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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

★ 表現の自由と開かれた情報のためのNGO連合(NCFOJ)声明

2022年11月12日 | 「日の丸・君が代」強制反対

  =自由権規約第7回日本政府報告審査『総括所見』=
 ★ 国連自由権規約委員会が日本政府に特定秘密保護法や共謀罪の問題点を指摘し、
   表現の自由、プライバシー、思想・表現の自由などの保障措置を求め勧告をおこない、対応を求めた

2022年11月11日
表現の自由と開かれた情報のためのNGO連合(NCFOJ)

1 はじめに

 安倍政権下から今日まで進められてきた、人権抑圧的な多くの立法の制定と日本社会で進められている表現の自由の危機と監視社会の進展に対して、人権委員会は、これまでの総括所見に比べ、かなり踏み込んだ総括所見を発しました。
 今回の審査の対象を決めたリストオブイシューは2017年に委員会で採択されたものであり、この中には、特定秘密保護法共謀罪、監視技術、放送法などのテーマは既に取り上げられていました。
 その後に進んだメディアと表現の自由に関する危機的な状況、その後に成立したデジタル関連6法土地規制法の問題などは、リストオブイシュー採択後に生じた新たな問題でした。

 表現の自由と開かれた情報のためのNGO連合(NCFOJ)は、多くの表現の自由が侵害された事例を紹介し、最近のものまで制定された立法の内容と問題点を伝える合計3本のレポートを委員会に提出していました。
 さらに、締め切り直前に安倍元首相の銃撃事件に関して、政権与党とカルト的な宗教団体の明確な分離を求めるレポートをNCFOJの有志団体による緊急レポートとして提出しました。

 審査では、ゴメス委員から共謀罪について詳細な質問がなされました。
 バシム委員からは、秘密保護法、デジタル関連法、土地規制法、さらには、監視社会化と表現の自由に対する萎縮をもたらす事例について詳細な質問がなされました。
 そして、政府は、法制度の内容を説明し、委員の懸念は杞憂であるとの説明を繰り返しました。このような審査にもとついて、次のような多くの勧告がなされました。

2 国際人権保障の枠組みについて

(1)人権研修と規約の完全な実施と効果的な救済が求められた
 ここで、注目されるのは、人権研修の対象とされる者の中に、裁判官・検察官・弁護士・法執行官と並んではじめてsecurity forces(日本においては、公安警察と内閣情報調査室などを指すと考えられる)が指名されたことです。このような機関が、市民の人権を侵害しかねないという我々の懸念が委員会に共有されたものと受け止めることができます。

(2)個人通報を規定する規約の第1選択議定書への加入を視野に入れ、さらなる措置を講じるべきである。

(3)国内人権機関については、パリ原則に沿った機関の設立に向けた明確な進捗がないことに遺憾の意を表明したうえで、国内人権機関を設置し、この機関に十分な財政的及び人的資源を割り当てるよう求めるとの勧告がなされました。
 この点はフォローアップ対象とされ、国際人権保障のための法制度の創設は待ったなしの課題となったといえます。

(4)反差別の法的枠組みについては、包括的な反差別法を制定することを含め、その法的枠組みが、人種、意見、出生、性的指向、性自認及び他の地位を含む規約に基づく全ての禁止事由に基づく、私的領域を含むあらゆる形態の直接、間接及び複合差別に対する十分かつ効果的な実体的及び手続的保護、並びに差別の被害者に対する効果的かつ適切な救済へのアクセスを提供することを確保するために必要なすべての措置を講じるべきであるとしました。

3 特定秘密保護法について

 特定秘密保護法については、2014年勧告でも取り上げられましたが、秘密として分類され得る事項が広範であること及び分類の一般的前提条件についての前回の懸念を再度表明するとしたうえで、引き続き、「特別秘密保護法およびその適用が規約第19条の厳格な要件に適合すること、特に、秘密とされる可能性のある情報のカテゴリーが狭く定義されることにより、情報を求め、受け取り、伝える権利に対するいかなる制限も、合法性、比例性、必要性の原則を遵守することを保証すること、国家の安全に対する特定の識別可能な脅威を防ぐための合法性、比例性および必要性の原則に従うこと、ならびに国家の安全を害さない正当な公共の利益の情報を流布することによって個人が処罰されないことを保証することを確保すること。」と述べ、ジャーナリストだけでなく、市民活動家が公益に関する情報を公表したことで処罰されないことを保証すべきであるとしています。

