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パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

現行から次期へ学習指導要領の転換期における教科書採択

2018年05月25日 | こども危機
 ◆ 教科書をめぐる状況はどうなっているか
   ―小学校教科書採択、著作権法と学校教育法の改正―
(教科書ネット)
吉田典裕(出版労連教科書対策部事務局長子どもと教科書全国ネット21常任運営委員)

 ◆ 次期学習指導要領と教科書採択の周期
 今年、初の中学校道徳教科書の採択が行われることはご存じのとおりです。ではそのほかの教科書の採択はどうなっているでしょうか。とりくみに混乱が生じないように、問題を整理しておきましょう。
 次期学習指導要領の全面実施は、小学校2020年度中学校で翌2021年度からそれぞれ全面実施、高校2022年度から逐年実施(初年度は1年生だけ次期学習指導要領が適用される)となります。
 したがって、次期学習指導要領に準拠した教科書の採択はそれぞれその前年度、つまり小学校用は2019年度、中学校用は2020年度、高校用は2021年度となります。
 一方、現行学習指導要領準拠の教科書の前回の採択は小学校用が2014年度、中学校用は2015年度でした。なお高校は毎年採択が行われます。
 ところで、義務教育用教科書では、一度採択した教科書の使用期間は、4年間となっています(教科書無償措置法[正式には「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」]第14条および教科書無償措置法施行令第15条)。
 そうすると、現行学習指導要領に準拠した教科書(いま使われている教科書)と次期学習指導要領に準拠した教科書(次の教科書)の使用期間に1年の空白ができることになります。それが2019年度(小)と2020年度(中)ということになり、したがって、今年の小学校教科書と来年の中学校教科書の採択はどうなるのかという問題が生じます。以上を整理すると、下の表のようになります(略)。
 ◆ 小学校教科書の採択変更は基本的にない
 今年は、こうした状況の下で中学校道徳教科書の採択もあるので、ほかにも教科書採択をめぐってとりくみをしなければならないのか、大変だなあとお思いの方もいるでしょう。
 そこで筆者は文科省教科書課に今年の小学校教科書の採択について問い合わせました。回答の要旨は次のような内容でした。
・小学校道徳とそれ以外の教科について、昨年10月に都道府県教育委員会にそれぞれ次のような内容の通知を出した。
道徳昨年と同一の教科書を採択すること。調査研究などは行わず、採択変更は行わないこと。
道徳以外前回(=2014年度)の際の調査研究を参考に適切に採択を行うこと。具体的には調査研究委員会・選定委員会(審議会)等は設置しない。見本本は前回のものを使用する。教科書の変更箇所は文科省のウェブサイトにアップする。
 つまり、道徳もそれ以外も、小学校教科書の採択変更のための手続きはするな、ということです。
 筆者が検索したところでは(2月時点)、すでに小学校教科書採択のための調査研究委員会等は設置しないことを表明している教育委員会がいくつかありました。このニュースが届くころには、同様の措置を取っている教育委員会が多数あると推測します。
 なお、文科省は当該通知についてはウェブサイトにアップしていないとのことです。
 いずれにしても、ほとんどの採択地区では小学校教科書の採択変更は行われないと考えられます。
 教科書採択に関する今年のとりくみとしては、中学校道徳教科書に力を集中すべきでしょう。もちろん例外はありうるので、各地域で教育委員に確認を取ることをお勧めします。
 ◆ デジタル教科書をめぐる法改正
 今国会に著作権法と学校教育法の一部改正案が上程されています。これらは、いよいよ本格化してきたデジタル教科書導入にかかわるものなので、教科書に関連することを簡単に報告しておきます。
 〈著作権法〉
 次期学習指導要領準拠の教科書、具体的には4月に検定申請された次期小学校教科書から、「紙の教科書と同一内容」のデジタル教科書が導入されます。
 これに伴って学校教育法と著作権法の一部が改正されます。いずれも紙媒体のみを対象としていた規定をデジタル教科書にも適用できるようにするための改正です。
 これ自体はデジタル教科書が導入されれば必ず必要になることで、とりたてて問題にするような中味ではないと考えられます。むしろ、特に著作権法については改正されないと多くの矛盾が生じることになります。
 現在発行されている「デジタル教科書」は、「教科書」とはいうものの、検定を経たものではないため、著作権法上、検定教科書とは別の規定によって教科書とは別に支払が発生します。
 著作権法上は、教科書は著作権者に事前に許諾を得ずに掲載することが可能で、著作権者に対しては事後に文化庁が規定する著作権料を支払えばよいことになっています(もっとも、著作権者とのトラブルを避けるため、実際には事前に許諾を得るのが普通ですが)。
 これは通常の著作権使用料に比べれば一般的に廉価に設定されています。

 しかし現行の「デジタル教科書」は、著作権法上は一般の著作物となるため、改めて著作権者の許諾を取り、教科書とは別に二次使用料を支払わなければなりません。
 この場合、著作権者から掲載を拒否される場合があり、また著作物によっては高額の二次使用料を要求される場合もあって、教科書にある写真等が「デジタル教科書」にはないというケースが実際に発生しています。
 「紙の教科書と同一」ということになれば、これでは「学習上の支障」をきたすことになります。
 こうした事情が著作権法改正の背景にあります。ただし、デジタル教科書の作成は任意なので、コストの都合でこれを発行できない教科書会社が採択で不利な立場に置かれる可能性もあります。
 〈学校教育法〉
 学校教育法では二つのことを述べておきたいと思います。
 第一は「教科用図書」の定義にデジタル教科書を加えるための条文内容の改正です。これなしには著作権法改正の根拠がないことになります。
 もう一つは、場合によっては紙の教科書を使わずデジタル教科書のみで授業を行ってもよいとする条文改正です。
 これに伴っていろいろな問題点も発生しうると考えられますが、ここではさしあたり障がいを持った子どもにとって利点があることを指摘しておきたいと思います。
 たとえば弱視の子どもは、見え方はその日の体調によっても変わるそうです。デジタル教科書は、いわば機械が人間の状況に合わせることができます。
 デジタル教科書は、まずもっとも弱い立場に置かれた子どもの利益のために活用されるべきであり、そのように活用されることが望まれます。(よしだのりひろ〉
『子どもと教科書全国ネット21ニュース 119号』(2018.4)

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