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パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

人権外交を推進しようとするなら、まず国内の人権問題に国際標準の人権を保障する体制を確立せよ

2022年03月16日 | 人権
  《週刊金曜日 黒風白雨 78》
 ◆ 人権外交に二重基準は許されない
宇都宮健児

 岸田文雄首相は国際人権問題を担当する総理補佐官を新設し、人権外交を推進する姿勢を示している。
 岸田首相が進めようとしている人権外交は、新疆(しんきょう)ウイグル自治区や香港における人権侵害などが問題となっている中国への対応を念頭においたものだと言われている。
 しかし、中国だけでなく、北朝鮮、ミャンマー、ベラルーシ、シリアなど他の国でも人権は問題となっている。
 人権外交が特定の国の人権侵害だけを問題にし、他の国における人権侵害を問題としないならば説得力を失ってしまう。
 また、他国の人権問題に口を出すのであれば、最近の入管施設における外国人に対する人権侵害をはじめ、国内における人権侵害も問題にしなければ説得力を失うことになる。
 人権問題は普遍的な問題であり、二重基準、ダブルスタンダードは許されないのである。
 国際的な人権保障の基準としては、国連憲章や国連が採択した世界人権宣言・国際人権規約・各種人権条約などがあるが、日本は国連の国際人権規約・各種人権条約に関する「個人通報制度」をまだ一つも受け入れていない国である。
 個人通報制度は、人権侵害を受けたと主張する個人が不服申立てや裁判など国内で利用できる救済手続を尽くした後に、直接国を通さずに、それぞれの人権条約の委員会に救済の申立てができる制度である。
 委員会は、申立てを検討した後、条約違反があったかどうか、あった場合には当事国がどのような救済措置を取るべきかについて見解を公表する。
 個人通報制度を受け入れるには、国連の国際人権規約(「社会権規約」「自由権規約」)、女性差別撤廃条約、障害者権利条約などでは「選択議定書」を批准(ひじゅん)する必要があるし、人種差別撤廃条約では、条約の中の個人通報制度の規定を別途受け入れる必要があるが、日本はまだ一つも受け入れていないのである。
 また、日本は、国連が設置を促している「国内人権機関」もまだ設置していない
 国内人権機関とは、政府から独立して、裁判所とは別に、人権侵害からの救済と人権保障を推進するための国家機関である。
 国際社会ではそのような機関の重要性が広く認識され、国連の人権委員会と国連総会は1992年、93年に「パリ原則」と呼ばれる決議を採択して、政府からの独立性や任務の広範さなど、求められる国内人権機関の概要を示して各国に設置を促している。
 各国の国内人権機関が協力し情報交換や相互の発展に向けた活動を行なうことを目的として作られたネットワーク「国内人権機関世界連合」(GANHRI)によると、2021年1月現在のメンバーは117機関で、そのうちパリ原則に完全に適合すると認められたAランク認定は84機関となっている。
 韓国にはAランク認定の国内人権機関が設置されている。

 政府が人権担当総理補佐官を設置し人権外交を推進しようとするのであれば、個人通報制度への参加と国内人権機関の設置を急ぎ、国内における人権問題にも国際標準の人権保障を行なう体制を確立すべきである。
『週刊金曜日 1367号』(2022/3/4)

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