ぱたぱた仙鳩ブログ

徳島から書道文化を発信します。

上田普 講演会

2011年11月30日 | インポート

Uetahiroshi 11月29日(火)、四国大学で、卒業生の上田普(ひろし)さんを招いて講演会を実施しました。

彼は淡路島出身、平成9年度卒業で、私は19年度に四国大学に来たところですから、一緒にいた期間はないのですが、3年前に講演で来て話を聞いてからすっかり彼を気に入って、個展を見に行ったりしています。今回、学生の為に来て、講演をしていただきました。パワーポイントで多くの画像を見ながら、わかりやすく楽しく勉強できました。

彼は卒業後に中国の杭州大学に留学するものの、自分の求めるものを見つけられず、一年でカナダのトロントに行きます。そこで、版画家や画家など、現代アートにかかわる人々と出会い、書道の殻を破って、独自の新しい書の表現世界を作り始めます。

数年後、京都に戻ります。そこで京都の伝統文化と書と現代アートを結合させ、さらに進化を遂げています。

3年前からさらに進化した講演を聞いて、頼もしく思いました。書道の新たな光を感じました。

「一般の方は書道に対して、敷居の高さを感じている。しかし、例えばアクセサリーの中に書を取り入れて身に着けたら、ずっと身近に感じるでしょう?」

Uetasakuhinn体験に裏打ちされた彼の言葉は心の中にずばりと飛び込んできます。また、その作品のすべてに「コンセプト」がしっかりと存在し、そのひねり・ユーモア・愛情・品格に、何とも言えない魅力を感じます。また、紙と墨にこだわらず、表現のためなら、どんな材料も取り入れる柔軟さにあふれています。

右の写真は、「て」と「手」をつなぐことを表現している作品です。

芸術の世界は、若者が活躍しなければ、絶対に活性化しないと思っています。彼に続くような学生が出てくることを実は秘かに期待しています。


徳島グルメフェスタ11月

2011年11月28日 | インポート

Gurume11273 11月27日(日)、徳島市新町川の市街地両岸で、様々なイベントが開かれました。徳島マルシェ、グルメフェスタ、B級グルメフェスタの3つです。天気も良く、大勢の市民が出て、にぎやかでした。

振興会からの依頼で、26日(金)の授業で、またグルメフェスタの横断幕とキャッチフレーズ、商品看板を学生が制作しましたので、飾られている様子を撮影、またおいしいものを食べに行きました。

Gurume11271 横断幕は、初めて布に書きましたので、まだ学生は布に書くのは慣れておらず、墨がしみこみにくかったこともあって、改めて見ると、字形や配置はうまくいっていますが、線が少し細かったかもしれません。

キャッチフレーズは紙に書いたものと桐板に書いたものとありますが、いろいろな学生がそれぞれの個性で書いているので面白いですね。

看板は厚さ1cmの板に「ととや営業中」「漁師直伝本日のみそ汁」の2種でしたが、雰囲気にマッチしていたと思います。

Gurume11272 今回は作品にすべて小さな印を押してみましたが、雰囲気がよくなって、依頼主も喜んでくださいました。

この日は、イベントが多く、人出は分散したので、グルメフェスタ自体は、先月よりも人出は少なかったですが、やはり書の効果はあったと思います。

この日は、この後、学生に手伝ってもらって、寺町で石碑の拓本を3時間かけて採りました。なかなか充実した一日でした。日焼けもして顔が赤くなっています。


杉下喜清展

2011年11月25日 | インポート

Yoshikiyokotenn 今年の春に卒業した教え子の一人で、現在和歌山県海南市に在住の杉下喜清君は、現在は書家としての活動を始めています。このたび和歌山市で個展を開くことになり、先日の書道文化学会で案内状を手渡されました。

たいへん性格が明るく、誰からも好かれ、書道の腕もすばらしい。今後、どんどん伸びていくと期待している若者の一人です。

若者が夢に向かって一歩を踏み出す姿というのは本当に頼もしく、またさわやかです。伝統芸術の書道界ですが、決して年功序列ではありません。問題は才能と情熱であり、作品の力の有無なのだと思います。

若者でなければできないことが世の中にはたくさんあります。型にはまらない楽しい作品を期待しています。

実はまだ和歌山市には行ったことがないので、行きたいのですが、展覧会は12月21日(水)~26日(月)で、きっとクリスマスにぶつけたのだと思いますが、年末の多忙な時期で、徳島市のイベントに書道展示があって、その写真を撮ったりする必要があるので、ちょっと私はいけるかどうか・・

