劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録

演劇、ダンスなどパフォーミングアーツを中心にフリーランスでライター、編集者をしている高橋彩子の備忘録的ブログです。

『ヘッダ・ガブラー』

2009-07-14 01:30:19 | 観劇
『ヘッダ・ガブラー』@赤坂RED/THEATER



最近、イプセンが面白い。なんて言ったら、イプセン先生はムッとなさることだろう。
すみません、お書きになった時から面白いです。

ただ、昨年の『人形の家』といい『ちいちゃなエイヨルフ』といい、この『ヘッダ・ガブラー』といい、
イプセンの世界を風刺したり換骨奪胎して全く別の物語を作ってしまったりではなく、
もとから戯曲にあった要素をいわばズームイン/アウトしたりカットしたりしながら、
独特な世界を描き出していて新鮮だった。まあおもには、昨年の『ちいちゃな~』と
今回の『ヘッダ~』を訳した笹部博司の志向なのかも知れないけれども。

小沢真珠がヒロインということで演技力が懸念されたが(事実、巧いとは決して言えない)、
彼女のヘッダは好奇心旺盛でエキセントリックで、退屈が死ぬほど嫌いな貴族的美女。
親(ガブラー将軍)の遺伝や呪縛がさほど感じられなかったのも特徴かと。
また、単に気が強く誇り高いだけではなく、無邪気で愛らしい部分も垣間見え、
そうした人間味や情のようなものと、気まぐれさや冷淡さといったものが、
未分化のまま共存しているといった雰囲気。
重厚なたたずまいにやや欠けた分、世間知らずな印象も際立った。

こういうヒロイン像自体、従来のヘッダとは異なるということで賛否あるかも知れないが、
少なくとも小沢には合っていたと思う。いや、小沢だからこうなったと言うべきか。

オーソドックスなイプセンが観たい向きにはちょっと違和感があるだろうし、
演出にも俳優の演技にも気になるところが幾つかあったものの、
コンパクトで緊密な劇場空間という点への好感も手伝ってか、
「アリかナシか」と聞かれたら、私としてはたまにはこういうのもアリだがいかがだろうか。

公演は今日(14日)まで。
最終日前日に観たため、眠いが諸用を片付けたのち、急いで感想を書いてみた次第。
眠そうな文章だったらごめんなさいませ。

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