劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録

演劇、ダンスなどパフォーミングアーツを中心にフリーランスでライター、編集者をしている高橋彩子の備忘録的ブログです。

「はんぱない」傑作

2009-03-11 00:29:57 | 観劇


大変なものを観てしまった。
ロメオ・カステルッチの『Hey Girl!』@にしすがも創造舎。

あの素晴らしさをどう形容したらいいのだろう?
少なくともこの写真では伝わるまい・・・

――テーブルの上で何かがうごめいている。
粘液のような粘土のようなものがゆるゆると床にこぼれ落ちていく。
やがてその中から少女の裸体が「誕生」。少女は立ち上がり、泣きながら太鼓を叩く――
と、ここまで書いてわかる通り、舞台について漫然と書き連ねても、
“わけのわからない前衛演劇”の陳腐なパロディのごとき印象を与えてしまうばかりだ。

だが『Hey Girl!』は鳥肌物の傑作。
では何がこの作品を、傑作たらしめているのだろうか?

身も蓋も無い言い方をすれば「センス」だろう。
音、光、オブジェ、身体・・・すべてのコンポーネンツを組み立てる際の、
カステルッチのシャープ過ぎる美的感覚に、心底から恐れ入った。

なんだかもう、目見張りっぱなし、瞳孔開きっぱなし。
思わず「まじでやべえ」とか口走りそうな・・・!!
人間というものは信じられない光景を前にすると、
ほとんど言葉を失ってしまうのである。面目ないっ。

よって、しかるべき言語化は後日行うとしても、
今はただ若者的(!?)に、この新鮮な驚きの中へ身を浸すことにする。

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レプリークBis

2009-03-10 18:10:33 | 執筆
レプリークBis vol.14』(阪急コミュニケーションズ)

3月12日発売(発売日が変更になったようです)。以下、執筆をしております。


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○Kバレエカンパニー10周年 熊川哲也インタビュー

2月末の『放蕩息子』では二度目の怪我から見事復帰。
幸先の良い10周年のスタートを切った熊川さんが語る、過去・現在・未来!
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○劇作家・演出家・俳優 野田秀樹 × 俳優 松たか子 対談

1~2月に公演されたNODA・MAP『パイパー』を中心に、
作・演出・出演の野田さんご自身と出演の松さんに“野田演出”を語っていただきました。
公演中にもかかわらずリラックスした雰囲気で、お二人の信頼関係がうかがえた気がします。
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○演出家・俳優 串田和美 取材

幅広くご活躍の串田さんですが、今回は歌舞伎の演出を中心にうかがいました。
別の公演(『ピランデッロのヘンリー四世』)の稽古でお疲れにもかかわらず、
芝居のこととなると目が輝き、話に熱が入るご様子がさすがでありました。
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○演出家 ロバート・マックイーン × 俳優 浦井健治 × ダンサー 西島千博 座談会

ブロードウェイ・ミュージカルの名作『回転木馬』について、
演出・俳優・ダンサーそれぞれの立場で語っていただきました。
いずれも情熱を秘めた紳士であるお三方ならではの和やかな座談会でした。
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○宮本亜門を語る3つのキーワード

各所から熱い視線を集めている演出家・宮本亜門さんをキーワードごとに解説。
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○2008年のダンス&振付家 紹介 ミニコラム

08年の公演に特化し、独断と偏見で注目の振付家をご紹介させていただきました。

森山開次振付 ソロ『The Velvet Suite』
大島早紀子振付 H・アール・カオス『中国の不思議な役人』
ファビアン・プリオヴィユ振付 バレエノア『紙ひこうき』
梅田宏明振付 ソロ『Accumulated Layout』 
天児牛大振付 山海塾『降りくるもののなかで―とばり』 
井手茂太振付 イデビアン・クルー『排気口』
デヴィッド・ビントレー振付 新国立劇場バレエ団『アラジン』
小野寺修二振付 カンパニー・デラシネラ『ある女の家』
鈴木ユキオ振付 金魚『言葉の先』
KENTARO!!振付 KENTARO!!+東京ELECTROCK STAIRS 『Wピースに雪が降る』 
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○2008年 演出家 紹介ミニコラム  

