墨汁日記

墨汁Aイッテキ!公式ブログ

贈る言葉

2004-09-10 18:51:06 | 日常
 最近、俺の働くパン屋で飲み会があった。俺が世話になった製造班の班長の送別会である。 班長は今月の15日より青山に栄転となるのだ。本当にお世話になった。俺が「お世話になった」なんて、しおらしい事言うのは本当にお世話になったからなのだ。普段の俺はこんな事は絶対言わない。
 実は、この送別会で俺はひとつの計画を実行しようと思っていた。うちの店のしきたりで送別会の時には必ず、色紙代わりのコック帽に、送り出す人へ贈る言葉を書いているのだ。それに、このブログのURLを書こうかなと思っていたのだ。同じ職場でなくなるのだ、俺の馬鹿な暴露ばなしも、もう関係ないだろう。ひとごとだ。ぜひ、俺のバカっぷりを班長にも読んで欲しいのだ。俺も元気でこんなにも馬鹿ですよと辞めた後にも、お知らせしたいのだ。でも、迷惑かもしれんな、こんなブログじゃ。どうしよう。
 そんなで、URLを書くか、書くまいかと迷いながら送別会にでかけた。集合時間ピッタリの八時に飲み屋に到着。まだ、半分も集まってない。てもちぶさたの副幹事、仕方ないので、もうコック帽とペンを取り出す。みんなが集まるまで、班長への贈る言葉を書いててよ、と言う。最初に帽子を渡された女の子はこまり顔。先に書いてよと仲の良い子に押し付ける。その子もパス。もーちょい考えたら書くからと、最近入ったばかりの新人に押し付ける。その子はどうしようかと言う顔でかなり困っている。押し付けたはずの女の子達が、彼女に助け舟を出す。
「後ろのテーブルに回しちゃえ。」
 帽子は無地のまま、後ろの席へ。だが、無地の帽子は無地のまま副幹事の手元に戻ってきた。うしろの席でも同じ様な作業行程が行われたらしい。
 なりゆきをボーと見ていた俺は副幹事と目が合ってしまった。一瞬、彼女の顔が川原いずみの半月笑い顔のキャラとかぶる。にま~。
「内山さんから書いてよ。」
 お前ら女子はすぐに嫌な事を男に押し付けやがって!そんなに一番に贈る言葉をかくのが嫌か!
 俺には班長にこのブログのURLをお知らせするという重大な任務があるのだ。そのためにも、ぜひとも一番最後に送る言葉を書きたいのだ。万が一記憶力の良い子がいて俺の超恥ずかしいこのブログのURLを覚えられたりしたらどうする!俺の身の破滅が約束される。
 仕方ない、班長へのURL報告はあきらめよう。では、なんて書こう。俺、URLの事で頭が一杯で贈る言葉なんて考えてきてなかったぞ。どうしよう、こういう時は、何も考えずに、ありのままの気持ちを書けばよいのだ。ありのままの気持ち。
「ここにぼうしがあります 内山」
 って、これじゃありのままの気持ちじゃなくて、単なるありのままじゃん!いーんだ、どうせ俺はこういうキャラクターだ。
 やがて、店長や班長も到着し、場は盛り上がる。乾杯も終わり、レゴのストラップ争奪じゃんけん大会も終了。宴は盛り上がり、一時間ほどで、酔っぱらって寝ちまう男も現れる。そんな中で、静かに飲んでいた俺に、また色紙がわりの帽子とペンがまわってきた。
「まだなら、班長への贈る言葉をお願いします。」
 一番に書いたんだけどね。みんなが何を書いてるか興味がある。まだ書いてないフリして帽子を見せてもらう。
 おおっ、感謝の言葉で満ちあふれてる!班長に教えてもらったことや、してもらったことなど、感謝と感謝と感謝に満ち満ちている。こんなんもらったら、泣く。絶対に泣く。それにくらべ、俺のは適当すぎ、思いつきで書きすぎてると、自分の書いた贈る言葉を見直す。すると、「ここにぼうしがあります」の横に波線が引かれ、「そのとーりです!」と書き加えられていた。
 ちょい待ち、どーゆう事?なにが、「そのとーりです」なの?酒がまわり酔った頭で考えてみる。
 たしかに、俺の贈る言葉がひとつだけの時は、「ここにぼうしがあります」は単なる、ありのままでしかなかった。しかし、これだけの感謝の言葉で帽子がうめつくされている状況下においては、「ここにぼうしがあります」は違う意味をはらんでくる。
「ここに(班長への感謝の気持ちを込めた、私たちの)ぼうしがあります」
 本文よりカッコ内の方が長いが、そういう意味で書いたと勘違いされたんである。おいおい、俺をあなどるなよ。こう見えても真性の馬鹿だ!そんな、ねらって最初から、カッコイイ事を書けると思ってんのか!ねらって、こんな事を書けるんなら、かなり頭いーぞ!残念ながら、俺は悪いのだ。
 それは、ともかくとして。「そのとーりです」と書いた女子はなかなかの女子だ。あなどれん。他の子は、みんな長々と感謝の気持ちを書いてんのに、この子だけ他人の贈る言葉にのっかって、ひとことですませてやがる。しかも、俺の贈る言葉より字数が少ないときている。ほんとに、あなどれん女子である。


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