墨汁日記

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面接にのぞむにあたって

2008-04-03 13:21:29 | 駄目

 どうも、仕事をクビになった俺です。

 まぁなんだね、俺ってけっこう自分じゃ駄目人間のつもりでいたんだけど、俺の駄目っぷりではまだ駄目らしい。
 簡単に言うと、駄目人間を自称するのは駄目で、ようするに、今の駄目ごときじゃ、まだまだ駄目なのだ。

 どう駄目か?

 まだまだ駄目がぜんぜん足りていないのである。
 これじゃ駄目だっ!

 俺ていどの駄目では、若い人に対し胸をはって「俺のような駄目人間にだけはなっちゃいけないよ」などと、反面教師ぶって説教するのはとてもおこがましい。
 反面教師なら反面教師として、真実の駄目っぷりを我が身をもって示す事こそが理想の反面教師像であると俺は考える。

 人生は重い荷を背負いてロッククライミングするのに等しい。

 人生という岩山ははてしなく高く、雲にかくれて頂上すら定かではない。さらに強い風はクライマーを吹き飛ばさんばかりに吹き荒れ、また、下に降りるにしても底があるのかないのか暗黒が広がるだけ。

 がむしゃらに岩山を登りつめていくか、登らないまでもそこから落ちないようにしがみついて居るかしか、普通に考えるなら選択肢はないように思える。

 なんだけども、隠された選択肢もじつはある。

 岩山のところどろには、避難所みたいな雨風がしのげて腰を落ち着けられるような場所があって、うまいことそういう場所を発見できたのなら幸運だ。上に登るのをあきらめさえすればそこに定住しちまえば良いのだから。必死で上に登る人を尻目に重い荷物を置いて座り込んでいられるのだから、とても楽ちんだ。
 だが、そんなに簡単に避難所は見つからないだろう。
 上にいくほどクライマーも必死で、上の方の避難所はせっかくここまで登り詰めたのだからという人達でたいてい埋まっている。空席はほとんどない。
 それに、上にいくにしろ、まず中間地点あたりの泥沼化したクライマー達の混雑渋滞を乗り越えていかねばならないのだけど、その中間地点にはとにかく人が多くって絶対に空いている避難所などは無い。

 避難所はそう簡単には無いから登らざる得ないのだろうか?
 でも、空いている避難所ってのは、これは内緒なんだけども、上よりも下に多い。じつは岩山の下の避難所なら空いている場所がけっこうある。

 上に登るのを止め、少し降りて、そのような避難所に腰を落ち着けるのもひとつの選択肢だ。
 そうしたなら、ロッククライミングに夢中になっている人たちには見えないような景観がきっとひらけるだろう。どうせ上を目指す連中など、目の前の岩しか目に入っていないのだし。
 上を目指す人からは、そんなところに荷物を置いて安住したなら、きっと「お前はそんな場所で満足しているのか」と言われて笑われるだろうけど、劣等感なんて下らないものにさえ動じなければ何も問題はない。むしろ賢い生き方かもしれないのだ。

 ところで、上を目指すにしろ、避難所に安住するにしろ、誰もが怖れるのは岩山から転落することである。転落するのはじつに簡単だ。しがみついているその岩から両手を離せば良いだけなのだから。
 でも、簡単だからといって、自分から転落を選ぶ人はなかなかいない。
 岩山の底は暗闇で、落ちたらどうなるか分かったもんじゃないという恐怖感が転落をおそろしく感じさせる。

 実際、転落は落ち方によっては大きなダメージを受ける。
 場合によっては死に至るだろう。
 だが、地の底まで落ちきれる人は稀である。なぜなら、岩山の中腹よりだいぶ下には鬱蒼と木々が生い茂っていてくらい森になっている。その森が原因で岩山の底が見えないのであるが、なんにしろ大抵の落下者はそのくらい森の枝に引っかかり地の底まで転落する事は無いのだ。うまいぐあいに落ちたなら木々のおかげでほとんど無傷のまま助かることさえある。

 だが、クッションとして転落者を受け止めてくれたくらい森は、また上に登ろうとするならば大きな障害になるだろう。
 きつい斜面に鬱蒼と繁ったくらい森はクライマー達を閉じ込める。縦横無尽に隙間なくのびた枝はリュックや服にからみつき、転落者を容易には登らせない。
 上に戻る事を望むかぎり、森の上空の枝の隙間からわずかに見える岩山をただ恨めしく眺めて苦しむしかない。
 でもまぁ、もう上をめざすつもりがないなら、どこだってその場所なりの幸福もあるもんで、くらい森での生活もそれなりで、きっと気の持ちようだ。

 それでも、まだどうしても上を目指したいなら、枝に引っかかる服やわずかに残った荷物をみんな捨てちまうしかないだろう。
 それしか、裸一貫のすっぽんぽんにならないかぎりは下層のくらい森からは絶対に抜けられないが、そうしてさえも抜けられるとはかぎらない。

 なんか話がずれたが、結論を言おう。

 俺はクビになった職場に安住を求めていたのだ。
 会社を人生の避難所にしょうとしていたのだ。
 そんなさもしい根性だからクビにされたのだろう。

 だいたい俺らが貰う給料ってのは、自分が会社で稼いだ利潤の取り分ではない。
 給料 イコール 会社で自分が稼いだ金 という意味ではなくて、労働者を使うにはいろいろと経費がかかり、雇用主が労働者に給料として支払う以上の給料明細では見えない金が労働者を使うのにはかかっている。とにかくもっと真面目に企業戦士として働かなくちゃならないのだ。安い給料でどこまでやらせるつもりだなんて考えてもいけない。

 とにかく、今回クビになって本当に良かった。

 駄目なのに無理して働いても仕方がない。

 でも、
 俺は懲りない駄目人間。

 今日これから、またしても会社の面接に行く。またパン屋だ。
 どうせ、みんなまたきっと駄目なんだろうと思っている事だろうが、俺もそう思う。駄目だろうけど、駄目を極める為に面接へ行ってきます。
 駄目を極めるのは難しい、常に駄目であらねばならないよと。