《第4回「日の丸・君が代」問題等全国学習・交流集会 記録集から》
◎ 実教教科書の「強制」の表現は、検定基準に照らせば問題のない記述!!
● 4,教科書採択関係の質問
(1)教員の教科書を選ぶ職務について
① 教科書の選定にあたっては、調査・選定の委員会が地教委や学校ごとに置かれているが、それらの調査・選定の作業の状況をどこまで把握しているか。
(岩岡) 教科書の採択は、我が国の法制上、住民に対してきちんと責任をもって行われるよう、教育委員会の権限というふうになっており、自治事務ではあるが、文科省としても、教科書採択の状況について、毎年度、必要に応じて都道府県教育委員会に対して聞いたりして、状況把握に努めており、不十分と言われることもあるが、適切に状況把握を行っている。
② また、その作業がユネスコの「勧告」61項の趣旨で適切に行われてきたと認識しているか。
(岩岡) ユネスコの勧告の各項目の内容は尊重されるべきだと考えるが、我が国の実情や法制に適合した方法で、取り組んでいくものと考える。我が国では、教育委員会に権限があるので、教育委員会が決めた、採択のやり方、計画の枠内にで、教員の皆さん方にも、義務教育であれば選定の委員、高校であれば採択における調査研究に参画していただいている。趣旨に照らして、適切に実施されていると考えている。
③ 教科書の採択は、子どもの学習する権利に対応してその充足をはかりうる立場にあるものの責務の一部と考えられるが、個々の教員にはその責務は与えられていないのか。
(岩岡) 最高裁判例を引いていただいているが、もちろん子どもの教育には、その充足を図りうる立場にある行政また親、教員のみなさんはもちろん、皆に責務があるものと我々も考えている。
(2)東京都教育委員会の教科書採択介入に関して
① 当該教科書中の「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」という記述は、事実か事実に反しているか。
② 最高裁判決で「職務命令」が合憲と認められたとあるが、命令とは「強制」にあたらないとする解釈は適正か。
(岩岡) ①②合わせて回答する。国旗掲揚及び国歌斉唱については、『学習指導要領』に基づいて、教育委員会、学校において適切に指導すべきもので、教職員に対して権限のある校長が職務命令出した場合、それに従うべきものである。こうした権限のあるものによる職務命令は当然一定の強制性がある。我々も上司から、何かの資料をつくりなさい、会議に出席しなさい、と言われたら当然それは、強制性がある。こうした事例について、強制という表現を使用することは、必ずしも誤りでない、ということから、検定では、許容されたということである。
命令は強制当たらないとする東京都の立場が適正かに関しては、我が国においては、検定で合格した複数の図書の中からどれが最も都道府県またその自治体の実情に添っているか採択するのを自治体に委ねている制度なので、検定合格した教科書の個々の記述を採択に当たってどう評価するか、ということは採択権者の判断なのので、コメントを控えさせていただく。
Q(東京A2): 実教出版の教科書は、文科省が定めている高等学校教科用図書検定基準に違反している部分はない、というふうに確認していいか、イエスかノーかで答えられたい。
A(岩岡): 実教の教科書について、検定に合格した、検定基準に照らせば問題のない記述であると考えている。
※「強制」の表現は、検定基準に照らせば問題のない記述!!
