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パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

河原井・根津裁判控訴審逆転勝訴判決:根津報告

2015年06月04日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 ☆ まさか!の勝利判決
   2007年「君が代」不起立停職6ヶ月処分取り消し控訴審
根津公子

 「過去の処分歴」を理由に06年停職3ヶ月処分を適法とした2012年最高裁判決。そして、その後、05年の減給6ヶ月・停職1ヶ月処分も、さらには本件地裁判決も「過去の処分歴」で処分を適法とされてきた私は、生きているうちに勝利判決を手にすることができるとは考えてもいませんでした。
 法廷で冒頭、須藤典明裁判長が「主文を読み上げ、その後理由を言います」と言い、「主文 控訴人らの敗訴部分を取り消す。」と言った時に、河原井さんの損害賠償請求が認められたんだとしか、受け取ることができませんでした。
 続けて裁判長は、「控訴人根津に対してした平成19年3月30日付け処分を取り消す。被控訴人(都教委)は、控訴人河原井に対し、10万円及びこれに対する平成19年3月30日から支払い済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
 被控訴人は、控訴人根津に対し、10万円及びこれに対する平成19年3月30日から支払い済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。被控訴人の控訴を棄却する。」と言ったのですが、それでも、聞き間違い?と半信半疑で、弁護士たちの顔を覗き込みました。
 でも、弁護士3人も喜びの表情ではありませんでした。裁判長は続けて、判決の理由を法廷内の人たちの顔を見渡しながら平易な言葉で丁寧に説明しました。10分以上の時間だったでしょうか。処分取り消しになったんだよね、と自分に確認しながら裁判長の話を聞きましたが、閉廷後、弁護士たちも裁判長の言葉をにわかには信じることができなかったと言っていました。
 この裁判は2007年河原井さん・停職3ヶ月処分損害賠償請求(処分自体は地裁で取り消し)と、根津・停職6ヶ月処分の取り消しと損害賠償請求の控訴事件です。地裁は根津の処分については「過去の処分歴等」を使って適法としたものでした。
 この判決を一言で言うならば、「職務命令は合憲」「根津に対する停職3ヶ月処分は適法」とした2012年最高裁判決を基本に据えて、「過去の処分歴」という理由があったから停職3ヶ月は適法だが、06年停職3ヶ月処分から本件停職6ヶ月処分までの1年間に累積加重処分をすべき理由はなく、したがって、処分は停職3ヶ月に留めるべきであり、停職6ヶ月処分は裁量権の濫用で違法となる。損害賠償金各10万円の支払いを命じたのは、「処分取り消しによる返金でいい」と都教委は言うが、それでは精神的苦痛は慰謝されない、というものでした。
 判決文には目障りな文言が散見されますし、完全勝訴ではありませんが、2012年最高裁判決に立ったこの判決は、最高裁が都教委の「上告」を受理しにくいような骨組みになっています。政治的判断を悪く働かせない限り、最高裁はこの判決を否定できないと思います。
 同一の「過去の処分歴等」(『等』は不起立前後の態度等を含む)を繰り返し使い、例外的に根津だけに累積加重処分を適法としてきた判決や田中聡史さんへの累積加重処分などに、多少でも歯止めをかけることになるとも思います。
 「自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては、自らの思想や信条を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一の選択を迫られることとなり、…日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながる」との判示は、これまでの最高裁判決が、思想・良心の「間接的制約」としてきたことを超えるものです。
 免職だけでなく、免職の恐れを持たせることを違法としています。田中聡史さんや「3回目は免職もある」と記した大阪の「警告書」交付に警告を与え、少なくとも処分は停職3ヶ月以下にとどまらせることになります。そのことが最もうれしいことです。
 2015年に減給6ヶ月・停職1ヶ月処分を受けたときから、とりわけ、停職6ヶ月処分を受けた2007年から定年退職の2011年まで私は免職の恐れに脅かされ続けてきたので、免職はない、最低限の収入があるということは、精神的にどんなにか救われると思うのです。
 これで初めて、私は減給以上の処分が取り消しになった人たちとほぼ同じ地点に立てることになり、「起立を求める職務命令自体が違憲違法」であることに主張の力点を移すことができます。
 この判決を最高裁で覆させないよう、主張し働きかけをしていきたいと思います。NHKが報道したことは、世論を読むだろう最高裁への働きかけになったかも・・・と思います。
 ■ここからは判決文をたどっていきます。詳しく知りたい方は、続けてお読みください。
 1.停職6ヶ月処分の違法について
 ①停職期間の決め方について


