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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

愛国心教育に現場は腐心

2020年02月27日 | こども危機
 ◆ 指導が難しい「愛国心教育」
   憲法に抵触する指導要領
(週刊新社会)
教育ジャーナリスト 永野厚男


道徳教育の研究に熱心に取り組む埼玉県の小中教員ら
(2020年1月11日、日本道徳教育方法学会後援の研究会で)

 ◆ 都教委の道徳研究団体が公表
 文部科学省が「大綱的基準として各学校の教育課程編成に法的拘束力あり」とする学習指導要領(以下、指導要領)で強制する、“愛国心”の“指導”に、現場教員は腐心している。
 こんな調査結果が、都教員委員会の研究団体である東京都小学校道徳教育研究会(「都小道」。校長や教諭らで構成)が1月27日、町田市内の小学校で開催した研究発表会で配布した『令和元年度研究集録』(以下、『研究集録』)によつて、明らかになった。
 「都小道」は、2019年6・7月、アンケート調査を実施。都の各地区の教員1341人から得た回答結果を『研究集録』で公表した。
 「教師が道徳科の授業で指導が難しいと感じる内容項目」で、“愛国心”は二番手の36%だった(一番手は「感動、畏敬の念」の55%、三番手は「真理の探究」の33%)。
 『研究集録』はこれら3つの割合が高い原因を、①普段の学校生活・学習活動等で、教師も児童も意識する機会が少ない、②自分自身への振り返りが難しいから、などと「考察」している。
 しかし、文科省が求める“愛国心”教育は、この「考察」を超え、戦前・戦中の自己犠牲の精神の植え付け、即ち“国防”教育とイコールの政治・イデオロギー色が濃いものだ。
 現に、第一次安倍政権が改定した教育基本法を審議した、06年11月27日の参院特別委員会で自民党・岡田直樹議員の質問に、当時の伊吹文明・文部科学相は、
 「改定教育基本法の“国を愛する態度”=自民党改憲案の“日本国民は、帰属する国を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有する”」旨の答弁をしている。
 ◆ 指導要領の愛国心削除を

 小学校指導要領は3年生以上で“愛国心”を強制し続けてきたが、文科省は道徳教科化を決定した15年3月の改訂で、1年生にまでキーワードの項で“愛国心”を強制
 この指導要領初適用の教科書検定で、東京書籍の小1道徳教科書を「パン屋→和菓子屋」と“修正”させた。
 「考え議論する道徳」はキャッチフレーズだけなのだ。

 改訂指導要領の小学校5・6年の、“愛国心”の文言は「我が国や郷土の伝統と文化を大切にし、先人の努力を知り、国や郷土を愛する心をもつこと」だ。
 この後段の「国を愛する心をもつこと」は、「(国家権力は個々人の)思想・良心の自由を侵しではならない」と規定した憲法第19条に違反する、特定の価値観の押し付けだ。
 立憲野党が政権を取り、後段の「国や」の2文字を削除すれば(もちろん教育基本法を元に戻すことも必要)、国家主義や自己犠牲につながる危惧はかなり解消する、と私は考える。この指導要領の前段を活かした、まともな授業も現にあるからだ。
 「都小道」が18年1月29日、世田谷区立松丘小で開催した公開授業では、風呂敷など「伝統と文化」を学び、理解を深める授業を行い、“愛国心”の強制はなく、多様な意見が出て、ワークシートに「国際理解」に視野を広げる記述をする児童もおり、父母や研究者が安心して参観していた。
 ◆ ゴリゴリの思想教育

 一方、参観者が辟易する“愛国心”ゴリゴリの授業も少なくない。
 都教委主任指導主事出身の持田浩志氏が教育長だった武蔵村山市教委(社会・道徳で日本会議メンバーら執筆の教科書を採択)が市立小中4校にやらせてきた、「我が国を愛する態度を育てる」テーマの道徳公開授業(第十小を会場に、4校の児童・生徒を集めた合同授業)を、私は10年1月取材した。
 4年生の教室では、男性教員が「平成5年、サッカー日本代表チームに選出された中山雅史選手」の自作教材を使い、「日本人を代表してやる試合や大会の始めに必ず国歌を歌う。胸に手を当て、国の代表として堂々と歌います」と朗読。すると、男児が間髪入れず「国歌・君が代です」と応じた。
 同教員は「平成10年の試合で中山選手は腕を骨折したが、最後まで戦い、W杯で日本の初得点を得た。なぜ最後まで戦ったか?」と発問。
 普通の児童なら「チームやファンのため」と答えるが、同教員は「青いユニフォームの国旗の重要性に触れる」と明記した指導案通り、「国のために戦いました」という答えに誘導した
 授業終了後、父母・研究者らは「骨折しても戦い続けるのを美化すること自体、教育上不適切。指導案には『我が国を誇りに思う心情が高まったか』が評価規準とある。憲法19条違反の偏向教育だ」と語り合っていた。
 ◆ 自尊感情高める教育を

 『研究集録』は124校の3~6年生1万2785人への調査で「自分のことが、とても&まあまあ好き」の計が、「3年は79%、4年は77%、5年は72%、6年は65%」だと掲載。
 この自尊感情・自己肯定感の「低さ」は、日本の学校で学ぶ子どもたちの謙虚さや、学年が進むにつれ、算数など勉強が難しくなる等の要因もある。
 不合理な校則での管理強化も起因していよう。
 だが、国立青少年教育振興犠等の調査も同様に「低い」傾向であり、全国の青少年に共通の問題だ。
 「個人の尊厳」より「国家」の方を優先させる自民改憲案流の“愛国心”教育を排除し、生命・人権尊重の道徳教育を充実させられれば、児童・生徒の自尊感情・自己背定感は高められる、と考える。
『週刊新社会』(2020年2月18日)


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