9月15日(火)~19日(土)、中国杭州に行ってきました。浙江大学中国芸術研究所での2回の講義が主な仕事です。会場は浙江大学の文書館です。浙江大学の詳しいことは下記をご覧下さい。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%99%E6%B1%9F%E5%A4%A7%E5%AD%A6
http://www.zju.edu.cn/
教室の中に、大学院生が13名います。副所長の金暁明先生が私の話のまとめのコメントをして下さっているところです。私は中国語はほとんどできませんので、日本語学科の張恵芳先生が同時通訳してくださいました。授業は16日の午後に2時間、17日の午後に2時間、2回にわたって行ないました。1日目は四国大学書道文化学科の学生活動の紹介や、書道美学について、また2日目は中国・朝鮮半島・日本の書道文化の関連の話をしました。主としてパワーポイントでの講義でしたが、書道パフォーマンスの動画も少し見てもらいました。大学院生は熱心で、質問もたくさん出ました。
また私の食事などの面倒は、大学院生が3名、日本語学科の学生が1名、みてくれました。でも、日本語の話せる人が周りのいない時間が半分ほどあって、へたな英語を交えながらの生活だったので、思ったよりも疲れました。下の写真は、前半の幇助をしてくれた大学院生の梁くんと日本語学科学生の苗さんです。親切な好青年たちでした。
仕事が終わった翌日18日には、杭州市内の観光地をご案内いただきました。いくつか紹介します。下の写真は大学から車で南に15分ほど移動するとある諏訪湖程の大きさの湖、「西湖」です。ここは白居易や蘇軾が知事をしていた時に、湖を浚渫(しゅんせつ)して出た泥を盛って作った堤があります。詳しくは下のサイトをご覧下さい。それぞれ「白堤」「蘇堤」と呼ばれています。福岡市の大濠公園はこれに倣って造られたという説もあるそうです。
https://kotobank.jp/word/%E7%99%BD%E5%A0%A4-805537
http://www.e-asianmarket.com/asia/hangzhouxifu81.htm
たいへん美しい観光地です。
しだれ柳がたくさん植えられていて、良い雰囲気です。湖には観光船がたくさん浮かんでいました。
この岸辺には有名な西泠印社があります。
http://www15.plala.or.jp/seirei_insha/index.html
ここには、丁敬、石如、呉昌碩、兪曲園、などの遺物がたくさんあって、見ごたえがありました。日下部鳴鶴もここで明治24年に呉昌碩、兪曲園などの文人たちと交流しました。隣接する浙江省博物館は役所があった場所で、伝統的な庭園芸術を見ました。中国絵画に異様な形の岩の水墨画がよく描いてありますが、こういうのを見て描いているのだとわかりました。神仙の住む蓬莱山や中華三山を模して彫刻した石だということです。池は海を表現しています。
この日に私を幇助してくれたのは、大学院生で書道や絵画専攻博士課程1年生の劉さんと、デザイン専攻の博士課程5年生の孔くんです。孔くんが英語で通訳してくれました。彼はもうすぐ卒業して、造園デザイナーになることを目指していると言っていました。昼食は金先生も合流して、少し移動して河坊街に行きました。ここは南宋時代の都があった場所で、当時の家並みを再現している土産物街だそうです。
http://japanese.cri.cn/189/2008/04/01/1@115221.htm
下の写真の左から劉さん、金先生、孔くんです。その時は気が付きませんでしたが、今になって写真をよく見ると建築物に「うだつ」が付いています。日本のうだつのルーツもきっとこれでしょう。脇町の町並みと雰囲気がよく似ていました。
金先生には食事をごちそうになった後に、書店や篆刻の石材の店をご案内いただきました。その後、先生とはここでお別れし、院生二人と一緒に最後に車で少し山に移動して霊隠寺に行きました。ここは中国十大仏寺の一つだそうで、大きな寺院でした。ここの参道途中の紫雲洞にも日下部鳴鶴が訪問して、石刻を残しています。「大日本明治廿四年夏六月日下鳴鶴来游於此」の19文字です。この洞窟の入り口近くにありました。鳴鶴以外の中国文人の多くの石刻もありました。霊隠寺の詳しい状況は下記のHPをご覧下さい。
http://jp.lingyinsi.org/
この寺の本尊は金の大仏です。日本の奈良大仏も、奈良時代の出来たばかりのころはこのような感じだったのでしょう。
翌日の早朝に、中国国際航空で関西空港経由で帰りました。飛行機に乗っている時間は約2時間ですので、関西―沖縄間と同じくらいの距離です。違うのは、国が違って時差が1時間あることです。実際は2時間のフライトですが、着くと現地の時計では3時間経過しています。飛行機の発着の時間は現地の国の時間です。不思議な感覚です。
日本に帰ってくると、たまたまこの日が安保法の成立した日でした。政治的には東アジアは難しい状態にありますが、実際に中国に行って多くの人々と交流してみれば、日本とそれほど変わる事はないし、みんな親切な人ばかりです。中国と日本の文化とは深いつながりがあります。今後も書道文化は、中国と友好関係を維持していくべきだと感じました。たいへん良い勉強になった出張旅行でした。