外務大臣 岸田文雄 様
2014年6月6日
言論・表現の自由を守る会
2014年6月6日
言論・表現の自由を守る会
◎ 教育現場から自由権規約個人通報制度の即時批准を求める要請書
東京都教育委員会は、卒・入学式の国歌斉唱時に起立・斉唱・伴奏せよとの「職務命令」を校長を通して発令させ、従わなかった教職員を懲戒処分してきました。2003年以降、その数は460人を超えます。
2012年最高裁は、「起立斉唱命令」は「敬意の表明の要素を含む」から人権への「間接的制約」にあたるものの「必要性・合理性」があるから「思想・良心の自由」(憲法19条)に違反しないとしつつも、減給以上の累積加重処分については裁量権の範囲の逸脱濫用であるとして取り消しを命ずる判決を示しました。
しかし、これで審理が尽くされたとは言えません。最高裁はわが国が批准している自由権規約18条(思想・良心・宗教の自由)第3項に触れていません。
確定版『一般的意見34』(2011/7/21)パラグラフ38には、規約19条(意見と表現の自由)3項に関して、公権力による人権制約が許されない具体例として「旗とシンボルへの不敬」の文言が追加されましたが、このことも見逃しています。
また、自由権規約第6回日本政府審査に対する政府報告の中では、板橋高校卒業式事件の最高裁判例が「公共の福祉」名目で人権制約を正当化する事例として引用されていますが、逆にこれこそ国連から繰り返し指摘されてきた「公共の福祉」誤用の典型例であって、勧告の無理解と言わざるを得ません。
「10・23通達」以降、学校では「日の丸・君が代」不可侵であるかの如く、上意下達の画一的一方的な命令体制が、卒業式だけではなく日常の教育活動のあらゆるところに貫徹し始め、それは必然的に子どもの世界にも、多様な価値観を認めず個性に応じた弾力的な教育を許さない画一的教育をもたらし、息苦しい雰囲気が広まりつつあります。この事態は、生徒一人一人の人格の完成を目指して行われるべき教育権の国際標準を定めた、世界人権宣言26条(教育への権利)をはじめとする国際規約に反しています。
わが国は、素晴らしい国際人権条約を批准しており、その国際水準の人権が学校でも保障されるよう、自由権規約第1選択議定書の即時批准の実現を、教育現場から強く訴えます。
要請内容
第6回審査を前に、前回の『総括所見』を踏まえ、締約国の義務として以下を実行されるよう要請します。
1,第5回審査の『総括所見』パラグラフ8の勧告を受け容れ、「第1選択議定書」を即時批准すること。
2,同じく『総括所見』パラグラフ7の勧告を受け容れ、法曹関係者の専門的教育に規約の適用と解釈を組み込むことによって、規約が裁判規範として直接適用されるよう、法務省とも連携して取り組むこと。
3,同じく『総括所見』パラグラフ10の勧告を受け容れ、規約で許容される制約を超える制約が課されることのないよう、「公共の福祉」について規約19条3項に合致する定義と立法をなすこと。
4,『規約』第18条および『一般的意見34』パラ38を尊重し、地方自治体を含む国全体において、公立学校における卒業式や入学式などの学校行事において「国旗・国歌」が何人にも強制されないよう、文科省とも連携して十全な措置をとること。
5,学校の中で、子どもたちにも教職員にも、国際標準の人権が保障されるよう、文科省とも連携して政府一丸となって、国際人権教育を推進し、その普及定着を図ること。
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