序
台湾地方法院検察局通訳片岡巖君、開口一書を著し、題して台湾風俗誌という、集めるところ本島人の衣食住より以て思想、信仰、娯楽等に至るまでおおよそ日常生活に関する百般の事項一つとして備わざらはなく博引旁捜、微を穿ち細に入り集を分かつ11、章を為す65、尨然たる大冊無慮1200ページを数え聞く君の筆を本書に執るやここに年あり公務のかたわら、拮据英々夜を以て日に継ぎついに今日ありと致せるなりと。けだし、台湾統治の第一義が同化の2字にあることもとより、論なんといえども数百年伝承し来りたる本島人の風俗習慣、中には長く保存助長すべき、良風美俗無きにしも非ず、これを之れ悟らず、ただ彼れを化して己れに同じからしめんとするに、急なるのあまり玉石兼ね斥け、薫猶併せ排するがごときに、至りては決して同化の真義を徹底せしむる所為にあらず。換言すれば内地人と言わず本島人と言わず相互に天空海闊の襟度をもって十分に彼を知り己を知り、しかしてのち、始めて同化を語るべきのみ今や本島自治制の実施わずかに其の緒に就き内台人相互の接触了解益、其の急を告ぐるの秋に当たり、たまたま本書の世に公にせられたるは、まことに時勢の要求に合わするものと謂うべし、そもそも予の著者に於ける一面の識だになしといえどもつとに其の名を聞き久しく其の人となりを想望せし所今稿本を手にして親しく声咳に接するの感にあり、かつ絶倫なる君の精力と非凡なる君の篤志と、よりこの好著をかち得たるを喜びいささか所思を陳じて序と為す
古山 栄三識
台湾地方法院検察局通訳片岡巖君、開口一書を著し、題して台湾風俗誌という、集めるところ本島人の衣食住より以て思想、信仰、娯楽等に至るまでおおよそ日常生活に関する百般の事項一つとして備わざらはなく博引旁捜、微を穿ち細に入り集を分かつ11、章を為す65、尨然たる大冊無慮1200ページを数え聞く君の筆を本書に執るやここに年あり公務のかたわら、拮据英々夜を以て日に継ぎついに今日ありと致せるなりと。けだし、台湾統治の第一義が同化の2字にあることもとより、論なんといえども数百年伝承し来りたる本島人の風俗習慣、中には長く保存助長すべき、良風美俗無きにしも非ず、これを之れ悟らず、ただ彼れを化して己れに同じからしめんとするに、急なるのあまり玉石兼ね斥け、薫猶併せ排するがごときに、至りては決して同化の真義を徹底せしむる所為にあらず。換言すれば内地人と言わず本島人と言わず相互に天空海闊の襟度をもって十分に彼を知り己を知り、しかしてのち、始めて同化を語るべきのみ今や本島自治制の実施わずかに其の緒に就き内台人相互の接触了解益、其の急を告ぐるの秋に当たり、たまたま本書の世に公にせられたるは、まことに時勢の要求に合わするものと謂うべし、そもそも予の著者に於ける一面の識だになしといえどもつとに其の名を聞き久しく其の人となりを想望せし所今稿本を手にして親しく声咳に接するの感にあり、かつ絶倫なる君の精力と非凡なる君の篤志と、よりこの好著をかち得たるを喜びいささか所思を陳じて序と為す
古山 栄三識