goo blog サービス終了のお知らせ 

randomnote

日記。

序文 古山 榮三氏

2008年09月18日 | 台湾風俗誌

台湾地方法院検察局通訳片岡巖君、開口一書を著し、題して台湾風俗誌という、集めるところ本島人の衣食住より以て思想、信仰、娯楽等に至るまでおおよそ日常生活に関する百般の事項一つとして備わざらはなく博引旁捜、微を穿ち細に入り集を分かつ11、章を為す65、尨然たる大冊無慮1200ページを数え聞く君の筆を本書に執るやここに年あり公務のかたわら、拮据英々夜を以て日に継ぎついに今日ありと致せるなりと。けだし、台湾統治の第一義が同化の2字にあることもとより、論なんといえども数百年伝承し来りたる本島人の風俗習慣、中には長く保存助長すべき、良風美俗無きにしも非ず、これを之れ悟らず、ただ彼れを化して己れに同じからしめんとするに、急なるのあまり玉石兼ね斥け、薫猶併せ排するがごときに、至りては決して同化の真義を徹底せしむる所為にあらず。換言すれば内地人と言わず本島人と言わず相互に天空海闊の襟度をもって十分に彼を知り己を知り、しかしてのち、始めて同化を語るべきのみ今や本島自治制の実施わずかに其の緒に就き内台人相互の接触了解益、其の急を告ぐるの秋に当たり、たまたま本書の世に公にせられたるは、まことに時勢の要求に合わするものと謂うべし、そもそも予の著者に於ける一面の識だになしといえどもつとに其の名を聞き久しく其の人となりを想望せし所今稿本を手にして親しく声咳に接するの感にあり、かつ絶倫なる君の精力と非凡なる君の篤志と、よりこの好著をかち得たるを喜びいささか所思を陳じて序と為す

                            古山 栄三識


序文 松井榮堯氏

2008年09月18日 | 台湾風俗誌

台湾総督府法院通訳片岡巖君「台湾風俗誌」全12集著述成るの故を以て、
余に徐を求む。通閲するに、君が該博の識を傾倒せし纂著たるに辜負せず、
叙事整然、微に入り細に穿ち、あえて間然する所を見ず。ことに行分平易流暢、興味また油然たり、ゆえに、卒読の間、快感自ら湧沸するを覚ゆ。もしそれ諸を、日常の見聞と対比せんか、疑團釈然として氷解し、思はず微笑を禁ぜざるものあり。元来著者は、本書を以てもっぱら本島人に対する、施設の賛助たらしめん企図なるが如しといえども。余を以てこれを観るに、その一概ただこれのみに止まらんや。熟読玩味せば、もって博物の志となし、もって農工の助けと為すを得ん。特に商売是によりて、商略を樹立せば、あたかも敵陣をのぞき見て兵をやるが如く。謀計あたらざるは莫かべしと信ず。ここに切に、母国商工業者に、一読をすすめ、もって序に代ふと云爾。



             赤嵌樓東翠竹圍書窓に於いて

                     北岳 松井榮堯
                  (台南地方院検察官長)