③ 『学習指導要領』のいわゆる国旗国歌条項は「指導するものとする」であって、教員自身の起立斉唱について明文的に定めていない、という理解で間違いないか。
(磯谷) すでに、国旗国歌の式典等での取り扱いについては、1(3)でも申し上げたが、例えば、教員の起立斉唱を含めて、どのような形で国旗掲揚あるいは国歌斉唱を行うかは、一般的な社会的通念に従った方法で、学校を所管する教育委員会あるいは各学校の校長が、適切に判断するものと考えている。
④ 教育委員会が、その「考え方」と異なるという価値判断を伴う理由で、検定済み教科書の一部を予め排除する命令を出すことができるか。出来るとすれば、その法的根拠は何か。
⑤ 各高校が、校内の「選定審議会」等公正な手続を経て、教育課程と生徒の実態に即して選んだ検定済み教科書を、教育委員会が予め示した「見解」に反するという理由で採択を禁止することは許されるのか。許されるとしたら、その法的根拠は何か。
(岩岡) 公立高校において使用する教科書について、検定合格した教科書の中からいずれを選ぶか、ということに関しては、『地教行法』23条6号に基づいて、学校の設置者である教育委員会にある、とある。今回のような事例については、権限と責任を有する教育委員会として判断されたということである。
質疑 (地教行法23条6号について)
Q(神奈川O): 文科省は、高等学校の教科書の採択方法について、法令上具体的な定めはない、と明言している。にも関わらず『地教行法』23条6項に採択権限が書いてあるというのは間違いだ。
A(岩岡): 文科省が、高等学校の教科書採択について、法令上の定めがないと言っていることと、『地教行法』に書いてあることと、矛盾しているのではないかというご質問いただいたが、法令上具体的な定めがないというのは、手続きについて定めがない、ということで、記者さんからのお問い合わせに対してもそのようにお答えしている。
教科書採択は、『地教行法』23条6号に照らして、教育委員会に属するというのが、政府としての公式見解である。職務権限として、「教科書その他教材の取り扱いに関することについて」と、23条6号に記載してある。
Q(神奈川O): 『地教行法』23条には「事務」以外は書いてない。
A(岩岡): 「取り扱い」というのが採択も含めてすべて含んでいる概念である。採択というのは、あくまでも教科書に関する「事務」である。
質疑 (生徒の実態に即した教科書採択について)
Q(東京Y): (2)⑤で、各校が、校内の選定委員会と公正な手続きを経て、教育課程と生徒の実態に即して、各学校は実教出版を選んだのに、それを教育委員会が、「君が代」の記述の問題で、勝手に変えてしまうというのは、生徒の実態に即さない。結局、政治的な判断だけだ。(1)③子どもの学習する権利も侵している。
A(岩岡): 教科書採択は、我が国では、直接子供たちに当たっている専門的な知見をお持ちの教員の専門的な考え方と、あとは、教育委員会のレーマンによる判断と、そのようなものをきちんと併せて、レーマンで最終的に判断することになっている。だから、生徒の実態というのはもちろん重要な観点と思うが、それを加味した上で教育委員会が最終的に採択する権限を持っている。教育委員会としては、生徒の実態も踏まえた上で、教科書を採択する、もしくは採択しないということを、判断することだと思う。我々として、特に指導する必要はないと思っている。
Q(東京Y): 東京も神奈川も、事務局の指導課が勝手にやっていて、レーマンじゃない。
A(岩岡): 教育委員会と事務局の間で、どういう役割分担をするかということは、教育委員会規則であるとか、専決規定で、どういう定めをしているかによる。事務局と委員との関係で、どう整理されているかということだと思う。
⑥ これは「検閲」(憲法21条2項)に当たるのではないか。
(岩岡) 第三次家永訴訟平成9年8月の最高裁において示された観点に照らすと、教科書検定は、一般図書としての発行を何ら妨げるものではないこと、発表の禁止目的、発表前の審査などの特質がないことから、検閲に当たらない。この観点に照らすと、教科書の採択は、一般図書としての特定の図書の発行を妨げたりするものではないので、検閲に当たるとは考えていない。
⑦ 大阪府、神奈川県などでも同様の動きがあるが、このままでは全国一律の教育内容を確保するという文科省の「検定基準」が否定されることにならないか。
⑧ 東京都など一部自治体で、検定済み教科書を二重に検定するような動きが広がっていることについて、監督官庁である文科省の今後の対応を明らかにされたい。
(岩岡) 検定に合格した複数の図書の中からどれを選ぶかというのを、採択するという、元々そういう二段の構成になっており、特定の教科書を採択しないという判断をすること、特定の教科書を採択するとの判断は、表裏一体であり、それが行われたからと言って、検定を否定するものだとは、我々は考えていない。
