▼ 東芝、7000億円特損のデタラメ。「真の理由」を公表できぬ裏事情 (まぐまぐ!ニュース!)
先日、7,000億円の特別損失計上を発表した東芝。日本中に衝撃を与えたこのニュースですが、メルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者で世界的プログラマーの中島聡さんは2015年に配信した「またも隠蔽か? 東芝が抱える『原発事業』という時限爆弾」ですでにこの事態を完全に「予言」していました。
シャープを傘下に収めた鴻海が事業買収に関心を示していると報じられるなど、まさに大揺れに揺れる東芝。そんな東芝が公にした「7000億円特別損失の理由」について、中島さんは「デタラメ」と一刀両断した上で、安倍政権や霞が関の思惑が複雑に絡み合う「本当の理由」について記しています。
● 本当は2011年から破綻している東芝
東芝が7,000億円の特別損失を計上することを発表しました。東芝は、2015年の末に(子会社である)ウェスティングハウスが買収したS&Wの資産が大幅に目減りしたことを理由にしていますが、これはとんでもないデタラメです。
この特別損失は、本来であれば、2011年の福島第一の事故の影響で大幅に下がったウェスティングハウスの企業価値を反映し、(それが明確になった)2013~2014年の時点で計上すべきものでした。
しかし、債務超過に陥ることを何としてでも避けたい経営陣と、「国策」である原発が事業として成り立たないことを認めたくない霞が関との利害関係が一致し、東芝はのれん代の償却を見送ることを決めました。
2015年にパソコン事業の粉飾が判明した時点で、もう一度(のれん代の償却の)チャンスがありましたが、ここでもさらに見送りを決めました。
これに関しては、このメルマガの2015年8月6日号に詳しく書いたので、引用します。
東芝の粉飾決済による「水増し利益」は1,562億円と報道されていますが、それよりもはるかに大きな問題が、原発事業を担当するウェスティングハウスの減損処理です。
具体的な数字は Facebookでも紹介した「東芝を圧迫する『巨額のれん代』と迫る「債務超過」危機」に書かれていますが、ウェスティングハウスの買収当時に7,467億円に膨らんだ「のれん代」が、原発事故後にThe Shaw Groupにプットオプションを行使されて買い増しをした結果、今では1兆6,000億円にまで膨らんでいます。
福島第一での過酷事故後、原発ビジネス全体が低迷し、将来性も見込まれないことをちゃんと考慮して「のれん代」を再評価すれば、数千億円規模の減損処理は免れず、東芝の財務状態が非常に不健全であることが明確になってしまいます。
東芝は、ウェスティングハウスの買収の際には、純資産を大幅に上回る価格で買収をしたため、巨額の「のれん代」がバランスシートに計上されることになりました。
本来であれば、福島第一原発の事故で原発ビジネスの低迷が明らかになった2011年の時点で「一括償却」をすべきだったのでしょうが、その年に、ウェスティングハウス株20%を保有していたThe Shaw Groupにプットオプションを施行されて高値で売りつけられることになり、逆にのれん代が膨れ上がることになってしまったのです。
経営陣としては、原発事業の低迷が一過性であることを望んでいたのもあるし、共同出資者に与えてしまったプットオプションが損失の上塗りをしたことを明確にしたくなかったというのもあるでしょう(こんな風に株主に正確な情報を渡さない行動こそが、まさに「粉飾」です)。
1兆円を超えるまでに膨れ上がった東芝ののれん代は、ウェスティングハウスの窮状を正しく反映すれば、たぶん三分の一とか四分の一の価値しかないのです。つまり、1,562億円の粉飾などは氷山の一角でしかなく、実際には数千億円の損失を計上すべき状況に追い込まれているということです。
2015年時点で明らかになった粉飾で東芝の経営陣が誰も刑務所に入らなかっただけで十分不思議ですが、あの時点で、1兆円を超えるまでに積み上がってしまったウェスティングハウスの「のれん代」を一部でも償却しなかったことは、異常でした。日本の資本主義が、米国などのそれに比べて全く未熟であることを証明する良い事例となりました。
その後、安倍政権は、懸命に原発の海外への売り込みを行いましたが、その背景には、破綻してしまった原発事業を何とか復活させたいという霞が関の意向があったのです。米国に引かされたババ抜きのババを、何とか利益を生み出す事業に転換させたいという必死の思いがあったのです。
しかし、それは見果てぬ夢に終わりました。毎年コストが下がっていく風力や太陽光発電と比べて、事故のたびにコストが上がり、厄介な使用済み核燃料を残す原発とでは全く勝負にならないのです。福島第一での事故は、時間の問題でしかなかった原発事業の破綻を大幅に加速したのです。
そんな理由で、1兆円を超えるまでに積み上がったウェスティングハウスの「のれん代」は、「いつかは損失として計上しなければいけない爆弾」として東芝のバランスシートに残っていたのです。
今回の7,000億円の特別損失は、その積み上がっていた「のれん代」を償却しただけのことなのです。
しかし、「損失隠しのために先送りしていた」とは言えないので、「2015年の末に買収したS&Wの資産が大幅に目減りした」と、あたかも「新たな事象」のために今年になって損失を計上することにした、と言っているだけなのです。
『週刊 Life is beautiful』
著者/中島聡(ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア)
マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。
『まぐまぐ!ニュース!』(2017.02.01)
http://www.mag2.com/p/news/236781?utm_medium=email&utm_source=mag_news_9999&utm_campaign=mag_news_0201