行ける方は、ぜひ見に行ってあげてください。

Yoshikoyo詳細な地図や連絡先が書いてありましたので写真に撮りました。

彼は、今年の東日本大震災の後に、アスペックという企業が作った「がんばろう日本」というような復興を支援するためのTシャツの書道のロゴを書くなどの活動もしています。そのような仕事の作品も紹介されていると思います。


まちなみキャンパスでの授業

2011年11月23日 | インポート

Hasegawasinnri 11月22日(火)10:40~12:00、徳島市東新町にある「まちなかキャンパス」で特別授業を実施しました。ここは、昨年オープンした施設で、町の中で学生や一般の皆さんが交流したり勉強したりする場所です。市の委託を受けた「まちづくり役場とくしま」が運営していて、常駐の担当者もいます。現在は伊藤さんと高井さんです。

参加したのは私の持っている「実用書法」の授業受講者の4年生10名です。現地集合・現地解散でした。大学からは車で15分ほどの距離です。まず、最初に徳島商工会議所の多田和幸さんから、10分間ほど12月25日のイベントの話を聞きました。紺屋町で行なわれる「いきいき日曜広場」で、書道による応援メッセージを学生が書くというオファーの趣旨説明です。これは今週金曜の授業で書きます。

Tyurosuyamaede その後は、写真にある長谷川晋理さんのお話を約40分間。長谷川さんは株式会社コミュニオン取締役で、東新町一丁目商店街振興組合理事をされています。大阪出身で、祖父が徳島県鴨島出身の34歳。学生時代には授業にほとんど出ずに海外に20カ国も行って見聞を広げ、その後経営コンサルタント会社に勤め、現在は実業家としてご活躍です。非常に魅力的なお話を伺いました。

その後、彼が経営に関わり、弟さんが店主である、近くの「チュチュチュロスカフェ」に皆で行って、チュロスを購入しておいしく頂きました。これがこの日の昼食になりました。

商店街の実情などもお聞きし、このような若手で発想の柔らかい方が町おこしをしようとがんばっている姿を見せて頂くことが学生にとっては非常に勉強になります。

書道が、机の上で書いたり研究したことを、次にどのように社会と結びつけて、活かし、貢献していけるかというところを、今、もっとも考えなければならないと思っています。

そのために、時にはこのように学校の外で、地域の皆さんからお話を聞き、現場を見ることが大切です。


谷泉石氏「看板についての雑学」

2011年11月22日 | インポート

Tanisinnjisennsei_2 11月20日(日)午後に、第8回四国大学書道文化学会が、徳島駅近くの交流プラザ5Fで開かれました。この学会は年に2回実施されて、教員や学生の研究発表ばかりでなく、外部からも様々な講師を招聘して興味深いお話をして頂いています。今回は三重県菰野町から、三重県書道連盟参与・菰野町芸術文化協会会長である谷伸司(号は泉石)先生をお呼びし、「看板についての雑学」と題して、三重県を中心とする、書を用いた看板や酒ラベルのお話を伺いました。

写真は、その時に紹介された、伊勢の代表的な生菓子である「赤福」の看板です。宝永4年(1707)創業の老舗で、この看板は明治20年、赤福中興の祖と言われる6代目の種助の後家濱田ちえが本店を建てるにあたり、地元出身で漢詩の大家であった矢土錦山に揮毫を依頼したものです。

矢土錦山 (やつちきんざん)  嘉永2~大正9 (1849~1920)  72

伊勢の人。名は勝之、字は実夫。初め郷里で松田雪柯・藤川三渓らに学び、後に津藩の名儒土井贅牙の門に入り、藩校有造館の教官となる。維新後は東京に出て巌谷一六に師事し、詩・書を善くした。政治家としても活躍した。

谷先生はこの看板が最も好きだとおっしゃっていました。

その他、様々な看板・酒ラベルの写真を見せて頂き、書家に関するエピソードをたくさんお聞きしました。なお、先生は実は落語の大家で全日本社会人落語協会に属し、大会で優勝したこともある実力の持ち主。最後には落語の一節も実演して頂き、楽しい講演となりました。

看板や商標は、半永久の展覧会のようなものです。日本では書を知らないデザイナーさんなどが荒れた筆使いで書いたものも多く、時にがっかりするような看板も少なくありません。書を学んだ人が書いた看板にはやはり味があります。書道に携わる人々はもっとこの分野に意識を持つべきだと考えています。