質疑 (神奈川の教科書採択について)
Q(神奈川O): 神奈川では、7月24日、実教出版を使いたいと希望を出した高等学校28校に対して、教育委員会の事務局は、委員会の承諾を得ず、公開の場でやらず、独自に判断して、「街宣車が来る可能性がある」などと言って校長を脅し、校長は職員に対してまた脅して、反対を押し切って変えさせた。これについてどのような見解を持っているか。さらに、街宣車が来るとは言っていない、と嘘を付いている。こういったいきさつについてどうか。
A(岩岡): 神奈川県が、学校長に対して実教の教科書を戻させたということを、我々も把握している。まさにそれは、採択権を有する教育委員会がどういうふうに採択していくか、自治事務の中できちんと住民との間で説明していくことだと考えている。文科省として、採択の事務に関して、適否を今の段階で申し上げることはないが、教育委員会に対して、適切な採択であるのかを、住民としてきちんと追求をするなり、説明を求めることは、必要だと思う。
Q(大阪I): 文科省から、文書で「指示」が出ているではないか。詳細な指示に従って採択することになっている。逸脱ではないか。全部自治体でやっていいことになれば、文科省の指示は全く無意味ということになる。
A(岩岡): 文科省は、十分な調査研究に基づき、例えば、教科書の内容だけではなく、賄賂であるとか、そういったものに基づいて、教科書の採択が行われることのないように、法律違反になるので、きちんと十分な内容の調査研究に基づいて、採択してくださいと申し上げている。
Q(神奈川O): 街宣車が来る、というやり方、それは果たして認められるのか。恐喝ではないか。
A(岩岡): なんども申し上げますが、自治事務の範囲内なので、そういったやり方が、住民の方々の間で理解が得られるように、住民の方との間で説明責任をきちんと果たしていただく、ということだと理解している。
質疑 (大阪の教科書採択について)
Q(大阪T): 教科書採択について府教委事務局の越権行為が判明した。5月17日大阪府教育委員会会議で中原教育長は、教科書採択に関しては『地教行法』27条により、教科書の内容には立ち入ることはない、あくまで手続き・ルールについて教育長の専決事項として行いたい、とはっきり言った。ところが、大阪府教育委員会は、教育委員会会議に一切かけることなく、実教出版の教科書の記述すなわち内容に関して一面的であるとして、事実上採用すべきじゃないという見解を載せた。8月21日私たちは府教委と応接して、はっきりと、教育内容に関することも、教育長の専決事項と聞いた。これっておかしい。テープも残っている。この越権行為について調査をお願いする。
A(岩岡): 我々としては、教育委員会の責任と権限で、十分な教科書の調査研究を行った上で採択をしてくださいと言っているので、大阪の話で、記述の内容に関して、教育委員会の方で評価をすること自体問題はないと思う。だから、教育長が、教育内容に触れない方針であると言ったのは、その時言ったのかもしれないが、それが果たして我々の指導に沿っているかというと、そうではないし、今の実態として、記述内容に関して、調査研究の上で、何かしらの判断をしていることだと思いうので、調査する事案ではない。
Q(大阪T): 文科省がそういう立場に立たれるんだったら、大阪府のHPに5月の大阪府教員委員会議事録に中原教育長の発言が載っているので、それは間違いだという指導をなさるのか。
A(岩岡): それは拝見するが、最終的にどういった調査研究をして、教科書を採択するかの結果だと思うので、その一つ一つのプロセスに対してすべて口を出していく性質のものではないと思う。それはまさに自治事務だ。
Q(大阪T): しかし、指導助言の立場にあるのではないか。教科書採択に関して、納得行かないことが多々あるので、きちっと調査してください。そして回答ください。
A(岩岡): 教科書採択がどのように行われているか、ということに関しては、必要に応じてこちらも情報を集めているし、各県にも直接話を聞いているところでもあり、引き続き状況把握はしていきたいと思う。
(3)自民党教育再生実行本部の中間まとめは、教科書検定制度そのものを否定するもので、教育に対する政治の介入ではないか。
(岩岡) 検定というのは、学校教育法により、文部科学大臣が行うものとされている。基準は、文部科学大臣が定める。法律に基づいた行政行為である。法律に基づいた行政行為の実施に当たって、立法者である議員または党が考えをまとめて提言を行うということは当然立法者としては、あるものと考えている。こうしたご指摘も、踏まえながら、よりよい検定の実施に努めて行きたいと思います。
(続)
◎ 実教教科書の「強制」の表現は、検定基準に照らせば問題のない記述!!
