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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

八重山教科書:杉並区と横浜市の事例

2011年09月03日 | こども危機
 ◇ 八重山教科書:杉並区と横浜市の事例

 独特の歴史認識、憲法観が貫かれた「新しい歴史教科書をつくる会」系の教科書が、沖縄でも足場を得ようとしている。すでに導入した県外の地域では、首長らの影響力で現場意見を軽視する手法が踏襲された。政治的思惑が見え隠れする状況は八重山地区と重なる。教科書採択をめぐり揺れた東京都杉並区横浜市の事例を取材した。(社会部・新垣綾子)
 8月10日、東京都杉並区の教育委員会。教科書採択審議に市民ら約300人が詰め掛け、20人の傍聴席に入りきれない人たちは別室のスピーカーで会議の様子を聴いた。決定の瞬間、歓声と拍手が、ため息をのみ込んだ。
 同区は2005年と09年に「つくる会」が主導する扶桑社の中学歴史教科書を採択した。しかし今回、来春から4年間使う教科書を帝国書院版に切り替えた
 昨年7月、田中良区長が就任した後、新たに任命された2委員が帝国書院を支持。前回は扶桑社版を選んだ井出隆安教育長も帝国を推し、合議で決まった。
 「区長が交代し、風向きが変わると期待していた。6年は長かったが、運動が実を結んだ」。「つくる会」系教科書に反対する「杉並の教育を考えるみんなの会」の中心メンバー、東本久子さん(64)は、感慨深げに振り返った。
 同区で「つくる会」の教科書が問題化したのは2000年ごろ。教育委員5人のうち3人を交代させる教育委員会人事が持ち上がり、後任にタカ派で知られる弁護士らの名前が挙がったためだ。区議や区民の反発で弁護士の任命は見送られ、01年採択時、扶桑社版は賛成2人で不採択に。しかしその後、山田宏前区長区職員だった側近を教育長に登用したことで、05年採択では賛否の構成が逆転する形になった
 山田前区長は「自虐史観」を批判する「つくる会」の政治路線に近いとされ、靖国神社参拝を支持する番組に出演したこともある。教育問題にも関心を示し、区独自の小学校教師養成塾、杉並師範館を立ち上げた
 元小学校教諭の長谷川和男さん(64)は「師範の言葉自体が戦前を想起させる。教育に自らの政治思想を持ち込もうとしたのは明らかだ」と批判する。師範館は田中区政に移行後の今年3月、閉館した
 ◇ 横浜 前市長の影濃く 歴史・公民で育鵬社
 横浜市は今回、歴史、公民とも育鵬社版を採択した。採択は多数決で、教育委員6人のうち、育鵬社に投票した4人はいずれも中田宏前市長時代に任命された教育委員だった。
 中田前市長は市長辞任後、杉並の山田前区長が党首を務める日本創新党の結成に参加し、代表幹事となった。
 市立学校間の転校の負担軽減などを理由に、前回まで18区あった採択地区を一本化したことで使用冊数は全国一に。「つくる会」系教科書の全国シェアは横浜だけで歴史、公民それぞれ約2%を占めるとの推計もある。
 「横浜が『つくる会』の草刈り場になっている。教育を政治に利用する子ども不在の議論は絶対に許せない」。横浜教科書採択連絡会の佐藤満喜子さん(62)は、憤りを隠せない。「つくる会」系に反対する署名約11万人分が市教委に提出されていたが、その声は届かなかった。
 「将来的には学校単位での教科書選択の可能性も視野に入れて、教科書採択地区の小規模化を検討する」ことは、自民党政権時代に閣議決定されている。それに逆らうような横浜の現状に加え、佐藤さんたちが不信感をあらわにするのは、教員や研究者などでつくる教科書取扱審議会の答申を尊重しなかったこと育鵬社の評価は歴史は7社中5番目、公民は3番目で、教育委員によって上位を飛び越して採用された。
 社会科以外は、審議会が答申した上位評価通りの採択だった。

 学校ごとに教員が協議し、使いたい教科書を推す「学校票」が2001年採択時から廃止された。市立中学の社会科教諭の男性(51)は「学校票がなくなった時、おかしいと思ったが、これが現場の声を聞かず『つくる会』系を採択するための序章になるとは受け止めていなかった」と悔やむ。
 人口約370万人は沖縄県全体の約2・5倍だ。教諭は声を大にする。「同じ横浜でも、都市部もあれば、漁師町も、田んぼが広がる土地もある。それぞれの地域の特色を考慮しない一括採択には、到底納得できない」
 『沖縄タイムス』(2011年9月2日)
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-09-02_22892/

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