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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「金融教育」が入って、自己責任が強調される新しい家庭科教科書

2022年06月24日 | こども危機
  《「子どもと教科書全国ネット21ニュース」から》
 ◆ 18歳成年が実現するもとで高校家庭科教科書はどう変わったか
   ―第55回教科書を考えるシンポジウム開く
和田哲子(わだてつこ・教科書シンポジウム世話人)

 2月26日、標記のテーマでシンポジウムが会場19名、Zoom20名の参加で開催され、家庭科教育研究者連盟のお二人から報告がありました。
 ◆ 自己責任に縛られる

 齊藤弘子さんは、「2022年『18歳成年』実現を前に、高校家庭科学習指導要領と新教科書は高校生にどのような人物像をねらっているか?」でその全体像を話してくださいました。
 1989年の学習指導要領の改定によって中学校では1993年、高等学校では1994年から男女共修が始まって以来、家庭における夫の在り方は単に妻に頼まれてやる「家事参加」ではなく自ら積極的に臨む「家事関与」に変わってきていること、
 男子生徒自身も家庭科学習を大切なものと認識していることなどの現状を踏まえた上で、2018年の学習指導要領の改定では2022年の18歳成年実現を受けてかなり変更があったこと、「主体的に」という用語が強調されて自己決定、自助などが求められひいては自己責任にがんじがらめにされてしまいはしないかということが指摘されました(詳しくは2021.10.15全国ネットニュース140号Pl2,13をご覧ください)。
 ◆ 「金融教育」の実践では

 中川千文さんからは、その中で「自助・亙助・共助・公助」と「金融教育」を中心に、授業実践の例をあげながらそこからうかがえる高校生の意識が報告されました。
 千葉友紀子さん(千葉県立船橋北高校)の実践「知らなきゃ損する?お金の知識―コロナ禍の生徒アンケートをふまえて」では、生涯を見通した生活における経済の管理や計画、リスク管理の考え方について理解を深め、情報の収集・管理が適切にできるようにするを目標に
   ①「貯金」と「保険」
   ②「お金を借りる=悪いこと」なのだろうか
   ③お金の増やし方―金融商品について知ろう
 を学習。
 生徒たちからは「健康保険はすごい」「貯金も大事なことが分かったのでしっかり貯める」「自分でいろいろ調べると得することも多いから、いろいろなことに関心をもって生活したい」「ギャンブルはお金が減る可能性が高いのでやらないと決めた」などの感想が出されました。
 千葉県立国府台高校2年生の「金融教育」の実践(東京新聞2022.1.24記事から)では、将来的に重要なお金について必要な知識と判断力を身につけるを目的として金融商品の仕組をビデォや小冊子で説明した上で、5~6人のグループで20万円の資金で投資のシュミレーション体験を行った。
 投資先の候補になったのは「日本を代表する衣料品会社の株式」「ロボット製造のベンチャー企業の株式」「日本の国債」「預貯金」の4つ。
 途中で投資結果を左右する出来事も投げ込みながら、結果として生徒が投資先を選んだ理由は「利益が少ない債券や預貯金より株式」「やっぱり大きくもうけたい」「資金の半分は安定しているところがいい」などそれぞれでした。
 ◆ 若者が被害に遭わない金融教育を

 この金融教育について文科省は「投資のしかたを教えるのではなく、家計を管理していく基本を教える。」「お金を貯蓄から投資に向けるように勧誘するためではない。」としていますが、一方で「金融庁や証券関係者など、外部の人材を活用してもいい。」としているのを見ると、どのようなスタンスの授業になるのか心配です。
 既に1000円単位で買い付けの出来るスマホ投資が始まっていたり、アメリカでは若者向けのスマホ証券で騙されて自殺者が出たとの報道もあります。どのような授業を行うのか、現場の取り組みを見守っていく必要があると思いました。
『子どもと教科書全国ネット21ニュース 143号』(2022.4)



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