● 4,教科書採択関係の質問
(1)教員の教科書を選ぶ職務について
① 教科書の選定にあたっては、調査・選定の委員会が地教委や学校ごとに置かれているが、それらの調査・選定の作業の状況をどこまで把握しているか。
(岩岡) 教科書の採択は、我が国の法制上、住民に対してきちんと責任をもって行われるよう、教育委員会の権限というふうになっており、自治事務ではあるが、文科省としても、教科書採択の状況について、毎年度、必要に応じて都道府県教育委員会に対して聞いたりして、状況把握に努めており、不十分と言われることもあるが、適切に状況把握を行っている。
② また、その作業がユネスコの「勧告」61項の趣旨で適切に行われてきたと認識しているか。
(岩岡) ユネスコの勧告の各項目の内容は尊重されるべきだと考えるが、我が国の実情や法制に適合した方法で、取り組んでいくものと考える。我が国では、教育委員会に権限があるので、教育委員会が決めた、採択のやり方、計画の枠内にで、教員の皆さん方にも、義務教育であれば選定の委員、高校であれば採択における調査研究に参画していただいている。趣旨に照らして、適切に実施されていると考えている。
③ 教科書の採択は、子どもの学習する権利に対応してその充足をはかりうる立場にあるものの責務の一部と考えられるが、個々の教員にはその責務は与えられていないのか。
(岩岡) 最高裁判例を引いていただいているが、もちろん子どもの教育には、その充足を図りうる立場にある行政また親、教員のみなさんはもちろん、皆に責務があるものと我々も考えている。
(2)東京都教育委員会の教科書採択介入に関して
① 当該教科書中の「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」という記述は、事実か事実に反しているか。
② 最高裁判決で「職務命令」が合憲と認められたとあるが、命令とは「強制」にあたらないとする解釈は適正か。
(岩岡) ①②合わせて回答する。国旗掲揚及び国歌斉唱については、『学習指導要領』に基づいて、教育委員会、学校において適切に指導すべきもので、教職員に対して権限のある校長が職務命令出した場合、それに従うべきものである。こうした権限のあるものによる職務命令は当然一定の強制性がある。我々も上司から、何かの資料をつくりなさい、会議に出席しなさい、と言われたら当然それは、強制性がある。こうした事例について、強制という表現を使用することは、必ずしも誤りでない、ということから、検定では、許容されたということである。
命令は強制当たらないとする東京都の立場が適正かに関しては、我が国においては、検定で合格した複数の図書の中からどれが最も都道府県またその自治体の実情に添っているか採択するのを自治体に委ねている制度なので、検定合格した教科書の個々の記述を採択に当たってどう評価するか、ということは採択権者の判断なのので、コメントを控えさせていただく。
Q(東京A2): 実教出版の教科書は、文科省が定めている高等学校教科用図書検定基準に違反している部分はない、というふうに確認していいか、イエスかノーかで答えられたい。
A(岩岡): 実教の教科書について、検定に合格した、検定基準に照らせば問題のない記述であると考えている。
※「強制」の表現は、検定基準に照らせば問題のない記述!!
