劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録

演劇、ダンスなどパフォーミングアーツを中心にフリーランスでライター、編集者をしている高橋彩子の備忘録的ブログです。

『マリ・クレール』9月号 et adieu

2009-07-28 00:00:02 | 執筆
『マリ・クレール』9月号(アシェット婦人画報社)

■Art&Stage欄 ミニコラム:喜ばれる差し入れは何?

8月、『六月燈の三姉妹』@赤坂RED/THEATERに出演の辺見えみりさんに、
差し入れにもらって嬉しい素敵な「1品」を紹介していただきました。

さて、この雑誌はこの号を最後に休刊。
マリ・クレールのライセンスをもつマリ・クレールアルバム社と、アシェット婦人画報社の
親会社ラガルデール・アクティブ社との、提携関係の変化が理由、とのこと。

不況にあって雑誌の休刊が相次いでいるため、さほど驚きはしなかったが、
かなり急な決定だったこともあり、編集部のみなさんはさぞやご無念なことと推察する。
編集部の方それぞれの今後のご活躍を祈るとともに、
ネット上で読んでいただける、私の本誌での記事をご紹介しておこう。
実は諸般の事情で当初の予定より大幅に短い記事になったのだが、
限られた字数なりにある程度、ご好評いただいたものだ。

バレリーナ吉田都インタビュー→コチラからどうぞ

・・・とリンクを張ろうと思ったら、休刊に合わせてたった今、削除されたもよう(涙)
なんか流れ的に浮かばれない気分だし、掲載されているバックナンバーも
公式サイトでは販売終了のようだから、この際、元原稿を掲載しておく。短いんで。

(マリ・クレール08年11月号より) text Ayako Takahashi
~世界を舞台に輝く秘密~ 
プラネット・ウーマン 吉田都インタビュー

 ■結婚を契機に
 より幅広い活動を展開

 吉田都が今、とびきり輝いている。かねてより端正で音楽性豊かな踊りやチャーミングなたたずまいには定評があったが、このところの充実ぶりはまさに、満開を迎えた大輪の花。殊更に超絶技巧や濃厚な演技で目を引かずとも、このまばゆささえあればもう何も要らない……観ていてそう感じてしまうほどのオーラを放っているのだ。
 現在、英国ロイヤル・バレエ団とKバレエカンパニーの双方で活躍。昨年には日本で紫綬褒章を、英国で大英帝国勲章を受章し、改めて両国からの高い評価を知らしめた。
「英国は私をダンサーとして育ててくれた場所。でもダンサー生命を終える前に母国で踊りたいという思いから、06年にKバレエに移籍したんです。結局、ロイヤルではゲストとして踊っていますが、今年はさらにKバレエでもゲストとなり、より自由に活動する環境が整いました」
 移籍のきっかけの一つは05年の結婚。「自分が結婚するなんて想像していなかった」という吉田にとって、まさに想定外の転機だったよう。
「彼と知り合ったのは8年ほど前。話の最中なのに携帯電話をひっきりなしに鳴らすので第一印象は最悪でしたが(笑)、いつのまにか身近な存在になっていて。サッカー関係の仕事をしている人なので体を使うことへの意識に共通点があり、一緒にジムにも行きます。サッカーの注目度って世界的にすごいですから、彼の傍でそのプレッシャーを知るうち、自分の悩みから解放されて気が楽になったことも。専門家と違う視点で踊りの感想を言ってくれるのも新鮮です。おかげで視野が広がりましたね」

■踊ることを通じて
社会貢献への道も

 昨年はシルヴィ・ギエムがコンテンポラリーダンスを中心に踊るべくバレエ団を去り、ダーシー・バッセルが家庭のために引退……と世代の近い同僚が新たな人生へ踏み出す中、吉田はバレエを続けることを選んだ。
「バレエっていまだに発見が尽きない。そこが面白いんです。もちろん身体的には限界もありますが、長く続けるうちに自分のことがよくわかるようになり、例えば以前より力を抜いて踊れるようになりましたし、稽古やリハーサルをし過ぎないよう気持ちをコントロールできるようにもなりました。積み重ねてきた経験と知識が今、いい作用をもたらしている気がするんです。若いころは余裕がなかったせいかバレエから離れると罪悪感をおぼえてしまっていたけれど、今は結婚を含め、ON/OFFの切り替えがバランスよくできていているんじゃないかしら」
 現在の彼女にとっては踊ることこそが、社会貢献にもつながる道だ。
「自分の経験を振り返っても、先生や振付家の指導ももちろんですが、共演した先輩の踊りや舞台への姿勢から学んだことってとても大きいんです。私も舞台を通して若い世代にたくさんのことを伝えたいですし、ユネスコから任命されている“平和芸術家”の立場を生かしたさまざまなプロジェクトも企画中です」
 常に前を見据えながらも、気負い過ぎることなく自然体を保つ――。彼女が到達したこの境地こそ、今の輝きの源泉なのかもしれない。 

 (以上)


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