◆ 教員の“働き方改革”で広がる困惑 野球特有の問題も
~「部活」は「地域」に移行できるか? (Full-Count)
◆ 来年度から土日の部活動は地域に移行へ、教員は原則参加せず
働き方改革は教育現場でも本格的に進んでいる。長時間労働を防ぎ、教員の心と体の健康を保つ目的自体は歓迎されている。
一方、このままでは子どもたちが置き去りになると懸念されている問題の1つが部活動。中でも野球は、特有の課題があるという。
中学校の教員らは「10年後には軟式野球をする子どもが、ほとんどいなくなる」と危機感を口にする。
もどかしさや焦りばかりが募る。
部活動の転換期を迎えているにもかかわらず、子どもたちを預かる現場の教員には打つ手がない。一般社団法人「福島ベースボールプロジェクト」の代表理事で、中学校教諭の磯崎邦広さんは不安を隠せない。
「事務連絡のような形で、部活は地域に移行していくというゴールは国から示されています。ただ、国が仕組みをつくっていないので、学校現場は困惑しています。子どもたちが置き去りになっています」
来年5月から中学校の部活は大きく変わる。
国は、土日の部活に教員が関わる必要はないと指針を示している。働き方改革の一環で、長時間労働を解消するためだ。
国は「月平均80時間以上の残業」を過労死ラインの基準に定めている。
教員の場合、時間外労働は部活だけにとどまらない。事務処理に行事の準備や生活指導。部活の顧問で土日も活動すれば、過労死ラインを超えてしまう。
教育現場の働き方改革によって、どの部活もこれまでと形は変わる。その中でも、「野球への影響は大きい」と磯崎さんは指摘する。理由の1つは、競技の特性にある。
「野球は攻撃も守備も色々なパターンがあります。効率良く2時間で指導するのも1つの方法かもしれませんが、ある程度の時間が必要になります」
◆ 野球特有の課題、数ある組織や連盟のトップが不在
野球はチームやグループで集まらないとできない連係やサインプレーが多い。
また、部活以外に軟式ボールやバットを使って練習できる場所はほとんどなく、個人練習はランニングや素振りなどに限られる。
土日に活動できなくなれば、野球をやりたい子どもたちは部活ではなくクラブチームを選ぶのは自然の流れといえる。
ただ、金銭面や保護者の負担など、条件が合わずにクラブチームへ入れない子どももいる。野球をする場所がなければ、子どもたちは別の競技に移らざるを得なくなる。
もう1つ、野球特有のハードルがあるという。磯崎さんは野球の組織について、こう話す。
「サッカーを代表するように、野球以外の競技には協会があります。協会をトップにピラミッド型になっていますが、野球は連盟や組織がそれぞれに活動しており、線でつながっていないのが現状です」
野球は、かつて日本の“国民的スポーツ”だった。スポーツを始める際、当たり前のように野球を選ぶ子どもが多く、競技人口は右肩上がりだった。その動きに合わせて、次々に連盟や組織ができた。
数が増えると、弊害も生まれる。
たとえ個々の連盟や組織に課題を解決する力があっても、協会といったトップ不在の仕組みは枠組みを超えた問題が生じた時にスピード感を欠くのだ。
軟式野球をする中学生は現在15万人を切っている。わずか15年ほどで、半分まで減少した。
中学校の野球部が縮小すれば競技人口はさらに減り、高校や大学など上のカテゴリーでプレーする人数も少なくなる。
中学校の部活が直面する問題は、高校野球やプロ野球の未来とも無関係ではないのだ。
磯崎さんは「公立中学の野球部がなくなってしまうと、10年後には軟式野球をする子どもはほとんどいなくなると思います。そうなれば高校球児は今の3分の1くらいまで減るでしょう。野球の存続、日本のスポーツの存続危機と言っても過言ではありません」と訴える。
一度減ってしまった競技人口を回復するのは簡単ではない。
「部活の大転換」まで1年。
国や野球に関わる各組織や連盟が危機感を共有し、同じ方向に進まなければ手遅れになる。あすからは部活動改革による課題について、全3回の連載で解決方法を探る。
間淳 / Jun Aida
『Full-Count - Yahoo!ニュース』(2022/5/27)
https://news.yahoo.co.jp/articles/353e01233f73cf518cd4e114e9b320a1b78cd89f