③ 『学習指導要領』のいわゆる国旗国歌条項は「指導するものとする」であって、教員自身の起立斉唱について明文的に定めていない、という理解で間違いないか。
(磯谷) すでに、国旗国歌の式典等での取り扱いについては、1(3)でも申し上げたが、例えば、教員の起立斉唱を含めて、どのような形で国旗掲揚あるいは国歌斉唱を行うかは、一般的な社会的通念に従った方法で、学校を所管する教育委員会あるいは各学校の校長が、適切に判断するものと考えている。
④ 教育委員会が、その「考え方」と異なるという価値判断を伴う理由で、検定済み教科書の一部を予め排除する命令を出すことができるか。出来るとすれば、その法的根拠は何か。
⑤ 各高校が、校内の「選定審議会」等公正な手続を経て、教育課程と生徒の実態に即して選んだ検定済み教科書を、教育委員会が予め示した「見解」に反するという理由で採択を禁止することは許されるのか。許されるとしたら、その法的根拠は何か。
(岩岡) 公立高校において使用する教科書について、検定合格した教科書の中からいずれを選ぶか、ということに関しては、『地教行法』23条6号に基づいて、学校の設置者である教育委員会にある、とある。今回のような事例については、権限と責任を有する教育委員会として判断されたということである。
質疑 (地教行法23条6号について)
Q(神奈川O): 文科省は、高等学校の教科書の採択方法について、法令上具体的な定めはない、と明言している。にも関わらず『地教行法』23条6項に採択権限が書いてあるというのは間違いだ。
A(岩岡): 文科省が、高等学校の教科書採択について、法令上の定めがないと言っていることと、『地教行法』に書いてあることと、矛盾しているのではないかというご質問いただいたが、法令上具体的な定めがないというのは、手続きについて定めがない、ということで、記者さんからのお問い合わせに対してもそのようにお答えしている。
教科書採択は、『地教行法』23条6号に照らして、教育委員会に属するというのが、政府としての公式見解である。職務権限として、「教科書その他教材の取り扱いに関することについて」と、23条6号に記載してある。
Q(神奈川O): 『地教行法』23条には「事務」以外は書いてない。
A(岩岡): 「取り扱い」というのが採択も含めてすべて含んでいる概念である。採択というのは、あくまでも教科書に関する「事務」である。
質疑 (生徒の実態に即した教科書採択について)
Q(東京Y): (2)⑤で、各校が、校内の選定委員会と公正な手続きを経て、教育課程と生徒の実態に即して、各学校は実教出版を選んだのに、それを教育委員会が、「君が代」の記述の問題で、勝手に変えてしまうというのは、生徒の実態に即さない。結局、政治的な判断だけだ。(1)③子どもの学習する権利も侵している。
A(岩岡): 教科書採択は、我が国では、直接子供たちに当たっている専門的な知見をお持ちの教員の専門的な考え方と、あとは、教育委員会のレーマンによる判断と、そのようなものをきちんと併せて、レーマンで最終的に判断することになっている。だから、生徒の実態というのはもちろん重要な観点と思うが、それを加味した上で教育委員会が最終的に採択する権限を持っている。教育委員会としては、生徒の実態も踏まえた上で、教科書を採択する、もしくは採択しないということを、判断することだと思う。我々として、特に指導する必要はないと思っている。
Q(東京Y): 東京も神奈川も、事務局の指導課が勝手にやっていて、レーマンじゃない。
A(岩岡): 教育委員会と事務局の間で、どういう役割分担をするかということは、教育委員会規則であるとか、専決規定で、どういう定めをしているかによる。事務局と委員との関係で、どう整理されているかということだと思う。
⑥ これは「検閲」(憲法21条2項)に当たるのではないか。
(岩岡) 第三次家永訴訟平成9年8月の最高裁において示された観点に照らすと、教科書検定は、一般図書としての発行を何ら妨げるものではないこと、発表の禁止目的、発表前の審査などの特質がないことから、検閲に当たらない。この観点に照らすと、教科書の採択は、一般図書としての特定の図書の発行を妨げたりするものではないので、検閲に当たるとは考えていない。
⑦ 大阪府、神奈川県などでも同様の動きがあるが、このままでは全国一律の教育内容を確保するという文科省の「検定基準」が否定されることにならないか。
⑧ 東京都など一部自治体で、検定済み教科書を二重に検定するような動きが広がっていることについて、監督官庁である文科省の今後の対応を明らかにされたい。
(岩岡) 検定に合格した複数の図書の中からどれを選ぶかというのを、採択するという、元々そういう二段の構成になっており、特定の教科書を採択しないという判断をすること、特定の教科書を採択するとの判断は、表裏一体であり、それが行われたからと言って、検定を否定するものだとは、我々は考えていない。
