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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

都教委が『分限処分』通知

2008年08月26日 | 暴走する都教委
 【特報】
 ■ 日の丸・君が代問題 都教委が『分限処分』通知


 東京都教育委員会が二〇〇三年に出した「10・23通達」。「日の丸・君が代」の扱いで教職員に規範の順守を命じた。以来、通達に服従せず、懲戒処分された教職員は延べ四百十人を数える。その都教委が先月、従来の懲戒とは異なる「分限」処分の細目を現場に通知した。処分された教職員らからは「免職のためのさらなる締め付け」という批判の声が上がっている。 (田原牧)

 ■ 免職断行への布石?

 先月二十二日、「都教職員研修センター」(文京区)の一室。公立中学の男性教員が、校長や都教委職員ら四人に囲まれていた。
 この教員は今春、卒業式で君が代斉唱の際に起立せず、懲戒処分を受けた。被処分者には「服務事故再発防止研修」が待っている。この日は十四人が受講させられた。
 全体講習の後の個別指導で、講師が一枚の紙を読み上げた。「分限事由に該当する可能性がある教職員に関する対応指針」。先月十五日、都の大原正行教育長名で都立校の校長、市区町村の教育長あてに通知された。
 内容は分限処分の厳格化だ。この処分は国家または地方公務員法に定められているが、なじみが薄い。違法行為などの道義的責任を問う懲戒処分とは違い、行政能率を維持するための処分とされる。が、実際には病欠者らが対象で規定はあいまいだった。教育分野では「指導力不足教員」などが対象とされている。
 ちなみに「日の丸・君が代」処分では従来、最も軽い戒告から最高で停職六カ月まで六段階の懲戒が科せられてきた。
 その場で講師が強調したのは、二十一項目に及ぶ理由例の一部(別表参照)だった。例えば、処分後に「再び非違行為を行い」といった項目一つとっても、多くの10・23通達の被処分者らに当てはまることになる。
 この教員は「講師は私が対象になるとは明言しなかったが、言外に『分かれよな』とにおわせていた」と振り返る。

 ■ 「10・23通達」被処分者締め付けか

 10・23通達による処分問題は司法の場で係争中だ。憲法の「思想及び良心の自由」を掲げ、処分の不当性を訴えた通称「予防訴訟」では、東京地裁が〇六年九月、「『日の丸・君が代』の強要は違憲」と原告勝訴の判決を下した(都は控訴)。
 逆に別の訴訟では今年三月、東京高裁が「(日の丸掲揚への抗議は)公務員としての信用失墜行為」と判断している。
 司法の判断は定まっておらず、他にも複数の訴訟が争われる中、突然、出された今回の分限処分通知。この教員は「研修でのリポートで反省していないと書けば、分限処分の対象になる。段階のある懲戒処分を不十分とみて、一気にクピにしたいのでは」と憤った。
 ただ、今回の通知は都教委が単独で出したものではない。発端は人事院が〇六年十月、国レベルでの分限処分指針を通知したこと。その後も防衛事務次官汚職事件などが続き、国は地方自治体にも徹底を指示した。都では今年五月、知事部局を対象に総務局長名で指針が通知されている。

 ■ 現場警戒 退職金支給「反発少ない」

 今春も不起立で、二回目の停職六カ月処分を受けた都立あきる野学園の根津公子教諭は語る。
 「昨年、停職六カ月処分を受け、本来なら今春は懲戒免職にされかねなかった。しかし、都教委は世論の反発で免職は避けた。クビを切る方策として打ち出されたのが今回の通知ではないのか」
 分限処分なら退職金も支給されるため、世間の反発も少ない。それが都教委の狙いでは-根津さんはそう推測する。「『日の丸・君が代』問題に終止符を打つため、来春から使われかねない」

