◆ 原発と避難 (東京新聞【本音のコラム】)
焔(ほのお)炎々 波濤(はとう)を焦がし
煙濛々(もうもう) 天に漲(みなぎ)る
天下の壮観 我が製鉄所
八幡製鉄所(現日本製鉄)によって発展した八幡市(現北九州市)の市歌。煤煙(ばいえん)は街の賑(にぎ)わいを表していた。
黒い海と灰色の空。子どもたちの絵に碧(あお)い色はなかった。
ようやく公害が規制されるようになったのは一九七〇年。翌年、環境庁ができ、海や空を汚染すると罰せられるようになった。
ところがいま百万トンともいわれる福島原発のタンクにたまった核汚染水が、海に放棄されようとしている。
原発は最大の公害企業だが、国がそれを支持している。
「被告は東海第二発電所の原子炉を運転してはならない」。
日本原電の運転差し止めを求める住民の訴えに対する十八日、水戸地裁前田英子裁判長の判決主文である。
半径三十㌔圏内に住む、九十四万人を対象とする避難計画と実行体制が「整えられているというにはほど遠い状態であり、同区域の原告らには、人格権侵害の具体的危険がある」との判断だ。
一四年五月「国土を汚染することこそが国富の喪失」として大飯原発の再稼働を止めた、福井地裁・樋口英明裁判長の英断につぐ原発批判である。
原発事故を前にして安全な避難などありえない。避難訓練が必要な運転計画ほど人権無視はない。
運転を推進するのは危険な政府だ。公害を礼賛していた時代の遺物だ。
『東京新聞』(2021年3月23日【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)
焔(ほのお)炎々 波濤(はとう)を焦がし
煙濛々(もうもう) 天に漲(みなぎ)る
天下の壮観 我が製鉄所
八幡製鉄所(現日本製鉄)によって発展した八幡市(現北九州市)の市歌。煤煙(ばいえん)は街の賑(にぎ)わいを表していた。
黒い海と灰色の空。子どもたちの絵に碧(あお)い色はなかった。
ようやく公害が規制されるようになったのは一九七〇年。翌年、環境庁ができ、海や空を汚染すると罰せられるようになった。
ところがいま百万トンともいわれる福島原発のタンクにたまった核汚染水が、海に放棄されようとしている。
原発は最大の公害企業だが、国がそれを支持している。
「被告は東海第二発電所の原子炉を運転してはならない」。
日本原電の運転差し止めを求める住民の訴えに対する十八日、水戸地裁前田英子裁判長の判決主文である。
半径三十㌔圏内に住む、九十四万人を対象とする避難計画と実行体制が「整えられているというにはほど遠い状態であり、同区域の原告らには、人格権侵害の具体的危険がある」との判断だ。
一四年五月「国土を汚染することこそが国富の喪失」として大飯原発の再稼働を止めた、福井地裁・樋口英明裁判長の英断につぐ原発批判である。
原発事故を前にして安全な避難などありえない。避難訓練が必要な運転計画ほど人権無視はない。
運転を推進するのは危険な政府だ。公害を礼賛していた時代の遺物だ。
『東京新聞』(2021年3月23日【本音のコラム】)
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