日再版
昭和2年4月1日再版
著者兼発行人 台南市大宮町3丁目30番地
片岡巌
発行所 台南市大宮町3丁目30番地
片岡巌
印刷人 台南市本町3丁目234番地
寺川 喜三郎
印刷所 台南市本町3丁目234番地
台南新報社印刷部
_________________________________________________________
元法院通訳官片岡巌君著
「台灣風俗誌 」菊版総クロース
紙数千二百頁
定価 金5圓
下村台灣総務長官に序して「台灣風俗誌は正しく台灣の社会の側面史である」と喝破せり。凡そ台灣人の風俗習慣に関すること本書之を掲げざるは無く、官は之を持って施政の資となし、民は或いは之を民族研究の図書館と為し、或いは之を商工業参考の博物館と為すを得ん千二百頁の大著、宛然たる台灣風俗の百科辞書なり
発行所 台北市栄町
台灣日々新報社
電話番号125番、126番
それから内地で一年生の植物、即ち、茄子「唐辛子」蔓豆類で2、3年乃至数年枯れずに居るものがあります、それですから「トウガラシ」の木又は茄子の木でパイプ等が出来ます、南部の蕃界には「トウガラシ」の木が野生にあります恒春付近の山には上向唐辛子が沢山あります、唐辛子の太い木は漁師が「イカ」を釣る針を作る為態々(わざわざ)蕃界に採取に行く人があります「トウガラシ」の事を南蛮と云うたのもこれらの事からだろうと思います。
礰珊瑚樹(りょくさんごじゅ) 之は海にあるのではなく台灣南部の田舎の畑の畦畔(けいはん)や家の周囲に野生して自然の籬(かき)を為して居ります此の樹は丈1丈内外で幹と枝のみで葉がありませぬそれで礰珊瑚樹と呼んで居るのであります色は全部真っ青で奇妙な樹であります此の枝を折ると白い液が出ますが人は毒だと云うて恐れて居ります。
仙人掌(しゃぼてん)は全島至る所にありまして8、9尺位のは珍しくはありませぬ之は内地と同じく種々ありますが只偉大だと云う点が珍しいのです。
蘆(よし)と茅(かや)、蘆(あし)も茅(かや)も一年ごとには枯れませぬ6年7年も生きて居りますからだんだん太くなりその節から枝が出て居ります、長さ1丈前後で太さは徑1寸位のは珍しくありませぬ此れ等は多く山地に接した所にあります一見竹の様ですそれで本当人は盧竹(ろちく)と言って居ります。
又蕃界に行けば檜も有り松も山桐もありますが、杉は無い様です、松も五葉三葉(ごようさんよう)の松が沢山あります、又蕃躑躅(つつじ)なども紅も紫も山にありますが栗などは無い様です。
台灣みやげ話 (完)
大正14年11月15日印刷
大正14年11月18日発行
大正15年5月1日再版
昭和2年4月1日再版
著者兼発行人 台南市大宮町3丁目30番地
片岡巌
発行所 台南市大宮町3丁目30番地
片岡巌
印刷人 台南市本町3丁目234番地
寺川 喜三郎
印刷所 台南市本町3丁目234番地
台南新報社印刷部
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元法院通訳官片岡巌君著
「台灣風俗誌 」菊版総クロース
紙数千二百頁
定価 金5圓
下村台灣総務長官に序して「台灣風俗誌は正しく台灣の社会の側面史である」と喝破せり。凡そ台灣人の風俗習慣に関すること本書之を掲げざるは無く、官は之を持って施政の資となし、民は或いは之を民族研究の図書館と為し、或いは之を商工業参考の博物館と為すを得ん千二百頁の大著、宛然たる台灣風俗の百科辞書なり
発行所 台北市栄町
台灣日々新報社
電話番号125番、126番