 ■ 都教委担当者「前からの制度」

 一方、都教委職員課の担当者は「一部から10・23通達の被処分者を狙い撃ちするためと言われているが、分限処分は以前からあった制度。新しく何かが変わるわけではない」と説明する。「知事部局と都教委は任命権者が違うので、都教委に合うよう焼き直しただけ。懲戒と分限のどちらを適用するかはケース・バイ・ケース。機械的には当てはめられない」
 では、10・23通達による被処分者は適用外かと聞くと、答えは微妙だ。
 「原則として懲戒が重なれば、分限の対象になる可能性は否定しない」

 ■ 現場警戒 「異議申し立て 萎縮狙う」

 ただ、「『日の丸・君が代』不当処分撤回を求める被処分者の会」の近藤徹事務局長も「即座に10・23通達の被処分者に適用するという見方には疑問がある」と話す。「もちろん、通知の文面が独り歩きしないかという不安はある。とはいえ、都教委の最大の狙いは異議申し立てをする人への萎縮効果だろう」
 五月の知事部局への通知に抗議した東京都労働組合連合会(都労連)の幹部は萎縮させる対象をこうみる。「都は管理職に分限処分への理解を徹底させたいという。学校なら校長たちへの強いプレッシャーになるはずだ」

 ■ 校長と教員関係悪化する
    都立三鷹高校 土肥信雄校長


 「分限処分の運用には現場の校長の報告書が不可欠。校長は都教委からその提出を求められかねない。校長と教員の関係は一層悪化していく」。都立三鷹高校の土肥信雄校長は今回の通知について、こう懸念する。
 土肥校長は〇六年に都教委が通知した「職員会議での挙手、採決の禁止」の撤回と多数決制の復活を求めるなど、ここ数年の都の教育の流れに警鐘を鳴らしている。
 三鷹高校は校長としては二校目。昨年十一月の校長会で、挙手、採決禁止の通知について「生徒に最も近い教員たちの意見が反映されないことになる」と撤回を要求。先月以来、都教委に公開討論を求めているが、都教委は拒み続けている。
 「多数決抜きでも意見は言えるとの反論もあるが、空論だ。意向が反映されなければ、誰も手を挙げなくなる。ただでも職員の人事考課(評価)権限は校長が握っており、睨まれたくないという『事なかれ』がまん延している」
 この間、都教委は「校長の権限強化」を説いてきた。だが、「日の丸・君が代」でも校長の責任としつつ、教員に口頭ではなく、文書で通知するよう指示してきた。人事考課も本来、校長の絶対評価なのに一定の割合で低い評価を出すよう命じている。「結局は校長ではなく、都教委の権限強化にすぎない」
 「日の丸・君が代」には個人的な考えを抑え、これまで都教委の方針に従ってきた。だが、処分についてはこう語る。「『日の丸・君が代』には賛否があるが、意思表示すら封じるのは言論統制。処分での締め付けば、自由にモノが言えることが前提であるべき教育の場にはそぐわない」

《別表》都教委が示す分限処分の理由例(一部)
▽上司などから研修受講命令を受けたにもかかわらず研修を受講しない、または研修を受講したものの研修の成果が上がらない
▽法律、条例、規則およびその他の規程または職務命令に違反する、職務命令を拒否する、独善的こ業務を遂行するなどにより、公務の円滑な運営に支障を生じさせる
▽過去に非違行為を行い、懲戒処分を受けたにもかかわらず、再び非違行為を行い、都および教職員に対する信用を著しく失墜させている


=デスクメモ=
 「教師は仰ぐものではありません」。先生方が反対なさり、小学校の卒業式は「仰げば尊し」が中止に。でも、私たち教え子の敬慕の情は逆に強まった。中・高は日の丸・君が代なしの学校。でも、歌うなと強制されなどしなかったし、現に歌える。歌えと強制する人よ、あなたは何を恐れるのか。(隆)


『東京新聞』(2008年8月25日【こちら特報部】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2008082502000098.html

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