☆ <声明>日本学術会議を「特殊法人」化する法律の成立にあたって
日本学術会議を「国の機関」から「特殊法人」に変えることを通じて政府の管理下に置く新たな法律が、6月11日に成立した。
私たちは、学術会議の度々の「懸念」表明にもかかわらず政府が法人化法案の国会提出を強行し、抜本的修正を求める学術会議総会決議や廃案を求める学者・市民の声を一顧だにすることなく、自民・公明・維新等が短時間の審議で採決を急ぎ、成立させたことに強く抗議する。
国会審議における政府の態度は、「任命拒否」問題との関連や法案の内容をめぐる野党議員の数多くの追及に真摯に向き合うことのない不誠実なものだった。その一方、坂井学担当大臣は、「業務に関し著しく不適当な行為」という規定が政治的理由による排除のために用いられる可能性を示す重大な答弁を行なった。看過できない答弁であり、これを放置することなく、危険なものとしてあくまでも撤回を求めたい。
内閣総理大臣が任命する監事や評価委員など、政府が管理する仕組みを何重にも設けたこの悪法に反対する私たちは、7万筆を超えるオンライン署名や4度の院内集会、「任命拒否」当事者をはじめとする多くの学者による坐り込みや継続的な「人間の鎖」など、議員や世論に働きかける最大限の取り組みを行なった。全国各地でも、国会前の行動に呼応する取り組みが展開された。
この運動の中心を担った「学者・市民の会」は、最初は少数の学者、市民、ジャーナリスト、教育関係者らの自発的な集まりだったが、「立場の違う者同士が、互いにリスペクトし合い、協業的分業で『廃案』という一つの目標に向かう新しい運動となった」と参加者が振り返ったように、新たな運動の形も生みだした。
にもかかわらず、「学術会議の独立性を高めるための法人化」という政府の狡猾なレトリックのもとで、今回の立法を許してしまったことは厳然たる事実である。
反対運動が広範な大学人を巻き込めなかったことはもとより、この問題を「他人事」と見る社会の無関心を突き崩すことができなかったのはなぜか、法案の重大な本質や法案反対の取り組みについての報道が一部のメディアを除いて低調だったことをどう考えるか、国会内外の連携を含め、法案に反対した野党と市民との連携は十分であったかなど、さまざまな問題点を多角的に分析し、今後の運動の糧として共有する必要がある。
新法の成立によって問題が終わったわけではない。
2026年10月の発足に向けて新組織の会員の選考や法律に肉づけを与える規則類の制定などのプロセスが今後進行していくが、これを社会の厳しい監視のもとに置く必要がある。「任命拒否」の正当性を問う情報公開訴訟も続いていく。
法人化の背後には、軍事研究の歯止めとなってきた学術会議を無力化する狙いもある。戦後民主主義を逆戻りさせる今回のような動きは、戦争への道につながるものとして、どうしても止める必要がある。
私たちは、今回の運動の経験を前向きに活かし、自由で豊かな連帯を広げることによって、平和で民主的な社会の形成のために力を尽くしていきたい。
2025年6月24日
日本学術会議「特殊法人化」法案に反対する学者・市民の会
連絡先 univforum7@gmail.com
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます