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<社説>死刑廃止論 世界の潮流を見据えて

2021年08月26日 | スクラップ

 

 

 

 米国が連邦による死刑執行を一時停止すると表明した。死刑制度には普遍的な人権問題が潜み、その廃止・停止は、もはや世界の潮流となっている。日本でも廃止に向けた議論を進めるべきだ。

 

 米国のガーランド司法長官が先月、連邦による死刑執行を停止し、死刑政策や執行方法を検証することを明らかにした。バイデン大統領はもともと大統領選の公約に、連邦レベルでの死刑廃止を掲げていた。州をまたぐ犯罪など連邦法に違反する事件について、である。連邦法以外に各州法による死刑もあるが、全米50州のうち現在23州が廃止、三州が執行を停止している。バージニア州は今年3月に「死刑は不公平で効果がなく非人道的だ」として、南部の州として初の廃止州となった。

 

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると今年四月現在、10年以上死刑執行のない国も含めると、世界144カ国・地域が事実上、死刑を廃止している。死刑のない国は既に世界の三分の二以上を占めている。 先進国に限れば死刑制度を存続・執行しているのは日本と米国だけだが、米国内で存続しているのは24州で半数に満たない。アムネスティはこうした現状を「世界は死刑という残虐かつ非人道的で、品位をおとしめる究極の刑罰を過去の遺物に葬り去ろうとしている」と説明している。

 

 日本は、国連の国際人権(自由権)規約委員会から、死刑制度の廃止を考慮するよう何度も勧告を受けている。確かに世論調査では死刑に肯定的な意見は多いが、情報開示の不十分さゆえに国民の議論が熟さないのではないか。 生命を奪う究極の刑罰でありながら、誤判や冤罪(えんざい)の恐れが排除できない。執行されれば取り返しがつかず、他の刑罰と本質的・決定的に異なる。2018年の国連総会でも死刑の廃止・停止を求める決議が圧倒的多数の賛成を得た。 日本と外国との捜査協力・司法協力の壁ともなっている。日本が犯罪人引渡条約を締結している国は韓国と米国のみで、拡大しない理由は日本に死刑制度があるためとも考えられている。

 

 死刑の存廃を巡り、日本では活発な議論が交わされてこなかったが、各国が人権尊重の観点から次々と死刑の廃止・停止に踏み切ってきた潮流を見据えたい。

 

 

 

東京新聞 2021年8月23日 07時47分

 

 

 

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