奥永さつき

日々のできごとをそこはかとなくつづります。

D.W.アンソニー「馬・車輪・言語」

2022-06-07 22:00:50 | 社会
今日、世界の30億人が話している言語は、印欧語族というグループにまとめられる。言語学者たちは、英語、ヒンディー語などそれぞれの言葉に分岐する前の祖先語の系譜をたどった。すると最も古い祖語の中に「馬」「車輪」「羊毛」といった単語が現れる。その言葉を話していた人びとは、そもそもどこにいたのか?なぜ今日これほどまでに拡散できたのか?歴史言語学者が指し示した言語の化石を、考古学者は遺跡から発掘する。

上巻まで読んでみた。
歴史言語学により、印欧祖語が生まれた時期と場所が「馬」「車輪」「羊毛」のキーワードで解明できるであろうという論説は説得力があり、理解できる。印欧祖語をいつ・どこで・誰が話していたのかを考古学で明らかにしようとしている。だが、考古学者にはそれぞれの主張があって、勝手に何々文化と命名したりしているようだ。コンセンサスが得られていないので「かもしれない」とか「だろう」とかの表現が多く、素人には理解不能という事態に陥る。考古学の限界かとも思える。それよりもむしろ、デイヴィッド・ライク(「交雑する人類」)のように古代DNA解析により民族の流れを追う方が正解ではないかと思える。