昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
アンティークなラジオを中心とした、自由でお洒落な、なんちゃってワールド♪

ゼニス(Zenith) Model K-515

2007-11-01 | アメリカ製真空管ラジオ
 今回は、先輩&友人である“音響の匠”氏が入手されたZENITH社製mt管クロックラジオ Model K-515 (1953年製)の氏ご自身による修復工程を突撃レポートします。ちなみにこのラジオ、先にご紹介したL-518Wと酷似するデザインは、同機の廉価版と思われる。
        
 久し振りのラジオの修復です。機種は前回と同メーカーのZENITHですが、型番は不明です。
今回も型番も判らず、配線図無しでの修復ですが、まぁ何とかなるでしょう・・・。
        
先に掲載されていたL-518Wの廉価機種と思われます。
ラジオの外観は経年変化の割にはいい方かも知れませんが、裏蓋割れ、電源コード切断等。
本体を逆さまにしたら、いきなり同調用掛け糸の切れたバネが落ちてきました。
        
 時計部分は、ツマミが欠損し、キャビネットと時計のガラスカバーの合わせ部分も剥離しています。
        
 キャビネット裏蓋を外し、内部を見ると明らかに素人が修理した痕跡の内容に、唖然!
コンセントの取り付け部の線材処理は、今にもショートしそうだし、電源コードは嗚呼何とセロテープで絶縁されています。危険きわまりない修理方法です。
        
 真空管はすべてオリジナルではないメーカー製のものに交換されています。
ブロックコンデンサーはケースの上部に当たる位の大きな物と交換済。
これは、ラッキー♪ オーディオ好きな人ならご存知のスプラグ製です。但しこれで、音が良くなるとは思いませんが・・・(笑)
        
 ケースからシャーシを取り出し各部を点検すると、各種コンデンサーも交換されていました。店長所持のModel L-518はゼニス名が印刷されているコンデンサーですが、この機種はオリジナルも他メーカーのパーツが使用されています。
 よく見るとオリジナルから交換されている電解コンデンサーの回路部分は、配線がタッチしています。電源が入らないのでショートは免れているのは、不幸中の幸い?!
ブロックコンデンサー付近の配線の処理を済ませて、まず電源が入るようにしなくてはいけません。
        
 スイッチは時計部分にあるので、時計を外さなければ点検もできません。簡単に外せるだろうと思っていましたが、アメリカ製品なのでインチネジ・・・すんなりと事は進みません。
ネジ山のあるタイプならプラスでもマイナスでも何とか回すことはできるのですが、写真のように狭いため、ラジオペンチは入っても回す事ができません。
インチネジ用のBOXセットを購入し、時計部を外して点検。スイッチの導通を確認しましたが案の定、ON/OFFしても導通がありません。接点は酸化して、真っ黒になっています。これでは電源は入りません・・・紙ヤスリで接点を磨き補修しました。
        
 シャシー内部の回路を確認して、電源ON! この瞬間が一番緊張します。
真空管がほんのりと点灯したので、ホッとしましたが、暫く待っても、煙も出ないし、いやな臭いもしないので一歩前進です。ただし音も出ません(笑)
後は電源、出力回路の修理ですが、出力管グリッドに数ボルトの電圧がカップリングコンデンサーの交換で音出しはOKです。
 ところが肝心なラジオ放送は聞こえません。やはり前回と同様、このラジオとも七転八倒、付き合うことになるのかと嫌な予感です。
        
 キャビネットからシャーシを取外した時点の目視では分かっていたのですが、バリコンの真鍮部に青錆びがあります。
手でバリコンを回してみても、固着して指先では回りません。
        
 バリコンを外して点検すると、ローター部のベアリングが錆びて動かないうえに、羽は曲がっていたため、この修理だけでも、一晩かかりました。
        
 バリコン取り付け用ゴムブッシュは劣化してシャシーと当たっていたのですべて交換し、糸も掛けかえて正常(バリコン部)に復旧しました。
        
バリコンをはじめ、シャーシ上のパーツとクロック部は正常に復旧しました。
ついでにシャーシの外部・内部、真空管等に堆積している50年分の埃をコンプレッサーで吹き飛ばしてクリーニングすると、見違えるほど綺麗になりました。ちなみに発信コイルは蜘蛛の巣で真っ白。
 クロック部のノブは、手持ちのジャンク品を流用し、それらしく仕上がりました。
        
 次はシャーシ内部の修復です。コンデンサー類は、フィルムコンデンサに交換したほうが安全のためにはよいのでしょうが、自分で使用するため、何かあっても対処できます。
また当時の音を再現したいので、部品交換も今回は音声回路のカップリングコンデンサーだけに留めておきます。最近のコンデンサーでは今風の音になるので、いずれ手持ちのスプラグのコンデンサーかオイルコンデンサーに交換しようと思います。(注釈:このあたりが、音響の匠氏のこだわりっすね~)
真空管ソケットの足に半田不良が見受けられたので手直しを行い、修復の目途はつきました。
        
バリコン等を修正したので周波数帯域が変化し、また感度不良の為、トラッキング調整が必要です。これは手持ちの各種測定器を使って完了。
広大なアメリカでラジオを受信するには、受信感度の性能がもとめられるのでしょう・・・アメリカ製ラジオはループアンテナがあるので、調整すると感度は随分よくなりました。
        
あとは根気と体力勝負のケース磨きが残っています。
最近、腕が腱鞘炎ぎみなので、ケース修復のプロ?である店長に外注しました。
店長は、「直ったラジオをエージングテストしながらケースを磨く時間が、至福の時なんじゃないっすか~」と言います(笑)。
        
 そんな訳で、以上、音響の匠氏の修復レポートを掲載させていただきました。
音響の匠氏の当時の『音』へのこだわりと、ラジオに対するある程度の『割り切り方』は、さすがこの道、ウン十年の音響機器エンジニアです。

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 ところで、このゼニスのラジオに民放ラジオの騒々しい番組は似合いません。
アタクシのお薦めは、在日米軍放送 AFN Tokyo / Eagle810 ( 810kHz)で、毎週日曜日の夜に放送されている「Oldies Radio」。
        
 BGM代わりに聴いていると、この番組でよく流れるのは、ニール・ダイヤモンドです。
「Sweet Caroline(Good Times Never Seemed So Good)」のSweet Caroline~というサビの部分の後で、つい「ウォウォウ~」と口ずさんでいる自分に気付き、もう完全に’50年代の東海岸気分に浸かってしまってます。「Sweet Caroline」や「Cherry, Cherry」、「Craklin 'Rose」などもよく耳にします。
        
 音響の匠氏は、例のサウンドシステムと’50年代のU.S ポップやジャズのレコードを山のようにお持ちなのに、あえて当時のラジオ音質を楽しむその余裕に、『男のロマン』を感じますね~♪