 「停職期間の選択については、過去の非違行為による懲戒処分の処分歴や不起立前後における態度等も踏まえて、学校の規律や秩序を保持する必要性と処分によって被処分者が被る不利益の内容との権衡を十分に検討して、当該停職期間を選択することに相当性や合理性を基礎づける具体的な事情が認められることが必要
 ②都教委が「具体的な事情」として挙げたア.過去の処分歴、イ.停職中に校門前に立ったことや新聞で不起立を呼びかけたことについては、
 「上記の行為を勤務時間中に勤務場所で行ったのではなく、これらの行為によって具体的に学校の運営が妨害されたような事実はなく、…控訴人根津自身の歴史観や世界観に基づく思想等の表現活動の一環としてなされたというべきであるから、…これらの行為を行ったことを、…停職期間の加重を基礎づける具体的な事情として大きく評価することは、思想及び良心の自由や表現の自由を保障する日本国憲法の精神に抵触する可能性があり、相当ではないというべき」とした。
 ③停職3ヶ月と停職6ヶ月との大きな違いについて、

 「職員の懲戒に関する(都の)条例によれば、停職期間の上限は6月とされていて、停職期間を6月とする本件根津停職処分を科すことは、控訴人根津が更に同種の不起立行為を行った場合に残されている懲戒処分は免職だけであって、次は地方公務員である教員としての身分を失うおそれがあるとの警告を与えることとなり、その影響は、単に期間が倍になったという量的な問題にとどまるものではなく、身分喪失の可能性という著しい質的な違いを控訴人根津に対して意識させざるを得ないものであって、極めて大きな心理的圧力を加える結果になるものであるから、十分な根拠をもって慎重に行われなければならないものというべきである。」
 ④上記の①~③を慎重に検討した結果として、停職6ヶ月処分を違法とした。

 「控訴人根津において過去に懲戒処分や文書訓告の対象となったいくつかの行為は、既に前回根津停職処分において考慮されている上、本件根津不起立は、以前に行われた掲揚された国旗を下ろすなどの積極的な式典の妨害行為ではなく、国歌斉唱の際に着席したという消極的な行為であって、気分を害した参加者がいることは否定できないものの、その限度にとどまるもので、特に式典が混乱したこともないから、停職期間3月という前回根津停職処分を更に加重しなければならない個別具体的な事情は見当たらないというべきであって、控訴人根津がこれまでにも同種の行為を繰り返していることを考慮したとしても、前回根津停職処分の3月の停職期間を超える処分を科すことを正当なものとすることはできないというべきである。」
 「以上によれば、本件根津停職処分において停職期間を6月とした都教委の判断は、具体的に行われた非違行為の内容や影響の程度等に鑑み、社会通念上、行為と処分との均衡を著しく失していて妥当性を欠くものであり、懲戒権者としての都教委に与えられている裁量権の合理的な範囲を逸脱してなされたものといわざるを得ず、違法なものというべきである。」
 2.河原井・根津の本件処分についての都教委の過失の有無について(過失があれば、国賠法1条による損害賠償が認められる)
 ①事実認定として、次のア~ウをあげた。
 ア.都教委が作成した本件指導資料には「処分についてはその裁量権が濫用されることがあってはならない」等の国会答弁が掲載されている。
 イ.都教委の標準処分量定を体罰の事案についてみると、「体罰の回数に応じて機械的に一律に処分を加重していくという運用はしていない。」
 ウ.しかし、「君が代」不起立については機械的な運用をしており、アやイの趣旨に反する。
 ②「ついには免職処分を受けざるを得ない事態に至って、自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては、自らの思想や信条を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一の選択を迫られることとなり、…日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながる」
 ③しかし、原判決では上記①②について、「慎重に検討されたことを認めるに足りる的確な証拠はない。」(国会答弁の内容やその趣旨について、「都教委関係者は当然に理解しておくべきもの」ともいう)。従って、都教委が「注意義務を尽くしたともいえない
 ④そこで、慰謝料の額についての検討となる。
 停職処分は経済的不利益があるだけでなく、処分を受けたことが外部からも認識される。授業ができないことにより、「児童生徒との継続的な人格的触れ合いをすることもできなくなり、ひいては教育活動に欠かすことにできない児童生徒との信頼関係の維持にも悪影響を及ぼすおそれがあり、…控訴人らは精神的な苦痛も受けているというべきである。しかも、控訴人らは、…復職しても、児童生徒との間で当然に信頼関係が回復されるわけではなく、控訴人らにおいて児童生徒との信頼関係を再構築して、再び円滑に人格的な接触を図ることができるようになるまでには、やはり精神的な苦痛を受け、…。総合的に判断するならば、本件各処分によって控訴人らが被った上記のような精神的苦痛は、本件処分が取り消されたことによって図られる財産的な損害の回復によって当然に慰謝されて回復することになるものではない」として、各10万円の損賠を相当とした。
 ■都教委はこの判決を不服として上告するでしょうから、気を抜くことはできませんが、ひとまず、皆さんのこれまでのご支援に感謝を申し上げます。そして、引き続き、ご支援・ご協力をお願いします。
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