~「部活」は「地域」に移行できるか? (Full-Count)
◆ 来年度から土日の部活動は地域に移行へ、教員は原則参加せず
働き方改革は教育現場でも本格的に進んでいる。長時間労働を防ぎ、教員の心と体の健康を保つ目的自体は歓迎されている。
一方、このままでは子どもたちが置き去りになると懸念されている問題の1つが部活動。中でも野球は、特有の課題があるという。
中学校の教員らは「10年後には軟式野球をする子どもが、ほとんどいなくなる」と危機感を口にする。
もどかしさや焦りばかりが募る。
部活動の転換期を迎えているにもかかわらず、子どもたちを預かる現場の教員には打つ手がない。一般社団法人「福島ベースボールプロジェクト」の代表理事で、中学校教諭の磯崎邦広さんは不安を隠せない。
「事務連絡のような形で、部活は地域に移行していくというゴールは国から示されています。ただ、国が仕組みをつくっていないので、学校現場は困惑しています。子どもたちが置き去りになっています」
来年5月から中学校の部活は大きく変わる。
国は、土日の部活に教員が関わる必要はないと指針を示している。働き方改革の一環で、長時間労働を解消するためだ。
国は「月平均80時間以上の残業」を過労死ラインの基準に定めている。
教員の場合、時間外労働は部活だけにとどまらない。事務処理に行事の準備や生活指導。部活の顧問で土日も活動すれば、過労死ラインを超えてしまう。
教育現場の働き方改革によって、どの部活もこれまでと形は変わる。その中でも、「野球への影響は大きい」と磯崎さんは指摘する。理由の1つは、競技の特性にある。
「野球は攻撃も守備も色々なパターンがあります。効率良く2時間で指導するのも1つの方法かもしれませんが、ある程度の時間が必要になります」
◆ 野球特有の課題、数ある組織や連盟のトップが不在
野球はチームやグループで集まらないとできない連係やサインプレーが多い。
また、部活以外に軟式ボールやバットを使って練習できる場所はほとんどなく、個人練習はランニングや素振りなどに限られる。
土日に活動できなくなれば、野球をやりたい子どもたちは部活ではなくクラブチームを選ぶのは自然の流れといえる。
ただ、金銭面や保護者の負担など、条件が合わずにクラブチームへ入れない子どももいる。野球をする場所がなければ、子どもたちは別の競技に移らざるを得なくなる。
もう1つ、野球特有のハードルがあるという。磯崎さんは野球の組織について、こう話す。
「サッカーを代表するように、野球以外の競技には協会があります。協会をトップにピラミッド型になっていますが、野球は連盟や組織がそれぞれに活動しており、線でつながっていないのが現状です」
野球は、かつて日本の“国民的スポーツ”だった。スポーツを始める際、当たり前のように野球を選ぶ子どもが多く、競技人口は右肩上がりだった。その動きに合わせて、次々に連盟や組織ができた。
数が増えると、弊害も生まれる。
たとえ個々の連盟や組織に課題を解決する力があっても、協会といったトップ不在の仕組みは枠組みを超えた問題が生じた時にスピード感を欠くのだ。
軟式野球をする中学生は現在15万人を切っている。わずか15年ほどで、半分まで減少した。
中学校の野球部が縮小すれば競技人口はさらに減り、高校や大学など上のカテゴリーでプレーする人数も少なくなる。
中学校の部活が直面する問題は、高校野球やプロ野球の未来とも無関係ではないのだ。
磯崎さんは「公立中学の野球部がなくなってしまうと、10年後には軟式野球をする子どもはほとんどいなくなると思います。そうなれば高校球児は今の3分の1くらいまで減るでしょう。野球の存続、日本のスポーツの存続危機と言っても過言ではありません」と訴える。
一度減ってしまった競技人口を回復するのは簡単ではない。
「部活の大転換」まで1年。
国や野球に関わる各組織や連盟が危機感を共有し、同じ方向に進まなければ手遅れになる。あすからは部活動改革による課題について、全3回の連載で解決方法を探る。
間淳 / Jun Aida
『Full-Count - Yahoo!ニュース』(2022/5/27)
https://news.yahoo.co.jp/articles/353e01233f73cf518cd4e114e9b320a1b78cd89f
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