質疑 (神奈川の教科書採択について)
Q(神奈川O): 神奈川では、7月24日、実教出版を使いたいと希望を出した高等学校28校に対して、教育委員会の事務局は、委員会の承諾を得ず、公開の場でやらず、独自に判断して、「街宣車が来る可能性がある」などと言って校長を脅し、校長は職員に対してまた脅して、反対を押し切って変えさせた。これについてどのような見解を持っているか。さらに、街宣車が来るとは言っていない、と嘘を付いている。こういったいきさつについてどうか。
A(岩岡): 神奈川県が、学校長に対して実教の教科書を戻させたということを、我々も把握している。まさにそれは、採択権を有する教育委員会がどういうふうに採択していくか、自治事務の中できちんと住民との間で説明していくことだと考えている。文科省として、採択の事務に関して、適否を今の段階で申し上げることはないが、教育委員会に対して、適切な採択であるのかを、住民としてきちんと追求をするなり、説明を求めることは、必要だと思う。
Q(大阪I): 文科省から、文書で「指示」が出ているではないか。詳細な指示に従って採択することになっている。逸脱ではないか。全部自治体でやっていいことになれば、文科省の指示は全く無意味ということになる。
A(岩岡): 文科省は、十分な調査研究に基づき、例えば、教科書の内容だけではなく、賄賂であるとか、そういったものに基づいて、教科書の採択が行われることのないように、法律違反になるので、きちんと十分な内容の調査研究に基づいて、採択してくださいと申し上げている。
Q(神奈川O): 街宣車が来る、というやり方、それは果たして認められるのか。恐喝ではないか。
A(岩岡): なんども申し上げますが、自治事務の範囲内なので、そういったやり方が、住民の方々の間で理解が得られるように、住民の方との間で説明責任をきちんと果たしていただく、ということだと理解している。
質疑 (大阪の教科書採択について)
Q(大阪T): 教科書採択について府教委事務局の越権行為が判明した。5月17日大阪府教育委員会会議で中原教育長は、教科書採択に関しては『地教行法』27条により、教科書の内容には立ち入ることはない、あくまで手続き・ルールについて教育長の専決事項として行いたい、とはっきり言った。ところが、大阪府教育委員会は、教育委員会会議に一切かけることなく、実教出版の教科書の記述すなわち内容に関して一面的であるとして、事実上採用すべきじゃないという見解を載せた。8月21日私たちは府教委と応接して、はっきりと、教育内容に関することも、教育長の専決事項と聞いた。これっておかしい。テープも残っている。この越権行為について調査をお願いする。
A(岩岡): 我々としては、教育委員会の責任と権限で、十分な教科書の調査研究を行った上で採択をしてくださいと言っているので、大阪の話で、記述の内容に関して、教育委員会の方で評価をすること自体問題はないと思う。だから、教育長が、教育内容に触れない方針であると言ったのは、その時言ったのかもしれないが、それが果たして我々の指導に沿っているかというと、そうではないし、今の実態として、記述内容に関して、調査研究の上で、何かしらの判断をしていることだと思いうので、調査する事案ではない。
Q(大阪T): 文科省がそういう立場に立たれるんだったら、大阪府のHPに5月の大阪府教員委員会議事録に中原教育長の発言が載っているので、それは間違いだという指導をなさるのか。
A(岩岡): それは拝見するが、最終的にどういった調査研究をして、教科書を採択するかの結果だと思うので、その一つ一つのプロセスに対してすべて口を出していく性質のものではないと思う。それはまさに自治事務だ。
Q(大阪T): しかし、指導助言の立場にあるのではないか。教科書採択に関して、納得行かないことが多々あるので、きちっと調査してください。そして回答ください。
A(岩岡): 教科書採択がどのように行われているか、ということに関しては、必要に応じてこちらも情報を集めているし、各県にも直接話を聞いているところでもあり、引き続き状況把握はしていきたいと思う。
(3)自民党教育再生実行本部の中間まとめは、教科書検定制度そのものを否定するもので、教育に対する政治の介入ではないか。
(岩岡) 検定というのは、学校教育法により、文部科学大臣が行うものとされている。基準は、文部科学大臣が定める。法律に基づいた行政行為である。法律に基づいた行政行為の実施に当たって、立法者である議員または党が考えをまとめて提言を行うということは当然立法者としては、あるものと考えている。こうしたご指摘も、踏まえながら、よりよい検定の実施に努めて行きたいと思います。
(続)
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