《子どもと教科書全国ネット21ニュースから》
◆ 「君が代」、私は歌わない
~京都の中学生親子が文科省に申し入れ
大八木賢治(おおやぎけんじ・京都教科書ネット)
京都市の中学2年生・田花結希子アイリーンさんは、2023年3月の小学校卒業式と4月の中学校入学式の「国歌斉唱」の時、起立せず、歌いませんでした。
そして2024年2月、母親の水谷麻里子キャロラインさんと一緒に、文部科学省に「日の丸・君が代」を強制しないよう要請しました。
このことを取り上げた2023年6月16日の朝日新聞と『週刊金曜日』2024年3月8日号をもとに、アイリーンさんの思いや要請の様子を紹介したいと思います。
アイリーンさんは、「君が代」を歌いたくない理由を、戦争映画の中で
「死ぬときに『天皇陛下万歳』と言っていて、それがすごくつらくて。なんで死ぬ間際までそんなことになってんの?!」
「みんな平等がいいのに、なんで天皇があがめられているのか。立ったり歌ったりすると、それを認めるようになるんじゃないか」
と思ったからだと語っています。
卒業式の前にその思いを伝え、先生たちと話し合いました。
「まわりが驚く」「みんなに迷惑がかかる」と言われたので、「ほかの人の問題ではない」と伝えると、「最終的な判断はまかせる」と言われました。
担任の先生は教室で、「田花さんは考えがあって立たないし歌わない。みんなも理解してほしい」と話してくれましたが、「考え」の中身は「難しい話だから」と説明しませんでした。
アイリーンさんは、なぜ起立できないのかを説明するため、「日の丸・君が代」がどう使われたのか、歴史をまとめたプリントを人数分用意していましたが、先生に止められ、配ることはできませんでした。
「どうして?」と聞きにきた子に説明すると「ふうん」。式の後、誰かから何かを言われることはありませんでした。
中学校入学式の前に、キャロラインさんが校長と電話で話すと、「他の子から誤解を受けるかもしれない」「浮いたり、いじめの対象になるかもしれない。それが心配」と言われました。
当日、斉唱直前に後ろから「立たなあかんで」と言われ、「ええねん」と返した以外は、誰からも何も言われることはありませんでした。
アイリーンさん、キャロラインさんは、この経験を踏まえ、文科省の担当者に、
①「日の丸・君が代」を強制されて非常に嫌な思いをした、
②国旗国歌法制定時に政府は「強制しない」と言っていた、
③これからのグローバル社会に「日の丸・君が代」強制は逆行している
などの理由をあげて、子どもが主人公の式にするよう、都道府県教育委員会に指導することを求める要請書を提出しました。
応対した職員は「文科省は、内心には立ち入らない」と回答しましたが、
「『今まで練習してきたことがムダになる』と40分も説得された。子どもの『内心の自由』が保障されていない」と反論し、
「『日の丸・君が代」の歴史を教える時間を取ってほしい」「(そういうことが教えられていないので)『何で嫌なん?』と聞かれる」と要望しました。
文科省の職員は「文科省は学習指導要領で科目や内容は規定しているが、どう教えるかは現場の裁量」と回答。
アイリーンさんが、「学校の先生から、自分たちは『教育委員会には逆らえない』と言われた」と切り返すと、「現場のマスターは校長。校長が教育課程を編成します」と繰り返しました。
キャロラインさんは、これから「毎回、校長に、子どもに強制しないよう申し入れをします。SNSでも発信し、賛同してくれる人を集めたい」と話しています。
『子どもと教科書全国ネット21ニュース』156号(2024年6月)
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