4 共謀罪

 今回あらたに、共謀罪法について、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(共謀罪法)が、テロリズムや組織的犯罪とは一見無関係な犯罪を含む277の行為を犯罪の成立する範囲として広く設定していることを懸念している。また、同法が表現の自由、平和的集会の権利、結社の自由といった、規約に規定された基本的権利を不当に制限し、自由と安全に対する権利及び公正な裁判を受ける権利(第4条、9条、14条、17条、19条、21条及び22条)の侵害につながる可能性があることを懸念している。」としたうえで、
 「締約国は、テロリズムや組織犯罪と無関係な行為の犯罪化を排除するために、共謀罪法を改正することを検討すべきである。また、共謀罪法の適用が規約上の権利を不当に制限しないことを確保するために、適切な保障措置及び防護措置を採用すべきである。」と勧告しました(16,17項)。

5 表現の自由

 表現の自由全般については、特定秘密保護法以外にも、

 「委員会は、思想、良心及び宗教の自由あるいは表現の自由の権利の制限につながり得る「公共の福祉」の曖昧で無限定な概念、並びに特定秘密保護法における秘密として分類され得る事項が広範であること及び分類の一般的前提条件についての前回の懸念を再度表明する。委員会は、これまでに放送免許の停止が行われていないという締約国の情報に留意しつつ、特定秘密保護法に定められた高い刑事罰と放送法および電波法において政府に認められた放送局の業務停止に関する広範な権限が、ジャーナリストや人権擁護活動家者の活動を抑制し、自己検閲につながることを懸念する(18条、19条)。」

 としたうえで、「委員会は、これまでの勧告を想起し、締約国に対し、以下の必要なすべての措置を講じるよう求める

 (a)「公共の福祉」を理由とする思想、良心及び宗教の自由または表現の自由に対するいかなる制限も、規約において認められるものに合致することを確保するために、「公共の福祉」の概念を明確に定義すること。
 (b)特定秘密保護法
 (c)メディアにおける意見の多様性を促進し、メディアとメディア関係者が国家の不当な干渉を受けずに活動できるようにすること。
 (d)放送・免許付与当局の独立性を確保するために必要なあらゆる措置を講じること。
 (e)独立したジャーナリストとメディア関係者をあらゆる形態の脅迫から効果的に保護し、過激派に関する規定を含む民事および刑事規定ならびにその他の規制を、公共の関心事に関する批判的報道を抑圧する手段として使用しないようにすること。」

 が勧告されました(36,37項)。

6 思想・良心の自由

 さらに、日の丸君が代の強制に関する教員に対する処分については、規約18条に適合しないとする新たな勧告がなされました(38,39項)。
 これは前回の審査で、最後にドロップしてしまった問題です。

7 平和的な集会を持つ権利

 今回の所見では平和的集会の権利の保障について、非常に重視されました。
 委員会は、「締約国から提供された情報に留意しつつも、委員会は、関係者からの情報提供、特に国会に対する抗議及び沖縄における抗議、過剰なカの行使や抗議者の録画を含む、抗議者及びジャーナリストの逮捕、法執行機関による抗議やデモに対する正当化できないかつ不均衡な制限に対する懸念を示した情報に引き続き懸念を有する(第19条及び第21条)。」としたうえで、

 「規約第21条に従い、また平和的集会の権利に関する委員会の一般的意見第37(2020年)に照らして、締約国は、以下を行うべきである。
 (a)平和的集会中の法執行当局による過剰な武力の行使や恣意的な逮捕・拘束のすべての申し立てが、迅速、徹底的かつ公平に調査され、責任者が起訴され、有罪が確定すれば処罰され、被害者が十分な補償を得られるようにすること。
 (b)法執行官に、「法執行官による力及ひ火器の使用に関する基本原則」や「法執行における低致死性武器に関する国連人権カイダンス」に基づき、武力行使に関する適切な訓練を提供すること。
 (c)平和的デモ参加者、人権擁護活動家、平和的デモを取材するジャーナリストを民間主体による脅迫、威嚇、嫌がらせ、攻撃から確実に保護すること。」

 と勧告しました。

 ここで指摘されている、国会に対する抗議及び沖縄における抗議、過剰な力の行使や抗議者の録画を含む、抗議者及びジャーナリストの逮捕、法執行機関による抗議やデモに対する正当化できないかつ不均衡な制限に対する懸念を示した情報などの具体例は、まさにNCFOJなどが委員会に提供したものです。
 「法執行官による力及び火器の使用に関する基本原則」や「法執行における低致死性武器に関する国連人権ガイダンス」にもとづく法執行官に対する研修など、まったく実施されていないものであり、私たち市民社会も、これらの国際基準を学習する必要があると感じました(40,41項)。

8 プライバシーの権利

 さらに、プライバシーの権利に関して、具体的な監視メカニズムの創設を求めました。
 「委員会は、警視庁から個人情報が流出した人々に対する補償を行う努力に関して締約国から提供された情報を歓迎し、デジタル改革関連6法及び個人情報保護委員会の役割に関連して提供された情報に留意する。しかしながら、監視の権限が広範囲に及んでいること、監視、傍受活動、個人データへのアクセスという形でプライバシー権が恣意的に干渉されることに対する、独立した司法的な監視の欠如を含めて十分な保護措置(セーフガード)がないことについて懸念する」としたうえで、

 「締約国は、データ保有およびアクセス、監視および傍受活動を統制する規制を本規約、特にその第17条に適合させ、合法性、比例性および必要性の原則の厳格な遵守を確保すべきである。プライバシー権に対するいかなる干渉も、裁判所からの事前承認を必要とし、効果的かつ独立した監視メカニズムの対象となること、および、影響を受ける者が、可能な場合には、彼らが受けている監視および傍受活動について通知され、権力濫用の場合には効果的な救済措置へのアクセスを確保すべきである。また、締約国は、権力濫用のすべての報告が徹底的に調査され、そのような調査が正当化される場合には、適切な制裁につながることを保障するべきである。」としました。

 この勧告は、共謀罪法が国会で審議されていた2017年にプライバシー問題に関する特別報告者であるカナタチ氏が安倍首相に対する公開書簡のなかで指摘したことと共通しています。
 そして、委員会でのバシム委員の発言内容を見ると、デジタル関連法案における個人情報の取り扱いや土地規制法による基地や原発の周辺住民のプライバシー情報の収集を念頭にこのような勧告を行ったものと考えられます。
 土地規制法については、エジプトのバシム委員が1日目の審査で具体的に取り上げ、2日目の審査でも政府の回答がないことを指摘して回答を求めたにもかかわらず、日本政府は最後まで質問を無視して回答しませんでした。事前の書面回答もなく対話が成立しなかったために、土地規制法という言葉自体は勧告からドロップされてしまったのではないかと考えられます。

 このような政府の対応は問題です。しかし、審査経過からすれば、デジタル法だけでなく、土地規制法による政府の個人情報の収集についても、この勧告は問題にしていることは明らかです。

9 政府と市民社会の双方に大きな課題

 監視社会化を進める一連の立法表現の自由・思想良心の自由・平和的な集会を持つ権利に対する政府の恣意的な干渉は、今回の審査における主要な審査のテーマの一つとなりました。委員会から発せられた勧告もこのような状況を克服するために、きわめて適切なものであり、有意義なものと言えます。
 NCFOJに集うNGOは、日本政府に勧告を真摯に受け止め、対応することを強く求めます。

NGO Coalition for Free Expression & Open Information in Japan(NCFOJ)

※自由権規約第7回日本政府報告審査『総括所見』(NCFOJ日本語仮訳)


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