昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
アンティークなラジオを中心とした、自由でお洒落な、なんちゃってワールド♪

東芝(マツダラジオ) かなりやK 5LP-108

2008-04-27 | 東芝 かなりやシリーズ
昭和32年(1957年)、東芝はmT管トランスレスラジオ かなりやシリーズに、当時の新技術であったプリント基板を採用した かなりやKを発売。続いて、かなりやX、Y、Zの3機種を相次いで世に送り出した。 
 昭和30年代、トランジスタの開発・実用化に伴い、配線作業効率が高く、品質も安定する「プリント基板」の量産技術も実用化され、 真空管ラジオにいち早くプリント基板による実装方式を採用した機種が、今回ご紹介する かなりやKである。
        
        ▲今回入手した東芝(マツダラジオ) かなりやK 5LP-108
 キャビネット左にスピーカー、右側に周波数同調用大型ダイヤル、その下に電源スイッチ兼音量調整ボリュームをレイアウトしたデザインコンセプトは同年に発売されている かなりやGと似ているが、かなりやGの実装方式は鉄板型シャーシを使い、回路設計も電力増幅管に35C5を使うなどまったく異なっている。
またキャビネットの色も写真では同色に見えるが、かなりやGはダークブラウン/ホワイト、かなりやKはヤニの黄ばみでコーティングされダークブラウンに見えるが、実はブラック/ホワイトのツートンカラーなのだ(笑)
        
        ▲デザイン・コンセプトがそっくりの かなりやG(左)とかなりやK(左)
 従来、真空管ラジオの回路を構成する実装は、シャーシと呼ばれるアルミ製やスチール製のボックス形状または鉄板状(コストダウンのため?)の躯体に、真空管をはじめとする主要パーツを配置し、コンデンサー、抵抗等はラグ板を介して空中配線する方法が基本とされていた。
        
        ▲スチール製シャーシのかなりやG(左)とプリント基板のかなりやK(右)
 ところがトランジスタの開発・実用化と同時期、配線作業効率が高く、品質も安定する「プリント基板」の量産技術が実用化され、従来のシャーシを使った実装方式に代えて、プリント基板を採用した真空管ラジオが各社から登場した。この東芝の「かなりやK」もその1台であり、かなりやX、Y、Zを含め、中身は同じでもキャビネットデザインの異なる4種類の機種を同時期に発売している。
        
        ▲左上から かなりやX、Y、左下から かなりやZ、かなりやG
当時の東芝ラジオの宣伝広告には次のように記されている。
[ 東芝技術員の誇る五大特長 ] 
1.完全プリント配線でほとんど故障がありません。又全部品とも高性能で当たり外れがありません。
2.経済的なトランスレス回路で僅少な電気代ですみます。
3.スマートな大型つまみ付で選局が正確にしかも迅速に行えます。
4.特許による新スピーカーとキャビネットの前面が大きなバッフル効果を持つように設計されていますので素晴らしい音のラジオが楽しめます。
5.近代的な新鮮でお部屋をぐっと明るくするニュースタイルです。
 
 このように謳われているが、プリント基板製造技術も未熟で熱に弱く、部品交換時にプリントパターンの剥離が生じやすかったため、後に発売された東芝かなりやシリーズをはじめとする各社の真空管ラジオの実装方式は、プリント基板からシャーシタイプへと戻ってしまう。
        

  メーカー:東京芝浦電気(マツダ)『かなりやK 5LP-108』

  サイズ : 高さ(約13cm)×幅(約23cm)×奥行き(約11cm)

  受信周波数 : 中波 530KC~1650KC

  使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12AV6(検波&低周波増幅)
           30A5(電力増幅)、35W4(整流)
 
 「同じようなラジオを何台も集めて、何が楽しいのか?」と怪訝そうな眼差しを向けられても、欲しくなってしまうのがコレクターの悲しい性・・・ 真空管ラジオのコレクション&レストアに手を染めて以来、捜し求めていた かなりやKをヤフオクで初めて発見! だがこの かなりやKは、「どこに放置されていたんだ?」と叫びたくなるほど汚れた姿を晒していた・・・
ボクの確固たるポリシーでもある居酒屋1軒 or キャバクラ1セット!を多少オーバーしても手に入れたいと思っていたが、何と通常の入札よりやや安めの価格で難なく落札できた♪
        
        ▲酷い汚れの かなりやGだが・・・
 宅配便で届いた かなりやKの一体形成型プラスチック製キャビネットは、50年の間に付着した酷い汚れ、黄ばみに加え側面に一部亀裂も入っている。パーツの欠品は無いものの、外観は決して程度の良い部類ではない。電源コードはカチカチに硬化しており、危険極まりない状態だ。
        
 裏蓋を取外すと、清掃された様子はなく、キャビネット底部や真空管には埃が堆積している。すべてマツダ・ブランドの東芝純正品が使われており、目視点検する限りではブロックコンデンサほかプリント基板、パーツ類の劣化は見受けられない。
        
 通常は周波数同調用大型ダイヤルと電源スイッチ兼音量調整ツマミを抜き取り、プリント基板、イヤホンジャック、スピーカーを順次取外すのだが、この かなりやKはキャビネットの溝に大型ダイヤルが埋め込まれた構造のため、プリント基板を取外すと同時に大型ダイヤルからバリコン軸を抜き取る必要がある。
        
 プリント基板を取外すために取付ネジを回すと、パキッという鈍い音が2度発した。どうやら基板を支えるキャビネット一体形成部分が割れたようだ・・・
案の定、写真のようにプリント基板を取付けるブーム部とスピーカ取付け部のプラスチックが4個、割れて転がり出てきた。
        
 キャビネットから取外したプリント基板上のパーツ、イヤホンジャック、スピーカーには、50年分の埃が堆積している。刷毛と工業用アルコールを使い、丹念に清掃した。朝夕は寒いが、太陽の照っている時間帯は暖かく、ラジオの修復作業には最適な季節になってきた。
        
 とりあえず硬化した電源コードと電源回りのコンデンサを交換し、真空管のヒータに断線のないことを確認。テストのために電源を入れてみた。パイロットランプと5本の真空管のヒーターがやさしい光を放ち、点灯。はたしてこれだけの部品交換だけで鳴るだろうか・・・しばらくするとスピーカーから空電ノイズが聞こえ、選局ダイヤルをゆっくり回すと、地元の民放中継局(1KW)が聞こえてきた。
        
 パイロットランプ取付用ゴムブッシュが熱で消失?しており、取付けようにも在庫の待ち合わせも無い。このことを親切なお師匠様にメールでボヤいたら、何とゴムブッシュやゴム足等をお送りいただき、ジャスト・フィットで感謝、感激♪
        
 キャビネットから欠落した取付ネジ凹部(一体形成部品)を接着剤で補修した。一度破損したプラスチック部品の強度は弱くなる。取付け時に再度欠落しないか不安が残る。
        
 いよいよ掃除屋店長の出番だ。(笑) 中性洗剤とハンドタオルで大まかな汚れを落とし、希釈したマジックリンで塗装が溶け落ちないように拭いてヤニと汚れを除去する。しかし今回の汚れはキャビネットの塗装の中に染込み、そう簡単には落ちない。コンパウンドを使って薄皮を剥ぐように、丁寧に汚れを除去する。
キャビネットと選局ダイヤルの擦れを防ぐフェルトは硬化し朽ちていたため、百円ショップで習字下敷用フェルトを購入。裁断し、代替品とした。