ぱたぱた仙鳩ブログ

徳島から書道文化を発信します。

岡山研修旅行 

2022年11月19日 | 日記
11月18日(金)、学生の卒論資料収集と、自分の研究のために、この日の1限の授業が終了した後、10:40 に学生を同乗させ、自家用車で岡山に向かいました。

最初に行ったのが総社市の「鬼ノ城」です。総社ICから一般道に入り、砂川公園の先の細い山道を3kmほど上ると、鬼ノ城ビジターセンターに着きます。解説を見て概要を知りました。これは、白村江敗戦後の664~667年の間に、唐・新羅からの国土防衛のために建てられた百済式山城の一つです。西日本にはたくさんあって、金田城・大野城・長門城・永納山城・屋島城などです。後に桃太郎伝説に組み入れられて、百済の王子「温羅(うら)」=鬼 の城とされ、「鬼ノ城(きのじょう)」と名付けられました。

663年の白村江敗戦では、朝鮮半島の百済から多くの戦争難民が倭国に移住して、新たな日本国建設に協力しました。当時は百済は同盟国ですから多くの場所では歓迎されましたが、場所によっては現住の倭人との間で文化摩擦も発生し、また渡来人の高度な技術や権益を奪おうとする勢力もあったでしょう。当時の朝鮮系渡来人は金属鉱山の探索や精製・加工技術に特に優れていました。吉備山地には鉄が豊富に産出されますし、渡来人が山を掘れば砂が崩れ、その砂が川や内海を埋めます。環境破壊や洪水、漁業への影響があってトラブルに発展したでしょう。現代でも似たような問題はありますし、「砂川」という地名がそれを暗示しているように思います。吉備内海が埋め立てられた背景には、たたら製鉄の影響があったという記事もあります。
またもし、百済の王子の一人が倭国内に、大和政権からの指示を排除した完全独立国を作ろうとしたら、大和政権としては統治や軍備の問題が起きてきますから、これを悪者=鬼として武力で制圧したでしょう。そのような様々なことが桃太郎伝説として脚色されたのではないかと想像しています。


ジオラマを見ると、鬼城山(きのじょうさん)の山頂部に城壁で囲んだ様子がわかります。



ビジターセンターから山道を数百メートル歩くと、展望台から、この城壁の一部に、現代に木造で建設された建物も見えます。


現在の南側の景色です。吉備平野は古代には大きな内海で、そこに児島や早島が浮いていました。現在の岡山市中心部は海の中でした。
その後、瀬戸内海は干拓も進んだので海岸線は遠くなりましたが、当時はここからも敵船の動きが見えて、狼煙(のろし)をあげたでしょう。現在の総社市の中心部が昔の国府の場所です。鬼ノ城の場所が、当時の吉備国中心部の背後にある重要な地点であったことがわかります。


展望台から見えていた城跡まで歩きました。城には、古代の中国で生まれた建築技術の「版築」が使われていました。それを復元した壁がありました。土が層になっているのがわかります。日本でも弥生時代から既に使われ、現代でも土塀を造る時に使われています。相撲の土俵もこの技術の応用だと言えます。


石垣や敷石もしっかり復元されていました。7世紀に既にこのような石垣が日本にできていたことに感動します。様々な大きさや形の石をうまく組み合わせて石垣や敷石を造ってあり、とても美しいと思います。この技術が、戦国時代の日本の城壁につながっていることも実感しました。


今回は行けなかったのですが、ここから南東方向に、温羅の首を埋めたと言われる吉備津神社と、それを管理した犬飼氏の家(犬養木堂記念館)、温羅を倒した吉備津彦(桃太郎のモデル)を祀った吉備津彦神社もあります。



見学後に山を下り、真庭市勝山の高田硯の工房に向かいました。事前に約束した15時に到着しました。「中島硯店」です。お店はJR西日本姫新線の中国勝山駅前にあります。ご主人が親切に出迎えて下さいました。今は高田硯の生産はこの1軒だけです。学生は4年生の佐藤佳奈、才崎菜江の2名です。佐藤が和硯の研究、才崎が筆の研究をしています。


原料の高田石です。


ダイヤモンドの付いた丸刃のこぎりで石を切ります。


次に表面を削って大まかに整えます。



別室に移り、コンプレッサーの電動ノミで粗削りします。



さらに部屋を移り、手ノミで細かい彫り作業をしてから、やすりで仕上げます。やすりは3種類使うそうです。


工房も作業手順によって3か所に分かれていることが分かりました。かつてはこのお店だけで6名の職人さんがおられたそうですが、現在はご主人お一人で製作されていて後継者はおられません。室町時代から続く貴重な書道文化です。


お店の展示ケースに飾られていた高級製品はとても高価なので、なかなか私の購入できる価格ではありませんでした。


工房に置かれていた、生産中のもう少し安い製品を紹介いただき1点購入し、それと別に陶製の水差しを全員で購入し、高田石製の筆置きと硯石の破片のお土産をいただきました。斜めに入っている白い線は、高田硯の特徴である石英成分の貫入であって、美しい模様になっているのです。決して割れ目やキズではありません。粘板岩でとても磨り易い硯です。

書道では墨汁を使うことが増えていますが、固形墨と良い硯で磨った墨は、とても書きやすく良い線が出ます。特に仮名を書かれる作家の方にはこの硯はお勧めです。なめらかな墨が作れます。



16時ごろに帰路につき、夕方19時には帰学しました。たいへん収穫の多い研修旅行でした。

香港城市大学書道部作品展2022

2022年11月19日 | 日記
11月14日(月)~29日(火)、標記が四国大学書道文化館1階のギャラリーで開催中です。(ただし土・日・休日は休館)

昨年から、両校では互いの作品を送り合って、互いの展覧会で展示しています。作品交流です。今年は、顧問の先生の3点、院生・学生作品9点、全部で12点の作品が送られてきました。




顧問の先生の作品と院生の作品


学生の作品7点



1点は横物なので、ガラスケースの中に入れています。



同じ漢字文化圏ですが、作品の作り方や、表具の仕方には違いがあって、興味深いです。平日の9時~18時に入れますので、ご観覧ください。