先日、7,000億円の特別損失計上を発表した東芝。日本中に衝撃を与えたこのニュースですが、メルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者で世界的プログラマーの中島聡さんは2015年に配信した「またも隠蔽か? 東芝が抱える『原発事業』という時限爆弾」ですでにこの事態を完全に「予言」していました。
シャープを傘下に収めた鴻海が事業買収に関心を示していると報じられるなど、まさに大揺れに揺れる東芝。そんな東芝が公にした「7000億円特別損失の理由」について、中島さんは「デタラメ」と一刀両断した上で、安倍政権や霞が関の思惑が複雑に絡み合う「本当の理由」について記しています。
● 本当は2011年から破綻している東芝
東芝が7,000億円の特別損失を計上することを発表しました。東芝は、2015年の末に(子会社である)ウェスティングハウスが買収したS&Wの資産が大幅に目減りしたことを理由にしていますが、これはとんでもないデタラメです。
この特別損失は、本来であれば、2011年の福島第一の事故の影響で大幅に下がったウェスティングハウスの企業価値を反映し、(それが明確になった)2013~2014年の時点で計上すべきものでした。
しかし、債務超過に陥ることを何としてでも避けたい経営陣と、「国策」である原発が事業として成り立たないことを認めたくない霞が関との利害関係が一致し、東芝はのれん代の償却を見送ることを決めました。
2015年にパソコン事業の粉飾が判明した時点で、もう一度(のれん代の償却の)チャンスがありましたが、ここでもさらに見送りを決めました。
これに関しては、このメルマガの2015年8月6日号に詳しく書いたので、引用します。
東芝の粉飾決済による「水増し利益」は1,562億円と報道されていますが、それよりもはるかに大きな問題が、原発事業を担当するウェスティングハウスの減損処理です。
具体的な数字は Facebookでも紹介した「東芝を圧迫する『巨額のれん代』と迫る「債務超過」危機」に書かれていますが、ウェスティングハウスの買収当時に7,467億円に膨らんだ「のれん代」が、原発事故後にThe Shaw Groupにプットオプションを行使されて買い増しをした結果、今では1兆6,000億円にまで膨らんでいます。
福島第一での過酷事故後、原発ビジネス全体が低迷し、将来性も見込まれないことをちゃんと考慮して「のれん代」を再評価すれば、数千億円規模の減損処理は免れず、東芝の財務状態が非常に不健全であることが明確になってしまいます。
東芝は、ウェスティングハウスの買収の際には、純資産を大幅に上回る価格で買収をしたため、巨額の「のれん代」がバランスシートに計上されることになりました。
本来であれば、福島第一原発の事故で原発ビジネスの低迷が明らかになった2011年の時点で「一括償却」をすべきだったのでしょうが、その年に、ウェスティングハウス株20%を保有していたThe Shaw Groupにプットオプションを施行されて高値で売りつけられることになり、逆にのれん代が膨れ上がることになってしまったのです。
経営陣としては、原発事業の低迷が一過性であることを望んでいたのもあるし、共同出資者に与えてしまったプットオプションが損失の上塗りをしたことを明確にしたくなかったというのもあるでしょう(こんな風に株主に正確な情報を渡さない行動こそが、まさに「粉飾」です)。
1兆円を超えるまでに膨れ上がった東芝ののれん代は、ウェスティングハウスの窮状を正しく反映すれば、たぶん三分の一とか四分の一の価値しかないのです。つまり、1,562億円の粉飾などは氷山の一角でしかなく、実際には数千億円の損失を計上すべき状況に追い込まれているということです。
2015年時点で明らかになった粉飾で東芝の経営陣が誰も刑務所に入らなかっただけで十分不思議ですが、あの時点で、1兆円を超えるまでに積み上がってしまったウェスティングハウスの「のれん代」を一部でも償却しなかったことは、異常でした。日本の資本主義が、米国などのそれに比べて全く未熟であることを証明する良い事例となりました。
その後、安倍政権は、懸命に原発の海外への売り込みを行いましたが、その背景には、破綻してしまった原発事業を何とか復活させたいという霞が関の意向があったのです。米国に引かされたババ抜きのババを、何とか利益を生み出す事業に転換させたいという必死の思いがあったのです。
しかし、それは見果てぬ夢に終わりました。毎年コストが下がっていく風力や太陽光発電と比べて、事故のたびにコストが上がり、厄介な使用済み核燃料を残す原発とでは全く勝負にならないのです。福島第一での事故は、時間の問題でしかなかった原発事業の破綻を大幅に加速したのです。
そんな理由で、1兆円を超えるまでに積み上がったウェスティングハウスの「のれん代」は、「いつかは損失として計上しなければいけない爆弾」として東芝のバランスシートに残っていたのです。
今回の7,000億円の特別損失は、その積み上がっていた「のれん代」を償却しただけのことなのです。
しかし、「損失隠しのために先送りしていた」とは言えないので、「2015年の末に買収したS&Wの資産が大幅に目減りした」と、あたかも「新たな事象」のために今年になって損失を計上することにした、と言っているだけなのです。
『週刊 Life is beautiful』
著者/中島聡(ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア)
マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。
『まぐまぐ!ニュース!』(2017.02.01)
http://www.mag2.com/p/news/236781?utm_medium=email&utm_source=mag_news_9999&utm_campaign=mag_news_0201
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