<はたらく>高校生の就活(上)
◆ 求人雑誌めくる日々
来春卒業予定の高校生への求人が、今月1日から始まった。景気は薄日が差したといわれるが、雇用情勢は悪化したまま。就職活動は昨年度より厳しくなると予想されている。今春、就職が決まらないまま卒業した若者の姿から、高校生の就活問題を考える。

◆ 就職をあきらめて進学する時代?
「お金がない。就職して、自分でお金をためてから大学に行って」。全日制高校の普通科で学び、進学を希望していた三重県四日市市の横地佑佳さん(18)は昨年八月、母親から懇願された。
母子家庭で、妹もいる。パートなどで家計を支えてきた母親が、ギリギリになって進路変更を切り出した気持ちも分かり、就職することにした。
だが、「頭を就職に切り替えるのに時間がかかった」。就活に本腰を入れたのは十月。二社受けたが、内定をもらえず、この四月から人材派遣大手パソナが県から受託した未就職卒業者向けの研修を受け、「早く就職したい」と語る。
厚生労働省の調査(二〇一〇年三月末現在)では、〇九年度の高校新卒者の求人数は、約十九万八千人で前年同期比38.6%の減。一九七七年度の調査開始以降、最少だった。内定者は十四万四千人で15.6%減。就職内定率は93.9%で1.7ポイントの微減だが、計算の基となる求職者数に進路変更者は含まれない。
昨年七月末に十九万一千人だった新卒求職者数は、今年三月末で十五万三千人。減少した約三万八千人の中には、親の会社など学校を通さず就職した生徒もいるが、就職をあきらめて進学したり、アルバイトを選んだりしたケースが多いとみられる。
名古屋市の普通科高校を卒業した村井あき穂さん(18)は、アルバイトを選んだ一人。アパレル店員を目指したが昨年、高校への求人は激減。希望の就職先はなく、正社員登用制度があるアパレル店のアルバイトになった。
だが働き始めてから、登用は二十歳以上が対象と知らされた。収入は不安定で在庫管理などの基本も学べない。「高校時代、社会人になる現実感がないままアルバイトに決めてしまった」と悔やむ。
村井さんは、愛知県が今月から始めた未就職卒業者向けの就職支援に応募。派遣会社の契約社員として基礎研修を受け、就業体験を積むことにした。「自分は本当は何に向いているのか見つけ、早く自立したい」と語る。
◆ 大学生と競合、厳しさ一段と
高校生は、大学生の厳しい就活のあおりを受けている面もある。
今春、未就職で高校を卒業してアルバイト生活を送る愛知県の曽根貴弘さん(18)は、在学中にアパレル会社の試験を受けた際、大学生らと一緒だった。「一次で不合格。高校に事務や販売の求人はほとんどなく、投げやりになった」
横浜市立横浜総合高校で進路指導に当たる菊地克則教諭は「高卒を対象にした求人に大学生が手を出している。企業にとっても優秀な人材を採るチャンスで、その分、高校生への求人が縮小した」と分析。
日本高等学校教職員組合の佐古田博副委員長は「応募して二ヶ月もたつのに連絡がなかったり、何回も試験を受けたりと就活が長期化し、生徒は苦しんでいる」と指摘する。
大学生の就活は後半戦。九月から現役高校生の選考が始まる。曽根さんの、求人雑誌をめくる日が続く。
(服部利崇、境田未緒)
<高校生の就活> 自由競争の大学生と違い、*高校生保護の観点からルールが設けられている。学校はハローワークが内容を確認した求人票だけ受け付け、生徒を推薦する。企業の求人活動は例年7月1日、選考は9月16日から。多くの都道府県で、合否判明まで他社に応募できない「一人一社」期間を設けている。
『東京新聞』(2010年7月9日【暮らし】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2010070902000077.html
◆ 求人雑誌めくる日々
来春卒業予定の高校生への求人が、今月1日から始まった。景気は薄日が差したといわれるが、雇用情勢は悪化したまま。就職活動は昨年度より厳しくなると予想されている。今春、就職が決まらないまま卒業した若者の姿から、高校生の就活問題を考える。

◆ 就職をあきらめて進学する時代?
「お金がない。就職して、自分でお金をためてから大学に行って」。全日制高校の普通科で学び、進学を希望していた三重県四日市市の横地佑佳さん(18)は昨年八月、母親から懇願された。
母子家庭で、妹もいる。パートなどで家計を支えてきた母親が、ギリギリになって進路変更を切り出した気持ちも分かり、就職することにした。
だが、「頭を就職に切り替えるのに時間がかかった」。就活に本腰を入れたのは十月。二社受けたが、内定をもらえず、この四月から人材派遣大手パソナが県から受託した未就職卒業者向けの研修を受け、「早く就職したい」と語る。
厚生労働省の調査(二〇一〇年三月末現在)では、〇九年度の高校新卒者の求人数は、約十九万八千人で前年同期比38.6%の減。一九七七年度の調査開始以降、最少だった。内定者は十四万四千人で15.6%減。就職内定率は93.9%で1.7ポイントの微減だが、計算の基となる求職者数に進路変更者は含まれない。
昨年七月末に十九万一千人だった新卒求職者数は、今年三月末で十五万三千人。減少した約三万八千人の中には、親の会社など学校を通さず就職した生徒もいるが、就職をあきらめて進学したり、アルバイトを選んだりしたケースが多いとみられる。
名古屋市の普通科高校を卒業した村井あき穂さん(18)は、アルバイトを選んだ一人。アパレル店員を目指したが昨年、高校への求人は激減。希望の就職先はなく、正社員登用制度があるアパレル店のアルバイトになった。
だが働き始めてから、登用は二十歳以上が対象と知らされた。収入は不安定で在庫管理などの基本も学べない。「高校時代、社会人になる現実感がないままアルバイトに決めてしまった」と悔やむ。
村井さんは、愛知県が今月から始めた未就職卒業者向けの就職支援に応募。派遣会社の契約社員として基礎研修を受け、就業体験を積むことにした。「自分は本当は何に向いているのか見つけ、早く自立したい」と語る。
◆ 大学生と競合、厳しさ一段と
高校生は、大学生の厳しい就活のあおりを受けている面もある。
今春、未就職で高校を卒業してアルバイト生活を送る愛知県の曽根貴弘さん(18)は、在学中にアパレル会社の試験を受けた際、大学生らと一緒だった。「一次で不合格。高校に事務や販売の求人はほとんどなく、投げやりになった」
横浜市立横浜総合高校で進路指導に当たる菊地克則教諭は「高卒を対象にした求人に大学生が手を出している。企業にとっても優秀な人材を採るチャンスで、その分、高校生への求人が縮小した」と分析。
日本高等学校教職員組合の佐古田博副委員長は「応募して二ヶ月もたつのに連絡がなかったり、何回も試験を受けたりと就活が長期化し、生徒は苦しんでいる」と指摘する。
大学生の就活は後半戦。九月から現役高校生の選考が始まる。曽根さんの、求人雑誌をめくる日が続く。
(服部利崇、境田未緒)
<高校生の就活> 自由競争の大学生と違い、*高校生保護の観点からルールが設けられている。学校はハローワークが内容を確認した求人票だけ受け付け、生徒を推薦する。企業の求人活動は例年7月1日、選考は9月16日から。多くの都道府県で、合否判明まで他社に応募できない「一人一社」期間を設けている。
『東京新聞』(2010年7月9日【暮らし】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2010070902000077.html
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