劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録

演劇、ダンスなどパフォーミングアーツを中心にフリーランスでライター、編集者をしている高橋彩子の備忘録的ブログです。

桃狂い/『サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ』&プロペラ『ヴェニスの商人』

2009-07-10 18:42:31 | 観劇
少し前だが、カラフル/モノトーンが大きな意味をもつ舞台2本を、相前後して観た。

■『サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ』@パルコ劇場

色と光を探求し続けたジョルジュ・スーラの名画「グランジャット島の日曜日の午後」に
インスパイアされた、スティーヴン・ソンドハイムのミュージカル。

1幕は19世紀、ジョルジュ(=ジョージ・)スーラと恋人ドットを中心とする人間模様が、
2幕は現代、スーラとドットの子孫であるジョージらの姿が描かれる。

壁、床、天井まで真っ白な装置に色彩豊かな映像を投射した舞台は、美しく抒情的だ。
もっとも“真っ白”がそのまま効果的に使われる場面もあるし、
そもそもこの作品では、昔の物語だけが懐古趣味的に展開するのではなく、
現代的な不安・孤独、生きるとは、美・芸術とは何かが、強く問いかけられるのだが。

なお、「グランジャット島の日曜日の午後」はシカゴ美術館が所蔵。
この絵へのアメリカの人々の愛をうかがい知ることができる。


■イギリスの劇団プロペラの『ヴェニスの商人』@東京芸術劇場

こちらはうって変わって、かなりモノトーン調に近い舞台。

シェイクスピアのこの物語は、ユダヤ人への差別を扱っていると言われる。
(ちなみにタイトルにもなっている“ヴェニスの商人”とは、
時々誤解されるようだが、金貸しのシャイロックではなくアントーニオ)。

この舞台では人物造形がフラットで、誰が誰だかわかりにくかったのだが、
終幕、「どっちがクリスチャンでどっちがユダヤ人か?」と意味深な
台詞(裁判で変装したポーシャが発する言葉のヴァリエーション)でしめくくられる。

つまりここでは、あえて単一なトーンで演出されている点にこそ意味がある。
「差別」を行うのは、観客の目なのだとでも言われているようだ。
ただし、オーソドックスな舞台に対する一定の知識が大前提なためハードルが高いし、
気軽に楽しむならたぶん、同劇団の『夏の夜の夢』のほうがオススメだけれども。


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さて、話はガラリと変わるが最近、桃が美味しくて美味しくて、ひたすら食べている。



体を温める「陽」、体を冷やす「陰」、中間の「平」の3つに食べ物を分ける東洋医学では、
桃は陽の果物として定義されているんだとか。

ならば夏バテ対策にも良さそうだし、胃腸が弱ってへたばっている私には強い味方と信じて
(というより本当はただ好きだから)、むしゃむしゃと平らげております。

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