序文 加藤豊次氏

2008年09月18日 | 台湾風俗誌

そもそも一民族の文明はその知識の上に建設せられ、生活はその性格に依りて営為せらる。しかして知識は多民族との接触もしくはその助言に依りてこれを向上せしむること必ずしも難きにあらずといえども、性格を移さんことはあたかも山を移すが如く至難の事に属す。今それ植民事業の基礎たるべき同化政策はこの至難なる民族性格の改造を待って始めて解決せらるべきもの、もとより歳月の恩恵に浴し、歴史の威力を借りるにあらざればこれを大成することあたはず。
しかれども近世国家の活動はおよそ成を自然に仰ぐが如く悠長なるあたはず、必ずや理法を窮盡して(ことごとくきわめ)自然を凌駕し、もって政治の効果を収るに歳月の短縮を期せざるべからず。 重任を台湾に奉じ、島民同化の難局」にあたる者またもとより此の覚悟なかるべからざるなり。
片岡君ここに期する所あり、堅忍力行台湾島民の風俗慣習を研究すること幾星霜、日常、茶飯事より以て人情機微の発露に至るまで、一綴音一喝語
といえども収拾して敢えて漏らさず今やその蘊蓄を傾けてこれを江湖の有志に頒たんとす。これ台湾の時務において、吾人がもっとも喫緊時として平素痛切に感じたるもの、けだし本書世に出づるののち、台湾民族の性格一々にして微するを得、同化政策の心理基礎もまたこれに依って発見せらるゝに至るべきか。しからばすなわち本書の使命はすごぶる重大にして、読者はただに
異風変俗を見てその好奇心を満足せしむるに止まらず進んで各自の任務を自覚する所なかるべからず。
刊行に際し余に序文を求む、すなわち欣悦の情を以て所感をのぶることしかり。
                    加藤 豊次

序文 菅原善三郎氏

2008年09月18日 | 台湾風俗誌

建国4200年なお古思想に薫化醸成せられたるシナ民族の人情風俗は
250年前台湾に移植せられ25年来ようやく日本強化の力によりただ
青年の風潮やや変通の期に達したりといえども、なお良民の代表たる夫老
尊長の間には強大なる保守精神潜在して台湾固有の人情風俗は人為による
革新の力を超越して依然としてぬくべからさる郷党宗族の風をなせり。
台湾総督府法院通訳片岡巖君ここに見あり、その職務の為に台湾固有の人
情風俗を調査攻究すること十有余年古書筆苑にきざし、あるいは聞見古
実に選り随って得れば、すなわち書し編帙既に夥しく嚢にその一部を抜抄
して簡明達意を趣旨とし日台俚諺詳解台湾風俗誌の著あり今また浩繁なる
その全帙を挙げて分類集録しこれを上梓せんとすこの内容を一瞥するに、
天文時令の対観より儀禮、性行、信仰、迷信、伝説に及び身形、器用、衣食住
座臥に至り、降っては禽獣蟲魚草木の化に至るまで網羅蒐集して遺す靡く(なびく)剖析詳
明にして余す無く義理精微、文章優雅にして読者をして聡明を開発し叡智
を進益せしむること聾者に3耳を生じ瞽者に4目を得るの感あらしむ。
大方の士この一巻を几案に備えて翻閲に便せは台湾統治の任に在るものは
以て300万の民情を洞察し帰趨を領識し叡略身宸謀発而中節の洽績を挙
げくべく台湾事業の経営に当たるものは以て人心収攪機略成功に資する所
大ならん ここに於いて所感を叙し以て序となし祝意を寓すと云爾。
  大正9年晩秋
                    菅野 善三郎識

序文 下村宏氏

2008年09月18日 | 台湾風俗誌
序              Introduction
台湾風俗誌は正しく台湾の社会の側面史である。
1000ページに余る大部に亙りて実は通閲する暇もないが、ただ大体を瞥見しただけで片岡君の労を多とすると同時に台湾に関する種々の力作も少なくないが同人の著述として恰好な如何にも気の利いた然も他の企及し能はざる特色を持っているという感じがする。
台湾の社会状態、台湾人の民族心理を知るべき好個の著述である有益にしてしかも肩の凝らない消夏の読み物としても猶推称するにはばからぬ。
今や台湾は、日本内地が維新以来日に月にその様子を更めつゝある以上に
急激なる変化を為しつゝある。此の風俗誌は総督府編纂の台湾奮慣に関す
る書册が楷書とすれば草書として台湾の昔の思い出草となりていついつ迄
もこよなき記念として遺すことであろう。

  大正九年十月    
     
              台北鳥松閣に於いて
                下村 宏 
           (台湾総督府総務長官)