錚々たるメンバーをあんな短い文章で・・・私が決めたわけじゃないけど恐縮しています。

加納幸和、栗田芳宏、栗山民也、鈴木忠志、坂手洋二、
松本修、宮城聰、平田オリザ
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○特別コラム オペラの演出について

今、オペラの演出がどんなとんでもないことになっているか、
その楽しい現状について書かせていただきました。
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○連載 ダンス・カレイドスコープ 第3回 勅使川原三郎

大好きな振付家。字数が足りず“書き足りない感”いっぱいですが(笑)。
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ぜひお読みください!

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新国立劇場オペラ 楽劇「ニーベルングの指環」序夜『ラインの黄金』

2009-03-06 12:49:24 | 観劇
新国立劇場へ、ワーグナー作曲・楽劇「ニーベルングの指環」四部作の、
序夜『ラインの黄金』ゲネプロにうかがった。



英国人キース・ウォーナーを演出に迎えたこのプロダクション、
通称「トーキョー・リング」が初演されたのは01年。
あれから実に8年も経っている・・・光陰矢のごとし・・・!
当時、私を含め観客たちは、ユニークな解釈や謎めいた仕掛けに大騒ぎ。
張り巡らされた無数の伏線をめぐり、客席でもネット上でも、
熱いトークが繰り広げられたことは記憶に新しい。

以後4年の間、毎年上演された“チクルス”も04年に完結した今、
改めて落ち着いた気持ちで(!)、1作目を観ることができたのは収穫だった。
振り返ると、伏線に関してはその後、拾ったものも、予想ほど発展しなかったものもある。
初めて観る方は「ネタバレ」なしのほうが楽しめると思うので、
演出について詳しく説明はしないが、全編を通してこのプロダクションが、
作品に見られる本質的な事柄、つまり、人間(ここでは神話的なキャラクターだが)の
普遍的な愚かさや滑稽さを、ブラックなユーモアとともに明示しているのは確かだ。

例えば、富や権力への欲が人を変え、争いの火種を生み、
大切な身内や仲間をも傷つけてしまう点など最たるものだろう。
また、一つのもの(『ラインの黄金』では神のリンゴ)に依存し過ぎた結果、
破綻が生じることなど、今の社会の構図にも通じるのではないだろうか。

一方、ワーグナー作品のもうひとつの重要なテーマ、「愛」についてはどうだろう?
この作品の登場人物と違って、「草食男子」などと称される昨今の淡白な日本の男子の、
どのスイッチを押せば、情熱的な愛にのめり込み、身を滅ぼすことすらあるのかないのか・・・
これはどうやら多くの女性たちの関心事になっているようだが、
さすがのワーグナー先生にも、まったくもって理解不能な現象かも!?

なお、演奏や歌唱については、まだ調整中のゲネプロゆえ、多くを語らないでおく。
ただこの日は、新国立劇場の03/04シーズン開幕を飾った『フィガロの結婚』以来、
登場ごとに注目を集め続けているエレナ・ツィトコーワ(フリッカ役)の凛とした声の響きや、
エルダ役のシモーネ・シュレーダーの陰影に富んだ存在感などが印象的だった。

ともあれ、装置も斬新で、質の高い刺激的なプロダクションであることは間違いない。
これから新国立劇場では4部作を順次再演していく。楽しみだ。

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出会いと別れは突然に

2009-03-04 01:31:04 | その他
突然、メインパソコンであるMacが起動しなくなり、焦る。

今生の別れを覚悟するも、アップルストアであっさり解決。
無事のご帰還と相成った。ふう。。。
すでに頭の中には、昔の恋愛ドラマの主題歌が鳴り響いていましたよ。


別れといえば昨年、17歳を目前に実家の愛犬リーレンが他界。
しばらくは何をするにも涙うるうるであった。
あちらはそうでもなかったようだけど、私は大好きだったのだ。




ちなみに、親戚のおうちには美猫アンが登場。
まだ、仲良しどころか、目すら合わせてもらってない。
あっという間にカーテンの向こうに隠れちゃったんだもの。




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